第427話 松尾家の秘密 ~不審者――ではない~

 泥棒か?野生動物か?なんだ?などと俺が身構えていると――家の陰から出てきたのは――なぜか元気いっぱい?と思われる石見先輩が現れたのだった。


 いや、現れなくてもよかったのですが。

 

 これガチな心の声だ。


 今はマジで居なくていい。

 石見先輩の相手とかしたら俺倒れる。

 もう今日はいろいろありすぎた。ってかなんでいるんだよ。

 あと、もうなんか予想できてしまったが。そのキャリーケースは……石見先輩の物か。何?家出?マジやめて。

 えー、なんでこんなことになるのか。


 俺いつも以上に心の中でいろいろ言っておいた。

 多分声には出ていないので、石見先輩には全く伝わっていない。聞こえていない様子。

 まあ聞こえたら聞こえたらいろいろ言われそうなので、心の中でとりあえず言えるだけ言っておくのがベストだろう。心の中くらいいろいろ言っておかないと、話しているときにぽろっと声にしそうだからな。


 心の中でいろいろなことを俺は思ってから、ニコニコな表情?ご機嫌?に近寄って来る石見先輩にまず確認をした。


「何をしているのでしょうか?石見先輩。とりあえず誤魔化さずにとっとと正確な情報を言うこと」

「おおっ。後輩くんがなんか――怒ってはないけど。どう考えても今この場所に私が居ることに関して――嬉しすぎておかしくなってる?」


 ほとんどハズレである。

 しかしちょっと抑えが聞かなかったな。どうやら俺そこそこ疲れている様子だ。でもまあ石見先輩ならそこそこ適当な問でも大丈夫だと思う。


「ご用事がないなら回れ右してください」

「まあまあ。とりあえず、なんかね。私の直感的に後輩くんが寂しい思いをしてそうと思ったから。ちょっと後輩くんの家に泊まりに行くーって、言って出てきた。明日まだ休みだしいいでしょ?」

「……」


 なんなのこの先輩。

 その無駄な直感?というか感覚はなんなのか。そんなの働かさなくていいですから。

 それと、俺の周りにいる人って、おかしな人――多い?多いよね?

 あとなんでわかったというか。石見先輩はじいちゃんが入院とかばあちゃんがホテル暮らしとか知らなかったはずでは?あれ?知ってた?誰か言った?いや――もうわかんないや。もしかして結崎が連絡?それは――ないと思いたいが。

 とにかく何が何だかもう俺はわからないが。石見先輩が俺の家に不法侵入していたというまとめでいいかな。


「――もしもーし?後輩くん?お疲れ?ならドアオープン。私が癒してあげよう。仕方ないからーたくさん撫でまわしてあげよう!」

「いや、遠慮します」


 それめっちゃ俺が疲れるというか。何を人にしようとしているのかこのお人は――。


「まあまあとりあえず――なんか後輩くん1人だし。これはまさかの私が後輩くんを奪っちゃうルート?おお、面白そう!ひひひっ。ゆえちゃんが大騒ぎするね。ってことで、後輩くんの許可も取ったし室内ゴー!」

「いや、何も面白くないです。あと変なことを言わ――」

「とにかく!」

「強引だ」


 俺に最後まで話させない石見先輩。これ――あきらめないとだめなの?


「まあまあ、荷物あるし。ドアオープン。ほらほら女の子待たせたから。何かお菓子とかさ」

「――」


 ……超元気な石見先輩。さて――どうしましょうか。

 ドアオープンとか言っているが。俺の部屋にもじいちゃんばあちゃんの家にも入れたくないのは――いや、なんかやらかしそう。漁りそうなのでね。

 でも俺の部屋に入れると――それはそれで何かしそうだし。ならまだ誰も居ないじいちゃんばあちゃんの家の方がいいか。

 本当はとっとと帰らせたいが。今は電車がないからすぐには帰らないだろう――そもそも帰らない気がするし。この先輩。ってか、ちょっと待て。許可って誰がした?


「あの、石見先輩」

「うん?」

「許可は誰もしてないことをはっきり言っておきます」

「えっ?今さっき後輩くんしてくれたじゃん」

「いやいやしてませんよ?」

「したよ?私にって言ったじゃん」

「……うん?」


 そういえばそんなことを言った気がする。でもそれは自分の家に帰れと言ったのだが――この先輩おかしな認識――って、それは今に始まったことではないか。


「ちょちょ、後輩くん。お馬鹿さんになった?」

「いきなり馬鹿扱いしないでください」

「いや、だって、今後輩くんが回れ右すれば駅でしょ?」

「うん?」


 石見先輩に言われて俺は後ろを振り返る。

 俺は怪しい荷物を見てから一歩もその場を動いてはいない。なので振り返れば駅へと続く道が見える。

 当たり前のことだな。


「まだわかんないの?私はこっちから来たの」

 

 石見先輩が何を言いたいのかわからない俺は再度石見先輩の方を見る。

 すると石見先輩は何故か得意げな顔でトイレや風呂場のある方。じいちゃんばあちゃんの家の方を指さす。確かに石見先輩その方面から現れたな。


「もう、鈍いな。だから後輩くんが回れ右って言った時、私は駅の方を見ていましたつまり――」

「……」


 あー、どうでもいいのかもしれないが。わかってしまったというか。あれ?これ俺のミスなの?そうなるの?

 多分だが石見先輩は自分はじいちゃんばあちゃんの家から来た。だから回れ右ということはじいちゃんばあちゃんの家の方を指すことになるから――って、それが許可になるか!


「さすがに後輩くんも気が付いたかな?そう。あの場合はまっすぐ帰れ!じゃないと私は帰らなくていいの!」

「――もう嫌」

「だから回れ右って後輩くんが言ったから私はそれに従って――室内へ入場するから」

「……」


 無駄に?頭を回転させた石見先輩。

 もう顔には絶対帰りません。っか早く室内入れろと言っているので――俺は疲れていたこともありいろいろあきらめた。

 そしてこの後来てくれるであろう結崎に丸投げをすることにしたのだった。 

 あっ、あと長宮さんに関しても結崎に丸投げしようとしている俺だった。

 多分無理だろうとは思っているが――今のところは。である。

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