第394話 もめごと?6

 グシャ。


 唐突にそんな音が俺の耳に届いた。

 通常こういう音って聞くかな?そりゃ聞くことがないことはないと思うが――このタイミングでね。ってか、何が起こったかまたわかってしまう俺。とか思いつつ呆れていると、そのあとすぐだった。


「うわああああ。ゆえちゃん何してるの!?」


 石見先輩の悲鳴に近い声が――って、だから山奥だからってあまり叫ばないで。誰かに聞かれることはまずないだろうけど――あとあとなんかあってもだからやめて。


「いつから撮っていたんですか!!って、何してるんですか!」


 ――が、俺の願いは通じず。今度は結崎のお叱りの声が――って、今の聞こえてきた声からして、グシャっという音は結崎が――その石見先輩が持っていた何か――まあカメラなんだろうけど、それを壊した音でいいのかな?予想通りかな。多分綺麗に破壊された。

 

「後輩くーん。後輩ちゃんたちのお宝映像粉砕されたーバラバラだよー」

「……知らん」


 マジで知らん。本当に知らん。そろそろ俺は六石放置して一度部屋に戻ろうかな?

 長宮さんが風呂に再度向かったみたいだした。俺の順番はまだ来そうにもないのでね。このまま風呂場。洗面所近くに居る必要ないよね?居たら居たで巻き込まれるよね?


「――松尾――苦しい」

「俺は関われない」

「なんで長宮派なんだ――」

「いや、全面的に新聞部が悪いから」


 一応うめき声?に反応しておいたが、助けなくていいよね?六石は話しているから大丈夫だろうし。まあぐるぐる巻きだけど――。

 長宮さんにそこまで縛り上げる技術はないと思うから――あるのかな?まあでも大丈夫と思っておこう。そのうち七和先輩が動てくれると思うし。動いてくれなかったら――あれだ。六石。マジで良いように使われていると気が付け。まあ気が付かないというか。そういうポジション?なんだろうが――って、部屋戻るか。


「ほんと何してるんですか!もう!」


 後ろからは相変わらず結崎の悲鳴?叫び声が聞こえているが――触れない方がいいな。


「後輩くんーゆえちゃん怖い」


 呼ばれているが無視だ。俺は自分の部屋へと歩き出す。


「いろは先輩!勝手に動かない!」

「うぅぅ」

「――」


 すると、今度は後ろから泣き声?いやいや、嘘泣きだよね?急に鳴き声聞こえてきたんですが――長宮さんも怖かったが――まさかの結崎も激怒中?これは――俺居ちゃだめだな。

 よし。退散。


 ということで、俺は一時自分の部屋に戻ることにしたのだった。


 ちなみに俺が歩き出してからもしばらく結崎のお叱りの声が聞こえていた――気がする。


 ◆


「はぁ――」


 俺はため息をつきつつ自室へと戻る。


「おかえりー疲れてるねー」

「疲れてますよ」

「まあまあ女の子と居ればハプニングを起こすのが正解だよ。松尾君たちもうれしいでしょ?」

「いやいや――って」


 そして自室へと戻った俺。

 なぜか誰かと自然と話す――って、七和先輩居た!


「七和先輩何してるんですか」

「えっ?風呂上がりの休憩?」


 確かに俺の部屋でくつろいでいらっしゃる。普通に床に胡坐をかいてスマホをいじっているサングラスなしバージョンの七和先輩。黙っていれば――美少女枠に入らなくもない存在のお方がいる。まあもちろんそんなこと言って評価を上げようとか微塵も思ってないが――。


「おっ、今松尾君が2人っきりだからって、私のこと美少女とか言って評価上げようとしてるね」

「――心を読まれただと?」

「それくらい朝飯前朝飯前。みんなわかりやすいから」

「いやいや、って、七和先輩。六石がぐるぐる巻きですよ」

「ありゃー。見つかった?女の子のお風呂シーン取ってくれば?とか言わなかったんだけど」

「――言わなかったんだけど?」


 やばいな。新聞部とは会話が不成立になりそうだ。


「そうそう、私は女の子お風呂シーンとかじゃなくて、星空――しか言ってないよ?場所は風呂場近くを指定したけど」

「それはもう言っているも同じでは?」

「いやいや、私はお風呂場近くで星空撮影するからカメラ持ってきて。しか言ってないからね」

「とりあえずアウト」

「えー、私もぐるぐる巻き?ならしっかりと、きつめで」

「――」


 マジでやばいな。期待している?のか知らないが。縛られたそうな人が目の前に居るのだが――ってか、七和先輩と2人っきりの俺大丈夫だろうか?実は今も隠し撮りとかないよな?ないよね?


 一応俺がくるりと室内を見渡す――って、なんか天井に知らない黒い箱があるんですが――。


「あちゃー、さすが松尾君気が付かれたかー」

「あれはなんだ」

「カメラ」

「何個持ってるんだよ!」

「ちなみに私の右目もカメラ」

「それはさすがにない――いや、待て、もしかしてあのサングラス――」

「あー、でもまあそろそろ先輩。彼女として後輩。彼を助けてこようかな。うんうん。私一途」

「――いやいや急に何をって、話を無理やり変えようとしただろ」

「そんなことないよ。私たちもカップル。そう。新聞部カップル。盗撮は任せろだから」

「最後マジでアウトって、サングラスがカメラ説――」

「じゃ。六石君がおもらししてもだから助けてくるねー」

「ちょ、待て」


 すると軽やかに。まるで忍者のようにササっと俺の部屋を七和先輩が出て行った――いやいや、マジで横を通過するまでがめっちゃ早かったぞ。


 ってか、サングラスがカメラ説――マジ?

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