第94話 発表1

 結局ウナギを計量してもらったが、周りの反応は渋く、端にも掛ってないことがわかってしまった。

 期待値の低さからか、広角だだ下がりで、他の人から見れば不満な顔になってることだろう。


「ハッチさん。ダメっぽそうですね」

「ぶち猫さん。やっぱりそう見える?」

「えぇ。ナマズみたいに魂の抜けた顔してましたよ。サビちゃんがスクショしてたので、後で送ってもらいましょうか?」

「……遠慮しておきます。というか処分してもらって良いですカァ?」


 流石にアホ面晒されたくないわ!

 確か猫’sはKOKKAを最後まで見ると思ってたけど、向こうは見なくて良いのかな?


「KOKKAは良いの?」

「もう終わりましたよ。惑星ライブは操縦席に長蛇の列ができていたので、こっちに戻りました。ねぇー」


 サビ猫さんのVサインを見せつけられ、少し反応に困る。


「あ! サビちゃん! エミリーちゃんいるよ」

「行くべし行くべし」


 騒がしいのがいなくなって少し安心した。

 これ以上恥を晒して、恥を……よく考えたら今まで以上の恥があるんだろうか?

 全世界にアスタリスクを解放する以外だと思いつかないな。


「ハッチさん。そろそろ解説席へ着いてもらえますか?」

「あ、失礼しました。すぐに」


 中島さんの隣に座ると、その奥にいるミングスさんからウィンクが飛んでくる。それと同時に、前方の集団から殺意も飛んでくる。

 自分は雑草。

 ファンの皆様、音を出す雑草なので無視でお願いします。


「これから大会入賞者を発表します! 頭上の浮遊湖に映し出すのでよく見ていてくださいねー」


 浮遊湖にドラムロールが表示され、様々な名前が回っている。


 5位:イセ 岩魚いわうお:20.6kg


「おぉぉぉおおおおお!」

「さすがリーダー! ポセイドンマンセー!」

「てめぇらのおかげだー! うぃーーーーー!」

「「「「うぃーーー!」」」」


 イセさんが小指と親指を立て勝利のポーズを取っている。

 隣のオトシンさんに、ニヤリと笑いかけると、鼻息を返される。


「5位はヒューマンのイセ! おめでとうございます! 商品はアイアンスパイダーの鉄糸300mです。えーっと運営からの情報ですと、ミズガルズの未発見地域モンスターのドロップアイテムみたいですね」

「『いわうお』となってますが、イワナと形状は酷似してますね。おそらく味も良く設定されてるのかと思います」

「おおっと、ここでハッチさんのリアル魚情報が出てきました。料理可能であれば用途も多そうですね」


 そのために呼ばれたと思うんだけど、これで良いのかな?

 中島さんが頷いてるからOKみたいだな。


「さぁ、4位の発表に移りましょう!」


 ドラムの音に合わせて新たなロールが回り始めると、騒ぎが収まりみんなが静かに見守り始める。


 4位:オトシン チタンクラブ:28.3kg


「よぉっしゃぁああああああああ!」

「な、なんだとぉぉぉお!?」

「これがアタシの実力だっての。『オケアニデス』舐めんなヨォ!?」


 崩れ落ちるイセさんたちとは対照的に、オトシンさんと周りの女性たちが一本指を立て、最高だの一番だのと騒ぎ出す。


「かなり小さめですが、重量はありますね。パッと見だと上海蟹しゃんはいがににも見えますが、中身どうなってんだろ? 名前通り全部チタンなんですかね?」

「さ、さぁ? エミリーさん、いかがでしょうか?」

「オケアニデスってギリシャ神話のですよね? 厨二心がくすぐられます」

「つ、次に行きましょう!」


 何の話も無く進められてしまった。

 実際中身どうなってんだろ?

 あとでオトシンさんに聞いてみるか。

 意識が思考に回っている間に、ドラムロールはすでに回り始めている。


 ドルルルルル。

 ピタリと止まった名前は見たことがない。

 ミズガルズの誰かかな?

 ちょっと面白いネーミングだから、どんな人か楽しみだ。

 ……ちょっと重すぎないか?


 3位:アーゴ・クロンポッチョ 大太刀鮫おおだちざめ:122kg


 一気に増えた重量に前2人が霞んでしまう。

 他人のアホヅラ……と見ていたが、自分の顎が落ちていることに気づいて口を閉じさせる。


「アーゴさん! アーゴさんはどこにいらっしゃいますか!?」


「あ、私だ! はいはーい!」

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