第150話 やっと帰路
結崎、石見先輩とともに大学前駅へと戻って来た俺達。もちろんだが、六石が乗ったであろう電車には間に合わなかったので、次の電車まで俺達は待って帰ることになった。
ちなみに、人は少なかった。ホント学校がないと、この路線大丈夫か?ってくらいに人が少ない駅だった。そりゃ居なくはないんだがね。でも少なかった。
しばらくしてからやって来た電車に石見先輩、結崎とともに乗り。高校前駅で石見先輩が降りていく。1区間だが石見先輩が静かだった。ということはなく。
「あー、もう着いたか。じゃ、2人ともイチャイチャ禁止だからね。ここ公共交通機関だからね。わかった?」
「いろは先輩!」
結崎毎回毎回大変だなである。石見先輩に完全に遊ばれている。
「最後まで元気なこった」
「あっ、そうそうまた2人とも連絡するからねー」
「……石見先輩。おかしな時間はやめてくださいよ?夏休み満喫したいんで」
「あっ、いろは先輩。私も常識ある時間で――」
「深夜に電話するね!」
「それ――迷惑電話になりますから」
「……はぁ――いろは先輩」
マジでこの先輩の相手はである。うん。大変すぎる。何でこの先輩こんなに元気なんだろね。暑さで弱ってほしいよ。無理だろうけど。
「にひっ。あっ、すぐかもね」
「迷惑電話確定か」
「だね。電源切っておこうかな―、あっ、でもそれだ――か」
すると、結崎が何故かこちらを見てきた。電源切るとダメなのか?って、それだと他の人からの連絡も途絶えるので。
「出なければいい」
「あっ。そっか」
「この2人ひどーい。先輩いじめだ」
そんなやりとりをしていると、乗って来た電車は高校前駅へと到着して、ドアが開くと石見先輩が『暑いなー』と言いながら降りていき。すぐにドアが閉まり電車が動き出したのだった。ちなみになんか超笑顔で手を振っていた石見先輩だったので、俺と結崎も返しておいたのだった。
「……」
「……」
石見先輩が車内からいなくなったことで、急に電車内が静かになった。ガッタンガッタンの電車の走行音が響いている。先ほどまでも響いていたはずなのだが。石見先輩が元気すぎて気になっていなかったというね。
って、それに車内は俺達3人だけだったんでね。今は結崎と2人となっている。今日は前の車両に乗っているのだが。後ろの車両も人影は1人である。何という少なさ。って、結崎と2人になったらなったで今度は静か過ぎてどうしようという移動時間となっていた。
ちなみに先程までは俺、石見先輩、結崎という順番で座っていたので、結崎との間には人1人分空間がある。などと俺が思っていると結崎が声をかけてきた。
「ま、松尾君?」
「うん?」
「隣いい?」
指を刺しつつ結崎が聞いてくる。ちょっと照れているのか。緊張しているのかはわからないが。もじもじという感じだった。どうした?室長様だよ。人が変わりすぎているから、俺も戸惑ってしまう。
「えっ?あ、あぁ、もちろん」
俺が答えると結崎が嬉しそうな表情になりすぐに1人分隣に移動してきたが。
「あっ、ダメ、私汗臭いかも」
すぐに元の位置に結崎は戻ったのだった。戻るの早っ。
「いや、気にならないってか。大丈夫かと。うん」
「いや、ダメダメ。バタバタしたから――あっ、じゃ、前行く」
「——はい?」
前?何?と俺が思っていると、結崎はささっとまた移動して、俺の正面に来た。狭い車内。普通に向かい合って座れば通路を塞ぐことになる。前にも言ったがそれが今だ。
「うん。よし。ここなら大丈夫」
「……結崎。正面によく来るよね?」
「そ、そう?」
「なんかそんな気が――うん」
「いや。だって――隣はなんかドキドキ――するし。それに2人きりだから……ね」
「いきなりなんか恥ずかしいこと言わないように」
「なっ、いや、だって……隣は近くは近くなるから。うん。今はダメ」
ぱっと見、そりゃ少しは結崎も暑さで汗をかいては居るだろうが。気にするほどではない。むしろ俺の方が……なんだけどね。ってか。俺はそれより。
「俺的には正面の方が恥ずかしいような……」
うんうん。正面に座られると全身が見えるからね。隣同士なら顔は見なくても話せるのだが。でも正面だと向き合う形に自然となるため。これの方がなんか俺的には恥ずかしくないかな?
「そう?適度に距離あって、私はいいと思うけど……」
どうやら結崎は特にらしいが――感じ方も人それぞれか。
「なのか――ね?」
「うん。ってか……ま、松尾君」
「うん?」
また結崎が緊張――という感じで何を次は話してくる?と俺がちょっと構えていると。
「また……遊びに行っていい?夏休み中」
可愛い確認でした。
「あっ――うん。そりゃ、もちろん」
「じゃ、行くね」
そしてOKの時の笑顔で。クラスでの室長様バージョンでは絶対にない柔らかな笑顔だった。って、これ本物なの?と疑ってしまうというね。可愛い生き物みたいになってるよ。などと俺が思っていると。
「あっ、あとさ――えっと……その……うちに――」
「うん。そのうち?」
「あっ、そのうちじゃなくて――いや、待って一気はダメだ緊張する。ふー」
何故か深呼吸を開始する結崎。って、そんなことをしているといつの間にか電車のスピードが落ちてきていた。そのためまだ深呼吸をしている結崎に俺は現在地を知らせた。
「結崎。まもなく公民館前だが?」
車窓を見つつ俺が言うと、結崎も慌てて外を見た。
「もう!?」
「もうですね」
「あっ、えっと……うん。また。また――連絡する」
どうやらまだ何か話したかったらしいが。それは後日らしい。って、マジで可愛いい生き物を見てる俺は――幸せ者か。ってか、結崎ばかりに連絡させるわけにもなので。
「じゃあこっちからも連絡――するかな?」
「してよ」
言いつつ。あれ?俺から連絡するようなことあるかな?ということで自信なさげに俺が言うと、すぐに結崎に突っ込まれて――結崎はちょっと口を尖らせていた。
「いや、何を話せばってね」
「えっと――いろいろ?」
「いろいろが難しいんだよ」
「暇なら――連絡してよ。私もする。雑談でいいから」
結崎――寂しがり屋?でも結崎なら普段からいろいろな人から連絡来てそうなんだがね。とか、思っていると、結崎の目がが連絡してよ。と、訴えていたので。
「じゃ……頑張るか」
俺がそうつぶやくと、結崎は満足そうな顔をしながら 『楽しみに待ってるから」と言い席を立った。
「まあでも……松尾君だし。連絡なくても仕方ないかーかな。じゃあまたね」
「なんか、最後に急に馬鹿にされなかったか?俺……」
「してないよー。またね」
「あ、ああ」
結崎がそんなことを言いながら電車から降りていく。ドアが閉まるとこちらに手を振ってくれていたので、手を振り返しておいた。電車が走りだせば結崎の姿はすぐに見えなく。って、あー、変に緊張した。
一応ってか……彼女相手だからね。なるべく変に思われないように普通に、と思って返事などをしていたが。1人になると急にどっと疲れではないが。これで良かったのか?と自問自答が始まった俺だった。
そして急にミッションも生まれたのだった。
「……マジで何を話題に連絡したらいいのか――」
連絡の約束。最後に結崎に無くても仕方ないみたいなことを言われたので、絶対してやろうと思ったのだが。マジで何を話せばということを考えつつ帰ることになった俺だったとさ。
いや、うん、何を話題に話を――としばらく考える俺だった。
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