第91話 惑星ライブ中継1
インベントリから潜水ウツボの重量を確認すると、940gもあることがわかった。これなら敢闘賞くらいは狙えるんじゃ無いか?
「それにしても浮遊湖へのポータルは見つからなかったなぁ」
天幕付近へ戻る間も怪しいところを探してみたが、それらしい場所は見つからない。休憩時間は閉じられているとしたら、探すだけ無駄なんだけど、目星だけでもつけておきたかった。
この休憩が終わったら最後だし、残り時間は今までよりも少ない。
「浮遊湖あきらめよっかなぁー。ワンチャン0,05%くらいは行けるかと思ってたんだけど」
「物欲センサーが全力で発動してますね。ガチャだったらもっと%低いですよ」
「ん?」
振り返るとグスタフさんがデカイ鮭を持っていた。
「大物を取りましたね」
「運良く良い場所を譲ってもらえました。その人は上に行ってしまいましたけどね」
「なるほど、俺もさっき穴場を教えてもらって……あ」
もしかして、グスタフさんも師匠たちに教えてもらった口かな?
だとするとノーヒントで探すのは運要素が強すぎる気もする。やはりここの運営は遊ばせるつもりが無い。
「ハッチさんも私と同じみたいですね。師匠の使ったポータルは閉じてしまったので行けませんでした。なので残り時間は素材集めとか楽しむつもりです」
鮭をツルハシに持ち替えて「先を急ぎます」と、すたすた木陰に消えて行ってしまった。
素材集めもあったかと今更気付かされて、ちょっとばかり心が揺れる。
「いやいや、惑星ライブ見に行くって決めてたんだ」
3つのポータルの中で、一番人通りの少ないところに入り込む。
薄暗いプラネタリウムに転送され、最初に目についたのは巨大スクリーンに映し出されるコロニー。
巨大なドームの中でワチャワチャと動くロボットたちが見える。それらがせっせと土を拾い、中央の巨大変換炉に移送するとドーム外に気体が放出され、方々に散らばった小型の変換炉に移送すると空気が生産される。
時には固めた土で壁や小山を作り、それなりの時間をかけたおかげで、部分的にではるけれどドーム内に緑が増え始めていた。
「やっぱりミズガルズは人が多い分ハッテンも早いな」
ドーム外の道も整備され始めているし、船が着陸することもできそうだな。
一番のハッテンを見せられたのは良いが、次にハッテンしている場所はどこだろうか。アルフヘイムも検討してくれていると良いんだが……。
歩き回っていろんな地域を見ていたら、ミズガルズよりも進んでいるところを見つけてしまった。
画面は少し小さくなっているが、その進捗度合いに他の人たちも目を剥いている。誰かがこぼした言葉がすべてを語っている。
「なぁ、あそこだけ生物いないか?」
「いやいや、流石にそれは」
「でも生き物に見えるんだけど」
俺も生物に見える。ネズミみたいに小さいけど、それがドームの中で穴を掘ったり何かを口に含んでいるように見えた。
精巧に作られたロボットと言う人もいたけど、運営がイタズラをするならもっと大々的にやってくると思う。となればマジもんの生き物か?
熱帯魚と水草は送られたって聞いたけど、小動物もつれてったのか?
その階層はスヴァルトアルヴヘイム。
「ウーゴのいるところじゃないか」
動いているロボットも形が違うし、特殊な機体でも使ってるのか?
だけど、この場所は映像の操作ができないみたいで、そうなると気になるのは自分の地域になってくる。
ミズガルズほどの規模では無いが、狭いだけに部分部分ではこちらのほうが開発の進んでいるところもある。特にポックル村とドワーフ村間の道は、小石なども取り除かれていて通りやすそうに見えた。
タイミングよく操縦席が一つ空いたので、そこに乗り込みカメラ機体を起動すると、『アルフヘイム』と画面端に書かれている。
「ちょうど良いや。どのくらいプレイヤーが来ているのか見てみよう」
ロボットの数を見ればプレイヤー数もわかるし、遠隔ロボットも機体の進捗具合で性能が上がるらしいからな。
俺の機体だったら釣竿が内蔵されてるかもしれない。
くだらないと思いつつも少しだけ期待しながら、カメラを地上付近にまで降下させていった。
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