第145話 大きな変化はない。でも――それがいい。5
揉め事?なんか在良君大木君と話していた長宮さんを連れてきたというのか。呼んだというのか。今はそれから少し後である。
俺はそのまま長宮さんと並び階段を移動し、図書室へ向かっているところ。すると長宮さんが話しかけてきた。
「ってか、松尾君なんであそこいたの?職員室から図書室じゃあそこ通らないよね?」
通りませんね。普通に往復していたら気が付かなかったでしょうね。って。もしかしたら、タイミング的に声が聞こえたら反応したかもだが。
「まあ普通なら通らないけど、急に石見先輩に呼ばれて――」
「え?先輩?」
「ってか、石見先輩トイレって、言って戻ってこなかったか」
そういや、石見先輩のことちょっと忘れてたよ。人に丸投げじゃんなどと俺が思っていると。
「あっ!」
「——はい!?」
急に声を出す長宮さん。ちょっとびっくりするから急に大声はやめてくれ。
「忘れてたー。私もトイレ行きたかったんだよ。そしたらトイレの前で捕まってさ」
ここにも同じ人が居たよ。
「……とりあえず――ご自由に?」
「あっ、でも、松尾君来てくれてありがとう」
「あ、ああ」
「いやー、2人にたまたま見つかったらなんかたまには集まり。いや、みんなで前は遊びに行ってたからねー。あっ、別に行きたくて――ってより。みんないるから。って感じでね。っか、来いやらウザくてね。って、雑談あとだー、やばい。限界」
「だからご自由にって俺言ってるよね?」
なんか少し前に似たようなやりとりしたような?と俺が思っていると。長宮さんは先程とは別の場所のトイレへと向かって行ったのだった。小走りで俺の前から消えていった。
残された俺はやっと図書室へ向かった。っか、ずっと重い段ボールを持っているからしんどいんですけど。俺そんなに体力ないから。などと思いながら図書室までやっと戻って来ると。
「——あれ?」
俺が図書室へと戻ってくると――誰も居なかった。結崎は居るかと思ったのだが。もぬけの殻だった。本当に誰も居ない。
机の上には石見先輩の筆記用具やらやらと完成しているイラストなどがあるだけ。にしても、やばいな。どれもすごい。あと周りを見れば本は綺麗に片付けられていた。
「もしかして終わって――探しにいった?」
俺はそんなことを思いつつも、確か段ボールは運ぶのが残っていたはずなので、持ってきた段ボールを置くととりあえず職員室へと向かったのだった。
それから図書室から職員室までは誰にも会うことはなかったのだが。職員室近く。段ボール。荷物があるところへと行くと。残っていた段ボールを持とうと頑張っている結崎がいたのだった。後ろ姿だったので一瞬誰?だったのだが。近づいたらちゃんと結崎と俺は認識した。今も後ろ姿だが――間違いないはず。結崎だ。髪色違うし。ちょっと長さも変わったからね。俺の脳内のアップデートが追い付いてないよ。前がインパルトあったからな。明るくて。今は大人しい。落ち着いているだからな。
「結崎」
「えっ?あっ、松尾居た。みんな帰ってこないからどうしたのかと思ったよ」
俺が声をかけると、結崎が振り向いた。
「悪いちょっと、ってか、結崎頼むから無理しないでくれ。俺の仕事が増える」
「私……そんなにか弱い?」
そう言いながら頑張って持ちあげようとしていた段ボールから手を離す結崎。そんな姿を見つつ俺は。
「うん」
「即答された……」
すぐに返事をしておいた。いや、だって、結崎なんかすぐぶっ倒れそうだから。弱っているところは多々見たことあるんでね。
がーん。って表情になっているが結崎よ。君、か弱いというか。元気な時はいいが疲れた時ボロボロだから。それもそのボロボロ結構な頻度だと思うよ?まだ出会って数か月なのにかなり見たし。
「無理したら倒れるだろが」
「いや、あれは――人間関係ってか」
「いいから、段ボールは持つから」
「あ、うん。ってか、いろは先輩と奈都知らない?」
「多分——どちらもトイレだな。その後は知らない」
「え?」
「2人とも走っていった」
不思議そうな顔をする結崎。
「うん?そうなの?なんか2人で話してるなー。と思ったらいなくなってて」
「あー、結崎は本の片付けしてくれたのか。サンキュ。終わっててびっくりしたよ」
「あ、うん。多分大丈夫と思う」
「めっちゃ助かった。暑いのに悪い」
俺と結崎がそんなやりとりをしていると。
「あっ、居た。後輩くんちゃんと後輩ちゃん助けたんだね。で、今はゆえちゃんとイチャイチャタイムかー。後輩くんも忙しいねー」
「「違いますから」」
俺と結崎の声がハモる。それを見た石見先輩はなんか楽しそうな顔をしていたが。って、あれ?何でここに長宮さんはいないのに、石見先輩は俺が長宮さんを助けたことを知っているんだ?
