★彼女との距離は762mm
くすのきさくら
俺達のはじまり
第1話 ナローゲージ
ローカル線。この言葉はこの鉄道のためにあるのではないかと最近の俺は思っている。ここまでこの言葉が似合う鉄道を俺は今のところ知らないからだ。
現在俺が毎日通学で使っている電車は、ナローゲージと呼ばれている鉄道で線路幅がとても狭い。
見たことがない人はあまり想像できないかもしれないが。えっと……誰もが知っていそうな鉄道は――そうだそうだ。日本全国。あー。四国はまだか。とりあえず本州やらやらを繋いでいる新幹線。今はどこからどこまで繋がっているんだっけか?俺はあまり地元から出ないの外の事はわからないが。確か……北海道も新幹線が走り出したんだっけか?九州も走っていたよな?うん。多分。
新幹線やらとか言う何百キロも出す鉄道はこの地域では、走っていないので新幹線の説明はいらないだろう……って、違う違う。そんな話がしたいのではない。
俺がしたかったのは、新幹線の線路幅だ。昔にちょっと興味があって調べてみただけだから、間違っているかもしれないが。確か新幹線の線路幅は、1435mmだったかと思う。
あと……在来線とか言うのだろうか。国鉄——じゃない。JRか。その他私鉄とかも入るかと思うが。その線路幅が……えっと。1067mm?だったか。間違っていたら悪い。俺のポンコツな頭が悪い。
でだ。俺の住んでいるところを走っている鉄道。先ほども言ったがナローゲージと呼ばれている鉄道の線路幅は762㎜。新幹線の線路幅の半分とまでは行かないが。ほぼ半分くらいの線路幅しかない。素人が説明する言葉だけではイメージしにくいかもしれないが。とにかく狭いという事だけ覚えてほしい。本当に狭いから。
そして、線路幅が狭い為か車両も小さい。車両が小さいとなると車内も狭くなる。俺が小さい頃は、車内がそこまで狭いとは感じていなかったが。小学校、中学校、高校と身体が成長していくと……えっと、ロングシート?とか言うんだっけか?反対側と向かい合うように座る椅子。まあ、とりあえずそんな車内なんだが。今の俺は足を組んで座ったり。って、別に足を組まなくともか。足を延ばしたら反対側の座席に足が届くような狭さである。決して俺の足が長いとかの自慢ではない。平均的な人なら誰でも反対側の座席に足が届く。
『そんな狭い電車があるかよ。どっかのテーマパークの乗り物。機関車かよ』
って。思う方もいるかもしれないが。本当に狭いのだ。これは事実だ。ちなみにそのどっかのテーマパークさん。俺は行かない……というか行ったことがないので、名前は忘れてしまったが。そこを走っている乗り物?も同じ線路幅だったりするかもしれない。いや、同じだったかな?こういう時に記憶力のいい人は、パッと出てくるのかもしれないが。あいにく俺の頭はそんなに高性能ではないらしい。
ちなみに、現在の日本では、このナローゲージの鉄道は、俺の住んでいるところで走っているだけ。という事ではないらしい。数社?しかもうないらしいが。それでもナローゲージを走らせているところが全国にはあるらしい。まあ今のところ俺は自分の利用するこの鉄道しか知らないが――。
そうだそうだ。余談として俺が見つけた情報を流しておこう。これも以前調べた時にふと見つけたのだが。東海地方だったか。えっと、三重県だな。うん。あそこの北部にはまだナローゲージの鉄道が2つも走っているとか。そのうち……どっちだったかな?あー、そうだそうだ。
762mmの線路を使っているのが三岐鉄道。
1067mmの線路を使っているのが東海旅客鉄道。JR東海。
1435mmの線路を使っているのが近畿日本鉄道。
調べていて、それを見つけたときは『すげーな。おい』とか思ったな。あの時はちょっと実際に見てみたいとか思ったが。あまりにここから距離があるため今のところ調べただけで、実際に3種類の線路幅がある踏切を見たことがまだない。まあ、そこに行けば線路幅の違いがよくわかるかと思う。行ける人は是非。そして俺に報告を――って、何を言っているのか。
話を戻し。その他のナローゲージのところも紹介したいが。紹介するための情報がまだ足りていないので、というか。俺の頭の記憶力がやばいのか。ポンコツ過ぎるらしく。覚えてない。そのうちまた機会があれば調べて、話そうかと思う。そうしよう。いつか。
いつかというときは大体記憶に埋もれて忘れられるんだがな。
……って、俺は何を1人で語っていたのだろうか。ふと周りを確認する。
今は朝。俺はいつも通り高校に向かうために、駅で電車を待っているところだ。大丈夫。異世界などに飛んでいった。とかではなく。ちゃんといつもの駅のホームに立っている。
すると、踏切の音が聞こえてきて、ゴーっというトンネル内の走行音なのか。いつも聞こえてくる音がして。いつもの小さな2両編成の電車が駅に入ってきていた。
