第70話 2度あることは……3

「結崎乗れ。運ぶから」

「……えっ?」


 長宮さんのヘルプ要請により。カラオケ店までやって来た俺。

 何となく予想はしていたが。結崎はかなりボロボロというか。ぶっ倒れそうだったので、俺は結崎をおんぶするために結崎の前にしゃがんだ。これが現状だ。


 いや、長宮さんが居るがな。さすがに歩ける雰囲気が全くなかったんでね。

 俺は取りあえず結崎を運ぶことにしたのだった。


 俺がしゃがみつつ結崎を見ると、結崎はチラッと長宮さんの方を気にしていたが。長宮さんに見られるのは嫌だろうが……今の現状で歩くの無理だろう。ってことで俺が結崎の前にしゃがんでいると、結崎の隣に居た長宮さんは……ちょっと驚いた?顔をしつつ。


「……松尾君。優しい。ってか、ゆえ。ホント運んでもらった方がいいって。ホント顔色やばいから。ほら、荷物は私が持つから。松尾君に甘える甘える」


 どうやら長宮さんもこういうときは真剣というか。ちゃんと結崎のお世話をしていた。普通ならなんか茶々を入れてきそうだが。今はそんなことはなかった。無かったか?ちょっと最後の言葉を言っている時は……だったが。いいか。と俺がそんなことを思っていると。結崎が持っていたカバンを長宮さんが持った。


 そして長宮さんに言われた結崎は、ちょっと考えてから俺の肩に手を置いてからまたそっと背中に身体を預けてきたのだった。


 結崎の身体が俺の背中に乗ると俺はゆっくり立ち上がった。

 その際に「……ごめん」という小さな声が聞こえた気がするが。お店のね。音楽というか。流れている曲がうるさいのでね。はっきりと俺にはわからなかったので特に返事をせずに……って、まあ結崎を乗せて立ち上がった俺はお店の人に不思議そうに見られていたが。っ そうだよな。受付の横でなんかしてるって思っていただろうな。とっとと退散します。お邪魔しました。と俺は思いつつカラオケ店を後にしたのだった。


 ちなみにお店を出る際にちょっと定員さんの戸惑った?うん。なんかちょっと……という感じの「ありがとう……ございました?」という声が聞こえていた。


 エレベーターに乗ると先ほどとは違って、少し静かになったので。


「……はぁ……はぁ……」


 俺の耳元では結崎の辛そうな声が聞こえていた


 多分もう体力などないらしく。完全に俺にもたれている。身体を預けている。という感じだった。


「……」


 俺の横では結崎を心配そうに見ている長宮さんがいた。エレベーターの中は何というか。静かというか。結崎の声がね聞こえていたから。


 とりあえずその後俺たちは大学前駅まで歩いて行った。

 途中ですれ違った人たちからなんか視線を俺たちは感じた気がしたが。とっとと帰れば問題ないだろうと俺は気にせず歩いた。っか、あれか、2人が目立つから見られていたのか?または結崎のヤバさか。って、それはいいか。

 数回目だが。結崎は軽い方だからね。運ぶのには問題なかった。さすがに暑かったがね。あと地味に今日は体力を使っているので……駅に着く頃にはきつくなっていたが。


 そんなこんなで大学前駅に俺と結崎、長宮さんの3人は到着した。駅に到着すると長宮さんはここまでだと俺は思っていたので。


「長宮さん。荷物もらうよ。ありがとう」


 長宮さんは確か家の方向がこっちではなかったのでね。俺は駅に着くと長宮さんに声をかけたのだが……。


「いいよいいよ。どうせ夏休みだし。ゆえの家まで付いてくよ。松尾君もゆえをおんぶに荷物は大変でしよ?」


 そう言いながら改札の方へと長宮さんは進んで行く。


「いや、でも長宮さんの帰りが遅くなるから……」

「大丈夫大丈夫。遊んだ帰りで遅くなることも良くあるし」


 そう言いながら長宮さんがどんどん歩いて行くので、俺は付いて行くことにした。

 そして3人でとりあえず改札を抜けたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る