第61話 終業式それは始まり5

「じぬ……えらっ……しんどい……」


 俺と蓮花寺さんが下駄箱へとやってくると、バテバテの長宮さんが下駄箱近くで廊下に座り込んでいた。

 どうやらここから見る限り結崎の勝ちらしい。結崎は長宮さんの横で立っていたんでね。とりあえず近づくと。


「奈都が……余計な事……言うからでしょうが……はぁ。って松尾君、澪」

「奈都。もう捕まってんじゃん」

「……お疲れさま?」


 長宮さんが結崎に捕まっていた。というか。長宮さんもう疲れ切っていた。そして暑いのに走ったからだろう。2人とも汗だくだった。

 ちなみに俺と蓮花寺さんは何かを察知したのか。特に打ち合わせをすることなく。2人とはちょっと離れていた。

 いやだってよ。なんかの拍子でターゲットが変わったらだからな。

 さらに俺と蓮花寺さんは2人に声をかけつつ靴を履き替えているというね。もういつでも逃走可だった。


 すると俺と蓮花寺さん向かって長宮さんが話しかけてきた。


「澪ー。助けてー。このままだと私の寿命が縮むー」


 そんなことを言ってきたが。まあ今関わると、結崎にヤられる可能性があるので、と俺が思っていると。やはり蓮花寺さんも同じことを思っていたのか。

 俺の方に声をかけてきた。


「松尾、助けてきたら?私はわかりきってる危険なところには行かないから」

「同じく関わると危険。って俺の身体が言っている」

「偶然だね。私も。今のゆえを怒らすとだし。っか暑いのに走りたくないから」

「あー、それはわかる」


 俺と蓮花寺さんはそんなことを話しつつ 。普通に靴に履き替えて、2人をスルー……はできず。

 とりあえず靴を履いたところでストップした。

 すると結崎も靴に履き替えてこちらにやってきた。長宮さんは、まだ近くの廊下で壁にもたれながらしゃがみこんでいた。

 っか長宮さん。足……閉じた方が。こちらからだと丸見え。と俺が思った瞬間くらいだった。


「奈都ー。水色のパンツ丸見え。あと、松尾がバッチリ見てる」

「ひゃい!」


 蓮花寺さんに言われて慌てて足を閉じていた長宮さん。

 ってあの、俺そんなに見てませんからね?水色ってのは、まあ丸見えだったから把握しましたが。今のはたまたま見ちゃったというか。見えたものでして、と何故か俺は自分の脳内だけで弁明していたのだった。

 そして、とりあえずそんなに見てません。と、脳内で結論が出た。


 ってか本来なら声をかけたほうが。だったが。蓮花寺さん結崎も居たから言いにくかったんですよ。わかって。と俺が思っていると。


 なんか今のが長宮さんが立ち上がるサインになったのか。長宮さんも立ち上がり。スカートを払ってから俺たちの方へとやって来た。


「……松尾君はえっちだなー。見たいならゆえに頼んでよー」


 長宮さんはちょっとだけ恥ずかしそうにしつつ。多分恥ずかしいのを誤魔かすために、そんなことを言ったのだが。まあもちろん。


 ベチャン!


「痛っー」


 長宮さん。今度は背中を結崎に叩かれた……ってか。今変な音しなかった?


「うわ……奈都汗すごいよ……」


 俺が結崎の方を見ると結崎は自分の手をひらひらさせていた。


「当たり前でしょうがー。ゆえが本気で追いかけてくるからー、もう汗でベタベタなんだから。気持ち悪いったらありゃしないんだから。早く着替えたいよ。ってか、ゆえもかなり透けてるからね?っか、くっきりだから」


 長宮さんはニヤッとしながら結崎のブラウスを指差した。


「なっ」


 話を聞いていた俺も見てしまったが。結崎。しっかり透けてらっしゃいました。雨に濡れたら、までは行ってないが。そりゃ結崎もかなり汗かいてるし。ってことで俺はここに居ない方がいいな。


「……じゃ、俺お腹空いたんで帰ります」


 俺がそんな事を言ったらすぐに蓮花寺さんが反応して。


「あっ、松尾が逃げた」


とか言った。いやまあ逃げたが、その場に居るとね。いろいろ俺も被害を受けそうだったので。じゃなくてもあのまま居ると、長宮さんに下着見た。とかでなんか言われそうだし。さらに今結崎の透けているのも見ちゃいましたからね。結崎にもなんか言われそうだったし。


「松尾君ー。今逃げると。松尾君が私とゆえの下着見て逃走したって噂が流れるかもよー」


 いやいや脅しかい!ってことで急遽止まる俺そして声の方を見て。


「怖いから。ってか、見てなくもないが……その噂はやめていただけませんかね」

「認めた」

「認めたね」

「松尾君……」


 うわー。なんか言葉を間違ったような。

長宮さん蓮花寺さんが笑い。結崎は……複雑そうな顔をしていた。とりあえず3人から見られている俺だった。

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