第124話 電話
♪♪~
「——およ?誰だろ?」
学校にある自動販売機のところから後輩くんたちと美術室へと行くことになった時。私のスマホが鳴った。
どうやら前を行く2人は、スマホの音には気が付かなかったらしく。廊下を進んで行き――角を曲がっていった。うんうん。あの2人も仲良いよねー。って、電話電話……誰からだろう?私は歩きながらスマホの画面を確認してみると――ゆえちゃんからだった。そして窓際へと移動して外を見つつ。
――トン。
スマホをタップしてから私は話しだし。って、なんか外でパン運んでる。ってそれじゃなくて、ゆえちゃんゆえちゃんか。
「——はいはーい。みんなのアイドルいろはちゃんでーす!」
「……いろは先輩――大丈夫ですか?いや――かけ間違えた……?」
おぅ……暑いし。こういう時は勢いで乗り切ろう作戦の一つ。明るめテンションマックスで電話に出るをしてみたら。ガチトーンでゆえちゃんに心配されてしまった。
「ゆえちゃんゆえちゃん冗談冗談。いやね。学校ホント暑くってこれくらい勢いがないと乗り切れないんだよー。汗だらだらだよー。で、どうしたの?ゆえゆえ?」
「——えっ?」
「あっ。ゆえー!の方がいい?」
なんかいい呼び方あるかな?などと考えていると。
「えっと――違和感しかないから、いつものでお願いします。いろは先輩」
「えー、ゆえゆえ可愛くない?」
「——いろは先輩。本当に大丈夫ですか?熱とかあります?」
「いやいや大丈夫だよ。ゆえちゃんと再会できてね。さらに仲良くなるためにいろいろ考えてるんだから。次は――どんな手を使おうかなー」
「……」
突然訪れる静寂。
「何故に無言!?ゆえゆえー。ゆえちゃん!」
「いや――昨日の事を思い出して――」
「あー、ごめんごめん。昨日は調子乗っていろいろ攻撃したからね。うんうん。次はもっと考えて――そしてレベルアップするから」
「しなくて良いです!」
キーン。という表現が正しいかと思う。そこそこ大きな声が電話口から聞こえて来て、少しだけスマホを耳から話した私だった。もう、ゆえちゃんも元気なんだから。
「………怒られたー。ってあれ?何で私はゆえーゆえー。と話してるんだっけ?」
「——いろは先輩。今のところ全て試している呼び名は却下で」
「えー何でー!?」
「って、そうです。えっと。そのいろは先輩の家に忘れものしちゃったみたいなんですけど――どうしましょうか?って電話だったんですけど――いつ取りに行ったら……と」
「なんだそんなこと?いつでも取りに来たら……あーダメかも。にひひー」
いいこと思いついたー。うんうん。良い事思いついたよー。後輩くんとゆえちゃん遭遇作戦思いついたよー。よし。レッツトライ。
「——ダメ?何か用事――」
「いやー、私の家の鍵は後輩くんが持ってるからね。私の家に来たいなら後輩くんとちゃんと話さないといけないよ?にひひー。さあさあどうするどうする?」
「何で松尾君が持っているんですか……って、そんなこと絶対ないですよね?嘘ですよね?」
「いやいや、あるよ?学校来たらすぐに持ち物検査されちゃってねー。いやーうんうん。大胆だよ全部確認されたからね。隅々まで」
いやー、後輩くん。勝手に名前使う。って今心の中で一応報告したから。ちなみに思いつきだけで私は話しているので、全部嘘だけどねー。
「松尾君がそんなことするとは――むしろ。いろは先輩の方がしそうなんですけど――」
「酷っ!?ゆえちゃんが酷いよー!?私はじっくり調べるだけだよ。ニヤニヤしながら。追い詰めていって――」
「——」
再度訪れる静寂。
「あれ?今私何か認めちゃった?」
「はい」
「わぁお。ってことで――まあゆえちゃん。とりあえず松尾君と会わないとだねー。にひひー」
「……――また後日にしよう……かな」
あれ?なんか聞き取れないな。ぶつぶつゆえちゃんが言ってる――ような――考えてる?
「——何々ゆえちゃん?はっきり言わないと聞こえないよー」
「な、何でもないです!」
急に音量が戻った。またスマホちょっと耳から離さないとじゃん。あっ、もしかしてゆえちゃん私の耳を攻撃してる?小さな声でぶつぶつ言って――私が耳を近づけたところで大声。おお、ゆえちゃんもなかなかやりますね。まあ効果はないけどね。にひひー。って、ゆえちゃん面白い反応してくれるなー。さすが。
「いやー。これはゆえちゃん顔真っ赤と見た。真っ赤っかだね。テレビ電話にする?うんうん。あっ、そうそう、今はポンコツゆえちゃんだっけ?お派手になっちゃっても中身は昔のままかわいいゆえちゃん見たい!今見たい。テレビ電話にしていい?って、まあ昔のゆえちゃんを知っているのは私だけだから――これは守りたいかな。うん。それに私は昔のゆえちゃんも好きなんだけどね。あっ、でも今のゆえちゃんもいいかー。ギャップ最高!ってね。って私何話してるんだろう?あっ、そうそう。ポンコツゆえちゃん見たいからテレビ電話にしていい?」
「……」
再再度訪れる静寂。
「——あれ?ゆえちゃんフリーズ?お派手な仮面付けて強くなった室長様?もしもーし。顔真っ赤ですか?噴火しちゃった?テレビ電話は無理かな?」
——ブチ。
「おぅ……切られちゃった」
突然の通話終了。てへへー。としてみるが。周りには誰もいない。静かー。窓のところに居るのに風すらないよ。もう。暑い。
私はスマホをしまいつつ。
「ありゃー。怒らせた?いやいや、ゆえちゃんの事だから――パンクしたんだよね。うんうん。まあ何かあっても後輩くんに丸投げだ。うん、ファイト後輩くんって――完全に私2人に置いてかれてる――おまけに2人とも私が付いて来てない事に気が付いてないと見た!もう。もっと私も存在感をアピールしないと見えないのか。よし。とりあえず美術室か。突撃——」
私はその後小走りで美術室へと向かったのだっ――って、電話がかかって来た時にパン運んでるなー。だったんだけど。ふと自動販売機がある方をたまたま見たら――パン入れてた……えっ?あそこって飲み物だけじゃなかった?でも――もしかして新!って、それは今はいいかー。とりあえず美術室美術室っと。
◆
――なお、途中で美術室の階を間違えて『あれ?美術室何階だったっけ?』と、迷子になりかけていたのは秘密である。
危ない危ない。たどり着けないところだったよ。さすがに学校で迷子は秘密だからね。って、私が言わなければ問題なし。よし。美術室見えてきた。いやー、普段授業でも頻繁に来ることないから忘れちゃうんだよ。授業が少ないのが仕方ない。そう。私悪くない。
到着!
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