危ない危ない。あのまま、ぼーっと何か考えていたら学校に遅刻するところだった。ここの電車は乗り遅れたら次までが長いのでね。都市部みたいに数分待てば……とかではなく。この鉄道は朝晩は半時間に1本。日中は1時間に1本とかだからな。乗り遅れたら大変だ。
「——おはよう。松尾君」
「おはようございます。
ふと、到着した電車内から俺に声をかけてきたのは、この電車の運転手の
……えっ?なんで運転手の人と知り合いみたいな感じなのかって?いや、そりゃ、
この
いや、びっくりでしょ。ここは田園駅というのだが。駅を出たら、目の前は――何もない。緑はたくさんある。あー、駅のシンボルというのかは知らないが。田園駅はこの鉄道の終点。終点ということは線路は続かない為車止めがあるのだが……この駅の車止めのところには……大きなクスノキがドーン。と立っている。じいちゃんばあちゃん曰く。何か守り木?なんと言っていたかはもう忘れたが。大切な木らしい。とにかく俺の住んでいるところのシンボルだな。
ってか、これしかシンボルというか。話すことはない場所だと思う。あっ、ちなみに、クスノキ以外には桜の木が1本だけある。春は綺麗だよ。1つだけど凄く綺麗に咲くから。
あとこの周りを説明すると――道路は、あれだ。駅前だけ少しアスファルトで固められているだけ。基本は砂利道。駅から5分ほど歩くと。1軒だけ家がある。
そこが俺の家。じいちゃんばあちゃんと3人で暮らしているのだが……ご近所さんがね。電車に乗らないと会えないというね。すっごいド田舎に俺は今住んでいる。
ちなみに、まともな道路も過去にはあったらしいが。昔の災害。大雨?台風?だったかで、今も寸断されているため。鉄道がもし災害などで寸断されると――俺の家は孤立する。まあ、小学校の頃からじいちゃんばあちゃんと住んでいるので、もうこの生活にも慣れたが……って、親?まあ、それはそのうち機会があれば話せばいいだろう。今は必要ないだろう。特に必要なければ話す予定もないがな。
えっと、何を話していたか?えっと……とにかく、だから。この駅から利用するのは俺の家族のみ。つまり俺の家族が利用しない日は、この駅は利用客数0となる。完全な0ではないかもしれないが。たまに秘境を目指してくる写真家?鉄道ファンの方かな?が電車に乗ってこの田園駅まで来て写真を撮っているからな。
あと稀に?かな。電気会社の人や。役所の人も来ているか。何かチェックやらがあるのだろう。行ったことはないが。じいちゃんが山の奥。そのまた奥に何か施設があるとか言っていたし。常に人が居る場所ではないと思うがな。
とにかくだ、利用客がめっちゃ少ないため。いつ廃線になってもおかしくない感じなのだが……今のところ俺の住んでいるド田舎。超ド田舎から学校などがある町までの貴重な交通手段である。
って、俺の家族しか使わないような鉄道が存続できるわけもなく。ちゃんと今も走っているのには理由がある。
俺の住んでいるド田舎から町まで繋いでいるこの鉄道は全4駅。4駅のため全駅紹介も簡単なので高校に着くまで説明してみようと思う。
田園駅が俺の住んでいるところ。何もない。じいちゃんばあちゃんもよくこんなところに住んでるな。と思うが……住んでいると――こんなもんか。ってある時から思い出して普通に住めるんだよな。不思議だ。
そして、田園駅を出ると、電車はすぐにトンネルに入る。この鉄道は山を突き抜けているためこの区間は日中でも外は真っ暗。トンネル内だからな。乗車時間は6、7分。長いトンネルを抜けると、急に外の景色が変わる。そして次の駅。
公民館前駅は、大きくはないが住宅地が広がっている。そして、コンビニもスーパーもあり。道路もちゃんとある。俺のところは道路ですら、まともな道はないから。トンネル抜けたら別世界である。
ちなみに、公民館前駅には車両車庫もある。朝晩は基本空っぽだが日中になると。2両編成が2編成走っているこの鉄道。そのうち1編成がこの駅の車庫で夕方になるのを待っている。
ちなみに住宅地があるということは、この駅では多くはないが数人の俺以外のお客さんが乗ってくることがある。
公民館前駅を出発すると、次が
そして、普通の電車なら100キロ前後だろうか?新幹線ならもっとスピードは出るが。ここの鉄道でそんな100キロもスピードを出したら素人の俺でもわかる。脱線の2文字しかないことを。
あまり正確には知らないが。確か早くても40キロ程度のスピードだったと思う。
そして、今どきの電車は乗り心地の快適さを――とか言っているかもしれないが。えーっと、ここの鉄道さんは……走行音がまず半端なくデカい。めっちゃ唸っているというのか。夜になると俺の家は、家の中に居るだけで「あっ、最終電車が田園駅に来たな」とかが普通にわかるほどのデカさ。多分、踏切通過時は、踏切の警報音ではなく。モーター音しか聞こえなくなっていると思う。
そんな半端ない音を出しているが。速度は……出ない。というか。カーブも多いし。ちなみに電車はめっちゃ揺れる。ガッタンガッタン祭りである。
