第151話 夜の――

 図書室作業が終了した日の夜。暗くなってもまだまだ蒸し暑くうだるような暑さが残っている。現在の俺はじいちゃんばあちゃんとともに夕食を食べて、のんびり自分の部屋でくつろいでいる。涼んでいるだった。

 いや、快適だよ。1人の部屋でのんびりと――多分そのうちばあちゃんから風呂空いたー。の連絡が来るだろうが。それまではのんびりである。


 ってか、少し前なら暑かろうとばあちゃんが知らせに来たり。というのがあったが。これだけ夜も暑いとね。ちょっと外、というのも危険な時もあるので、スマホ覚えてもらって良かったー。と思っている俺だった。

 そりゃ、スマホを覚えたことにより。無駄に呼ばれる可能性もあるのだが、でもそれはいいだろう。


 ♪♪~


 などと思っていると俺のスマホが鳴った。ちょっと早い気もするが。ばあちゃんだろうか?などと思いながら起き上がりスマホの画面を見てみると――石見先輩からの着信だった。マジで電話してきたよ。早速かよ。ってか、結崎にはとりあえず電話する話題として、いろいろ考えたが『今日手伝いサンキュ』しか浮かばなかった俺。あとで、とりあえずお礼のメッセージ。お疲れくらい送ろうと今日はしていたのだが――まさかのその前に石見先輩から着信が来るとは思わなかった。


 ♪♪~


 俺がいろいろ思っている間も呼ばれ続けている。本当は無視も――だったが。先輩からなのでね。とりあえずゆっくりと俺は電話に出てみたのだった。


「……はい」

「遅いー」


 すぐに元気な石見先輩の声が聞こえてきた。まだ体力有り余っているらしい。


「電話に秒では出れません」

「後輩くんは、彼女からの連絡に出れないのー?」

「いつ石見先輩は俺の彼女になったんですかね?」

「今?」

「……」


 唐突にいろいろ言い出すのはやめてくださいだな。結崎がもし今居たら――修羅場ってか大騒ぎになるよ。マジで元気有り余っている様子の石見先輩。これ、電話終わるかな?という心配が俺の中では生まれていた。


「嘘だよ。恥ずかしいこと言わさないでよ。この後輩くんはー。先輩いじって楽しいの?もう」

「勝手に言ってるでしょ。ってか、どうしたんですか?石見先輩」

「あっ、後輩くんあれからゆえちゃんと2人っきりだったけど――やった?」

「間違い電話なら電話切っていいですか?」


 俺は通話終了へ向けて準備――。


「あれれ?私はやった?って、聞いただけだよ?エッチなことは言ってないのになー」

「俺まだ何も言ってないんですがね。でも嫌な予感はしたので間違い電話かの確認をしたんです」

「ってか後輩くん後輩くん」

「はい?」

「……はい?きちゃった?うん?どういう意味ですか――?」


 何をこの先輩は言っているのだろうか?きちゃった?うん?着ちゃった?何を着た?違うな。気ちゃった?なんだそれだな。気が来たって謎――ってもしかして……?俺の頭の中でいろいろな可能性が浮かんでいた。


「だから、きちゃった。だよ」


 俺が考えている間もまた石見先輩は同じ言葉を言う。


「いや。だから、何です?って、何言ってるんですか?石見先輩は」

「鈍いなぁー。夏休みだよ?家居ても暇じゃん。それに昨日が楽しすぎたから。今日も後輩くんところ来ちゃったんだよー。開けて」

「……はっ?」


 いやいや俺の予想なんか当たりそうってか。当たった?いやいや当たらなくてもいいんですが――むしろ外れてほしかった。なんか間抜けな声が出た俺だった。


「何いってんだ?こいつ?みたいな反応してる後輩くん。早くドア開けてよ。夜でも暑いんだから汗だくになっちゃうよ。あっ、そういう趣味だった?さすがに――恥ずかしいなー」

「本当に何を言って……って、そんな趣味はありませんから」


 そんな返事をしつつ。ふと部屋の入り口を見る俺。いやいや、冗談だろ。気配はない。多分、いや……なんか影が。でも認めたくない。石見先輩が勝手に言っていると願いたい。ここは緑豊かなところ。野生動物の可能性もある。もしかしたらイノシシでも。いやサルが――。


「家出少女を助けてほしいなー。後輩くーん」


スマホからも少し聞こえていたが。それ以外に部屋の外からも石見先輩の声が聞こえてきた。


「……マジか」

「後輩くん?聞いてる。聞こえてるのに無視してない?」


 コンコン。


「ホントに居るのかよ」

「マジマジ。溶けるー暑いー」


 ドアがノックされて、再度スマホからと外からの2ヶ所から石見先輩の声が聞こえた時点で俺は通話を終了させた。そしてドアの方へと移動。


 ガチャ。


 そして、部屋のドアを開けたのだった。

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