「ってか、石見先輩。長宮さんは?」
「うん?後輩ちゃん?「チャンス!ゆえの荷物漁ろう!」で、さっき寄った図書室に1人で残ってるけど?あっ。トイレでね。たまたまあったんだよ」
なんかまた言い出したよ。と俺が思っていると被害者のお方は――。
「——はい!?」
突然の事だったのでワンテンポ遅れて反応して、って、まあ、そうなるわな。結崎は驚いていた。なので俺はそんな結崎を見つつ。
「お疲れ様、結崎」
一声かけておいた。
「ち、ちょっと図書室行ってくる」
俺が声をかけると結崎は小走り――いや、そこそこのダッシュで図書室を目指したのだった。何か見られたくないものでもあるのだろうか?いや、特になくても――あさられるのは嫌か。
「……大変だな」
「後輩くんも気になる?」
俺がいろいろ思いながらつぶやいていると、石見先輩が隣へとやって来た。
「全く。ってか、石見先輩。間に合いました?」
「なっ、デリカシーなしな質問してきたー。後輩君まさかの確認させろとか言い出す?言い出しちゃう?さすがにそれは――だね」
「何を言ってるのか」
確かに余計な事聞きましたが。暑いから仕方ない。頭が暑さについていってないのと、周りの方々がね。元気すぎておかしんだよ。疲れてるんだよ。適当な事言いたくなるんだよ。
「後輩くんが特殊なパターンとは。これは覚えておかないとかなりの覚悟が必要な時が来るかもだね」
「散々自分で言ってましたよね?ってか、勝手なことを言わない。広めないように」
「あははー。まあ、もちセーフ。余裕余裕ー」
どうやら問題なかったようです。これは不要な確認だな。
「まあ、ここに居ますからね。アウトなら居ないか」
「あっ、後輩くんやっぱりそういうプレイ好きなの?気になっちゃう?まあゆえはダメかもよ?恥ずかしがって壊れちゃうと思うよ?または――ボコボコにされるかもよ?あっ、私はー、まあ付き合ったら考えてあげるよ?うん。優しいからね」
「勝手にいろいろ言うな――この先輩」
誰かガムテープ持ってませんかね?このお隣に居る先輩の口を塞ぎたいです。まあ塞いでも――変わらない気がするが。気合と根性で、アピールしてきそうだからな。
「ってか、後輩くんが荷物運んだら作業終わりだよ。図書室の方は終わったから。私超がんばった。褒めてもらわないと」
「あー、そういえば、じゃ行きますかね」
「あっ、後輩くん。ご褒美でおんぶとかしてくれる?」
そう言いながら俺にしゃがめ。という感じで手を動かす石見先輩。誰がするとでも?
「……段ボール持つ人に言うことか」
「嘘嘘ー。でも褒めて『先輩。頑張ったから何でもいうこと聞いてあげます』ってね」
「……」
これ、結局おんぶにたどり着くのでは?ってか、暑いのにそんなことできるか。それに段ボール持ったら無理だから。って、段ボールなくてもしないからである。
「あー、後輩くん怒らないでよ。あとでハグしてあげるから。許してよ。ちょっとふざけました」
「ハグはいりませんね」
「なんでー。喜ぶところじゃん。あっ、キスがいいの?贅沢だなー」
「——あのですね」
マジで誰か口縫い付けてやって。
「まあまあサービスも考えるから。私頑張ったから、はい。おんぶ」
なんでそこに戻って来るのか。ってか、結崎。居てほしかった。俺1人でこの先輩の対応は無理。って、こんな姿見せたらそれはそれで結崎がおかしくなるような。とりあえず立ち止まっていても、段ボールは動かないし。暑いだけで帰ることが出来ないので。
「……行くか」
俺はしゃがんで段ボールを持つと歩き出したのだった。
「あー、見捨てられた。後輩くん待ってよ」
騒いでいる石見先輩は置いておいて、俺は最後の荷物を図書室まで運んだのだった。ちなみに図書室へと到着すると――。
「何してるの!もう!」
「ちょっとくらいいいじゃん」
「ダメだから!人の物あさらないでよ!」
「ゆえならOK」
「そんなことないから!」
めっちゃ賑やかだった。
「……何してるんだか」
「ここは楽しそうだね」
「——楽しそうなのか?」
図書室には、結崎に怒られている?長宮さんが居たのだった。
何をしたかは――知らん。状況的にわかったのは――長宮さん結崎の荷物を全てあさったと見た。
図書室は賑やかだったという事ですよ。俺と石見先輩が到着したことで、長宮さんは助け船来たー。って感じでこちらへと避難してきたんだがね。みんないろいろしてくれてるよ。ほんと。
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