2両編成の連結部分の何かがバンバンと。って、板?つなぎ目のところが跳ねているようなレベル。スピードが出ていないのにあの騒音と揺れなので、全速力で走ったらあの電車は即脱線すると思う。
初めて乗る人は『何だこの電車!?大丈夫かよ!』とか思うかもしれない。毎日乗っている俺はこの揺れで普通に寝れるのだがね。慣れって怖いよ。初めての時はなかなかの揺れで固まったはずなのに。
そんな話をしているうちに電車は高校前駅に到着。高校前駅と言うので近くに高校がある。高校生の俺はこの駅で電車降りる。改札は……あっそうそう、田園駅と公民館前駅は無人駅だが。残り2つは有人駅である。って、ちょっと話が変わってしまったが。改札を抜けると……はい、高校の敷地だ。徒歩数歩だ。改札抜けて、駅舎出たらもうそこは高校の門。駅からのアクセスが良すぎる。
ちなみにここから教室までは地味に距離があるんだがな……ここに来るとそれなりに学生が歩いている。
鉄道に関しての残りの話は、教室にたどり着くまでに話せるだろう。
高校前駅。ここからこの鉄道は急激に利用客数が伸びる。そして電車の本数も増える。そして高校前駅からは複線化されている。先ほど紹介した。2両編成の電車があると言ったが。もう1編成の電車は基本この高校前駅と、次の
高校前駅を電車は出ると車窓はどんどん都会になっていく。大学前駅というのは、他の鉄道会社の駅もある大きな駅の隅っこにある。たまたまこの鉄道会社の改札前に大学のキャンパス入り口?土地?の入り口があるから大学前。というのかは知らないが……とにかく。大学駅前は都市部となる。
俺の通っている高校は、この都市部から来る人が9割ほどらしく。バスで高校に行くこともできるが……バスは道路の都合上大回りをしているため所要時間が電車の3倍ほど。あと料金もかなり高くなる。だからか、朝晩のこの高校前と大学前の乗車率は基本100%越えは当たり前。俺の知っている限り。真昼間くらいじゃないだろうか?ちょっと車内にゆとりがあるのは。
まあ俺は基本こちら側の区間は使わないので満員電車とか全く無縁だが。
ちなみに、クラス内の会話でも……。
「あの電車のもっと車両繋げないのか?苦しいわ」
「広くできないのかな?」
「毎日ぎゅうぎゅうだからなー」
「部活とかで荷物あると乗れないことあるしな」
やらやらの話を入学して1週間ほどだが、かなり聞いた気がする。
話を聞きつつ俺は、みんなが言っているその毎時間満員電車とは、一体どこの鉄道の事を言っているのだろうか?とか思っているんだが……まあ、俺が使っている鉄道の事らしい。信じられないんだよな。俺平和に乗っているし。
はじめの話に戻るが――これは多分なのだが。うん。ここの1区間の利用客でこの鉄道は維持されているのだと思う。えっ?利用客の居ないところを廃線にするのでは?維持費が高いところは切り捨てるのでは?だと?それを言われると――素人の俺は何故この鉄道が残っているのかもうわからないな。
とにかくだ。多分俺の知らない何か理由があって、田園駅とか言う俺の家族のためだけにあるような駅でも線路が維持されているのだろう。と、最近は勝手に思っている。っか、なくなったらめっちゃ困るからな。ホント孤立だからな。
ってか――上手に話したかはわからないが。いい感じに話が終わりそうな時に、俺は教室。自分の現在のクラスへと到着した。
入学式から1週間。少しクラスにも慣れてきた。俺は隣の席の人やらに軽く挨拶して自分の席に座る。
「みんな今日の放課後空いてる?カラオケ行かない?」
「空いてる空いてる。そして行く行く」
「俺も空いてるぞ」
「あんたには聞いてない」
「ひでー」
「俺もな」
「あんたにも聞いてない」
「おい!」
「ゆえは?行くでしょ?」
「あっ、えっと……ごめん。私部活見に行くんだ」
「うわー、さすが優等生。部活も真面目」
「でも、まだ見学でしょ?終わったらカラオケおいでよ」
「う、うん。考えとく」
「待ってるから」
今まで静かなのんびりとした時間を過ごしていた俺だが。これはいつもの事。教室に来るとホント周りの世界が変わる。
今、クラス内が朝からにぎやかなのは、窓際に集まっている男女のグループ。入学して1週間だが。すでにクラスの顔。一番目立つグループになっているところ。目立つというのはにぎやか。だけではなく。美男美女とか言うのだっけか?とりあえず、かっこいい男の子?と、かわいい女の子?とか言ったらいいのか?まあそんな数人が集まっているからでもある。っか、派手な人たちの集まりが居るから賑やかなのだ。
もちろん俺とは無縁の人たちだ。間違いなくな。
それから俺は賑やかなグループの事は気にせず。昨日図書室で借りた本をカバンから取り出し授業が始まるのを待つことにしたのだった。
――ちなみにまさかこの日の放課後に、あのグループのうちの1人と、あんな形で接触するとは思ってもいなかったがね。
――自主規制の文字とともに。
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