第118話 夏休みが――消える?5

 楚原先生登場から退場までの早い事早い事。ホント早かったな。あまりの速さに俺と石見先輩固まっていたよ。

 ってか、俺は手を洗いに行こうとしていたんだったな。忘れてたよ。埃とかで汚れているから次こそ手を洗いに行くか。と俺が動こうとした時だった。


「先生。逃げたねー」


 固まっていた石見先輩が再稼働した。


「——まあ暑いから逃げたか。まあここもずっと居ると慣れてくるんだけど――そりゃ職員室が涼しかったら。外に出ただけで――暑いでしょうね」

「だよねー。集中してるときはなんか暑さ忘れてたんだけど――暑い。今はめっちゃ暑い。って後輩くんはこれが狙いか!」

「えっ?」


 突然石見先輩が叫んで――俺を見てきたが――はい?である。


「あれでしょ?後輩くんは女の子の汗で透けたシャツを見――」

「何も思ってませんし。人を変態のような扱いに勝手にしないでください。それにエアコンに関しては学校に温度を!って文句言ってください」


 マジで。ちょっと真面目なところもあるのかと思い出したところだったが――やはり石見先輩は石見先輩らしい。ちょっと何か思いつくとだな。


「うんうん。この反応は――必死に否定してくるあたり後輩くん本当は狙ってたなーいいよいいよ。素直に言ってもお姉さん怒らないから」

「——絶好調だな。って、そんなの気にしてませんから」

「まあ――だろうね。この後輩くん。全く興味ないのか。私がギリギリを攻めてるスカートに関しても何も触れないからね」


 そう言いながらスカートを揺らす石見先輩。って、やはり狙いがあったようだ。よかった。何も言わなくて。


「って。そうか!わざと触れないで、見える時にチラチラ見てたのか!後輩くん変態じゃん」

「——スカートが極端に短くなっていたのはわざとだったか――って、何してるんですか石見先輩」

「後輩くんの変態度確認?」

「いやいや、何をしているのか」

「ってか。さすがに短すぎるよね?ちょっと戻そう。恥ずかしくなってきた」


 すると石見先輩は俺の目の前でいきなりスカートの調節を開始するというね。いや何か見えるということはないが。普通しないのでは?と俺は思いつつ。

 って、ふと石見先輩の行動を気にすると、視線は石見先輩の足に――ってこれじゃ思うつぼじゃん。でも仕方ない。そっちに視線行かない方が無理だから。


「うんうん。後輩くん今は見たね。なるほどなるほど、後輩くんは脱ぐところが好きと」

「ちょっと待て、マジで待ってください。そもそも脱いだという表現は今のではおかしい」

「あははっ。楽しい!」

「なんなのか――って、とりあえず俺は手を洗いたかったので手を洗いに行きます」

「あっ、私も水浴び行く」

「いやいや、水浴びとは俺一言も言ってないんですが――」

「さあさあ、涼みに行こう」

「ちょ。石見先輩」


 俺が声をかけたが石見先輩は既に廊下へと歩き出していたので、俺は石見先輩を追いかけるように廊下へと出たのだった。この先輩を止めるのは――無理である。


 それから石見先輩とともに水道の前に来ると。


「あれ?後輩くん。外の水道じゃなくていいの?」

「だから。水浴びじゃなくて手を洗いに来たんです」

 

 俺が蛇口をひねりながら言うと、生ぬるい水が出てきて――少しするとちょっと冷たい水が出てきた。水道管の中も煮えているらしい。 

 そういえば学校とかは屋上に貯めてあるんだっけ?マンションとかがそうだっけ?あれ?どうなっているのだろうか。って、そんなことは別にいいか。


「こんなところで水浴びするとか。後輩くんチャレンジャー。昨日の再現する?」

「しません」


 余計なことを考えていると石見先輩が何を言うかだしね。話を聞いてなくて適当に返事をしたら、大変なことになりそうだし。などと思いつつ。俺は再度蛇口をひねり。手の水を払っていると。


「ってか。後輩くん。飲み物全部飲んじゃったし。自販機行こうよ。水分不足水分不足」

「——まあ、水分は大切ですね」

「よし。決定!」


 それから俺と石見先輩はまた自動販売機のところへと移動したのだった。って、自動販売機のところへと来ると、工事?というか。新しい自動販売機の機械をいれているところだった。

 朝の時点では何もしてなかったのに、俺たちが離れた後、作業が行われていたらしい。自販機の機械が増えていた。既に設置などは終わっていて、作業員の人が確認中?という感じだった。


「うん?何してるんだろう?」

「新しい自販機?ですかね」

「おっ、新しい種類の飲み物飲める?」

「いやいや、まだ冷えてないでしょ。って、絶対何もまだ入ってないですから」


 再度言うが、まだ作業をしている人が点検中である。どうしてその段階で飲めるとこの先輩は思ったのだろうか。


「あっ、そっかー。でもなんか飲み物?の感じではないような――」

「そういえば。中身が見えていて――か」


 石見先輩に言われてちゃんと自販機を見ると。他の飲み物の自販機はあれだ。入っている物の見本というか。缶とかペットボトルとかが並んでいるが。今設置中の物は――中身が見える形で、どうも飲み物の自販機という感じではなかった。何だろうか?


「おもちゃとか売るとか?」

「いやいや、石見先輩。それはないでしょ」


 それは100%ないと言い切れる。学校で何を売るんだ。だからな。いや――100%は危ないか?もしがあるとだし。98%くらいにしておくか。


「だよねー。冗談だよ冗談」

「まあ普通に考えると――なんだ?」

「後輩くん思いついてもないじゃん」

「いや、パッと浮かぶものが無くて――」

「想像力が足らんのー」

「……キャラが変わった?」

「ふははは」

「いやいや何それ」


 俺と石見先輩がそんなことを話していると――って、俺達何を自販機のところでしているのか。これ、俺達のやり取り作業をしている人には丸聞こえというね。恥ずかしくなってきたぞ。するとその時だった。


「あっ、松尾君じゃん。やっほー」


 下駄箱の方からよくよく知った声が聞こえてきたのだった。

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