第5話 空間魔法は恐ろしい
「2人とも、そろそろ準備をしようか」
「やっとね!」
「はーい。」
ライルが立ち上がりカトレア姉さんとニール兄さんに準備を促すと、姉さんははりきり、兄さんは生返事をした
メルヴィス家では、週に2回ほど、元冒険者のライル父さんに、剣の稽古をしてもらう決まりがある
この世界は、時代的にいえば中世を思い起こさせる文化形態であり生活水準、獰猛な獣はもちろんのこと、危険な魔物も数多くいる
メルヴィス家が収めるこの土地は、開けた大きな平原に町があるだけのド田舎で、辺り3方向は山で囲まれている。
ここも、元はかなり危険な土地だったが、この地に来てまず最初に、父さんと母さんを中心に
領民たちが山に入り、危険な生き物をあらかた駆除したらしい
今は自警団が町の周囲を警戒し、危険な魔物を討伐しているため平和そのものなのだ!
だが、俺たち田舎貴族は何かあれば先頭に立たなければならない (父さんが強いからでもあるが)ため、6歳になるとこうして剣の稽古が始まるのだ、
ちなみに、カトレア姉さんは俺の4つ上で8歳
ニール兄さんは2つ上の6歳だ
俺はまだ4歳なので稽古はまだないが、俺は元社畜だ、ブラック企業ではなかったが。。
それでも 夢の田舎暮らしのために、1度も休まずに出勤していた。
夢が叶ってしまった今、何が悲しくてそんな大変なことをしないといけないのか
「はぁ、俺は6歳にはなりたくないな、」
「あら?レイは剣の稽古が嫌なの?」
3人が庭で稽古しているのを隅で眺めなが呟くと、いつの間にか横で一緒に眺めていた母さんがそう聞いてきた
「それはそうだよ、魔法があるのに何が悲しくて剣なんて習うのさ、」
「あらレイったら、酷い言いようね、いつどこで何があるかなんて分からないものよ?」
レイラ母さんが優しく微笑みながら続ける
「レイは剣よりも魔法が好きなの?」
「好きというよりも、魔法は生活を豊かにしてくれるからね、こんな便利な力は他にないよ」
「面白い考え方ね、豊かにしてくれると言ったけど、どんな風に豊かになるのかしら?」
「例えば、喉がかわいたら..…はい!」
そう言って、土魔法でコップを型どり圧縮して固め、その中に水、氷を入れ、サイコキネシスでレイラ母さんの目の前まで持っていく。
「あら、レイは氷魔法もできるのね 。。でも 確かにこれは豊かになるわね、それに剣の稽古は嫌だと言うけど、お母さんは、レイが毎日魔法の練習を欠かさずしているのを知っているわよ」
「まぁ、魔法は、すればするだけ生活に直結するからね」
レイラ母さんが、偉い偉いと言いながら俺の頭を撫でてくる
前世の記憶はあるが、身体能力や感情は4歳児のそれなので、ほめられるのが素直に嬉しく、そして照れくさい
ーーー
午後からは、庭で魔法の練習をする、
先程母さんが言った通り、4年間毎日欠かさずやってきたおかげで、
火、水、地、風、無 + 氷、雷
の7属性は、無詠唱で自由に発動できるようになっている、
「やるか」
まずは日課になっている水魔法をミスト状に発動し水やりと同時に、風を刃のように鋭くして、伸びた雑草を切る。
2属性の同時発動と、魔法操作の訓練として、これをやっていたら、いつの間にか日課に昇華していた。
その他にも、前の世界の漫画やら、アニメでキャラクター達が使っていた技の再現なんかも練習として取り入れている。
一通りの練習を終え、今日の本題にとりかかる
「空間魔法か、」
書室の魔法関連の本はあらかた読んだが、古代魔法は、古代文明では、使用してた可能性がある!
程度で詳しいことは何も載ってなかった。
「空間といえばまず思いつくのはワープだな」
古代魔法を使っているところを見られるのは大変まずいため、人目につかない裏庭に移動する
ーーーー
「ここならいいか」
早速俺は、魔力を練りながら5メートル程先の花壇の縁を強くイメージする。
「やっぱ無理か、」
水魔法の時もそうだったが、一番最初の魔法発動は、イメージだけだとほぼ発動しない。
イメージを補完する形で、魔法詠唱があるのだが、今挑戦しているのは古代魔法、先程も言ったとうり詠唱がない。
こうなってくると、より正確で綿密なイメージをする必要がある。
「先の7属性は、原子なり大気圧なりと、細かいところを思い浮かべれるが、ワープって。。。」
「んんー、ん?お?これは?」
いろいろと考えながら、記憶の中を旅しているとワープではないが、空間を使うことでふと思いついた。
「やってみよう」
俺は、青い猫型ロボットのポケットを思い浮かべていた、
小さい頃からずっと見ていた異次元のポケットの細部まで鮮明に思い出しながら、前に突き出した右手の先に魔力を集め練り、『開け』呟くと、、
「ブワァンッ!!」
「で、できた、」
例のポケットとは全然違うが、半透明の四角の輪っかが出来、試しに草をちぎって入れてみると、草は輪っかに吸い込まれていき落ちてこなかった
「お、おぅ、」
入るのは確認したので、取り出すために手を突っ込んで草を思い浮かべると手に草の感触が当たる、
引っこ抜くと、手には草が握られていた
「マジでできちゃったよ」
どうやら、詳細なイメージに『開け』と言ったのが詠唱の代わりになったらしい。
そう解釈した俺は、続けて、先程も見ていた花壇の縁を、身体強化で視力を上げた目で凝視して
『動け』
と、呟くが、今度は何も起きない。
「さっきの仮説は違ったのか?」
いろいろと思案していて、ふと地図を思い浮かべる
この世界の地図はおおまかな配置と縮尺で、
とてもじゃないが精巧とは呼べないので、もちろん現代地図だ。
「座標、か?これならいけるか?」
世界地図に書き込まれている緯度と経度を思いつき、即行動に移す
一旦屋敷に戻る
「ミア、大きい測り棒(定規)ってある?」
「大きいですか?それなら裏の納屋にあると思いますけど、あそこは色んなものがありますので、私が行きますよ!」
「じゃあ、お願いするね」
ーーー
「お持ちしましたよ」
「ありがとう!」
3分程待っているとすぐにミアが戻ってきた
俺はすぐに受け取り、先程の裏庭に移動して、定規を使いそこら辺に落ちていた枝で等間隔のマス目を書いていく
そして、縦と横のメモリと横のメモリに番号をふって、出発地を『1:7』 到着地を『8:7』に決める
「よし、準備完了だ!」
土魔法で適当にコップを作り、出発地にセットして、魔力でコップをつつみ、『8:7』 と思い浮かべながら
『移動』と呟く!
すると置いていたコップが消え、
到着地に移動していた......が、コップの下半分は地面に練り込んでいた
「俺が飛ばなくて正解だった。」
俺が俺だったら、どうなってたんだ。。。
練りこんだコップに青ざめながら、この魔法の危険性を強く認識する
「でも、一応成功した」
0から1を生み出せたので、あとは反復練習で慣れるだけだ
この日は魔力が切れるまで今の流れを繰り返した。
こうして、日々の魔法の練習に空間魔法も加わったのだ。
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