第408話 松尾家の秘密 ~親~

 長宮さんとともに大学前駅からバスに乗り。じいちゃんとばあちゃんが先行している病院へと向かっている途中の俺。

 現在車内では、とくに話す必要のないようなことを、俺が長宮さんへと話しているところだったりする。

 何を話しているかって?俺の親のことである。


 ◆


「つまり――松尾君はもともとあの場所に住んでいたわけではないんだ」


 ざっとだが俺が何故じいちゃんばあちゃんのところで生活しているかを長宮さんに話したところだ。

 詳しく話していないので、バスが信号待ちをしているくらいの間で話すことができた。本当にざっとなので、長宮さんが理解できたかは――だが。まあ詳しく話す必要もないと思うのでね。こんな話長宮さんにとっては面白くなさそうだし。


「まあそうなるね。ちょうど父親が海外に行くことになってね」

「にしても、本当にそんなことあるんだね」

「えっ?どういうこと?」

「いやなんかさ。アニメとかで両親は出張!とか設定あるじゃん」

「――あると言えばあるような――」


 確かに両親不在設定?とか言うのはあるような――などと思いつつ長宮さんの話を聞いていると。


「そして男の子がハーレムを築く」

「――何を言い出すか」

 

 マジで何を言い出すか――って、そうか長宮さんだもんな。脱線は当たり前。そう当たり前ここで俺が動揺とか慌てる必要はない。そう。普通に話せばいいのだ。

 さすがに長宮さんの相手も慣れてきた――って、余計なことを考えていると。なので長宮さんとの会話の方に戻ろうか。


「いや、松尾君も例外じゃないでしょ」

「――そう?」

「いやいやいや、何を言っているの。どう見てもでしょ。六石くらいじゃん男」

「……」


 長宮さんに言われて考えてみると。

 そういえば――俺の周りって基本結崎。そして――そのセットというと怒られる気がするが。今は俺の脳内なので良いだろう。とにかくセットで長宮さん、蓮華寺さん――そして石見先輩。さらに七和先輩。そして六石――って、本当だ。女性率が高い。

 男性男性――と考えると、後普通に話すことがあるのってじいちゃん――は、入れていいのか?あっ、楚原さんが居るか。って、そこも数に入れていいのか――うーん。微妙だな。って、じいちゃんや楚原さんを入れると、結果ばあちゃんや楚原先生も入ってくるから――あれ?マジで女性ばかりだな。


「でしょ?」

「なんか俺の心の中見ていた?」


 俺が少し考えているとニヤッとしつつ長宮さんが声をかけてきた。


「あれでしょ?ゆえでしょ。そして――澪が居て。先輩が居て――とか思ってたでしょ?」

「……ほぼ当たっているというかでも――一応話すことは少ないなりに、クラスの男子――」

「そういえば松尾君って、クラスの男子と話してる?」

「ハナシテマスヨ?」

「なんで片言。って、まあ松尾君ゆえとしか話してないよね」

「いやいや、それはないというか――それを言うと長宮さんとも最近席が隣もあってか良く話しているような――」

「ま。まあね」

「――何その反応」

 

 なぜか嬉しそう?な長宮さん。って、そんなことはないか。


「ってか、そういえばだけど、松尾君最近あいつらにちょっかいかけられてない?」「――あいつら?」


 長宮さんのいう『あいつら』がわからず俺が少し考えていると――。


「その様子だと大丈夫みたいだね」

「うん?」

「いや、在良や大木」

「えっあー、そういえば――」


 久しぶりに名前を聞いたというと大変失礼かもしれないが。

 ここ数日。数週間文化祭のこともあり俺があまり教室にいないこともあったので、そういえば――彼らと接することがほとんどなかったような――そりゃクラスが同じなので、見てはいたが。話すことはなかったな。などと俺が思い出していると。


「ゆえがキレたからね」

「えっ?」

「嘘嘘ー」

「うん?」


 長宮さんに笑顔で誤魔化されてる?俺だった。いや、どれが本当の情報なのだろうか……。


「まあまあ、何もないならいいじゃん。あんなのと絡む必要ないよ」

「――」


 先ほどは笑顔だった長宮さんだが。今は……なんだろう?笑顔というより。満足そう?うん?この長宮さんの表情はどういうことだろうか?

 何かといろいろあったというと――だが。でもまあちょくちょく在良君。大木君とはあって。でもまあそこで――って、そういえば、あれは――体育館。クラスマッチ?の時だったか。その時も長宮さんが一番――。


「うん?どうしたの?松尾君。私の顔何かついてる?」

「あっ、いや、よくよく考えると。長宮さんにもいろいろお世話に――と」

「どうしたの急に?」

「ふとクラスマッチの時を思い出して――」

「あー、あのくそ野郎たちと、まっっったく私のこと信じなかった周りの」

「長宮さん。落ち着こう。車内車内」

「あっ。ごめんごめん」

「って、もしかして――長宮さん何かしてたりする?」

「えっ?なのを?」

「いや――その、なんというか。裏ボス的な?」

「なに裏ボスって」


 クスクス笑いながら俺の腕を叩いてくる長宮さん。

 ちなみに俺が今考えていたのは――最近俺に変にちょっかいがないのって――そりゃ結崎たちとよく一緒にいるから。結崎たちは今もクラスの中心人物ですからね。でもそれ以外に。長宮さんが何か――と思いましてね。


「まあ、その、裏でいろいろしてるというか」

「そんなことしてないよ。何私悪役とか思われてる?ひどいなー」

「いや、そういうわけじゃなくて――ってか、なんでこんな話になったのか」

「松尾君が昔話始めたから?」

「――違うよな……」

「あっ、そうそう話が脱線したけど。結局松尾君のお父さんお母さん?どこにいるの?」

「えっ、あーそれは――」


 バスが信号待ちの間の会話はまだまだ続くようだ――って、信号ってこんなに長かった?そりゃ動いてはいるが。信号が多いのか?まあ大通りとか通るとそういうこともあるか。

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