第62話 ウーゴと素材集め

「本当に弱かったんだなー」


「だから言ったでしょ!」


 ウーゴが強すぎるんだよ。


「でも、戦い方は面白いね。遠距離から近距離までできるし、魔法まで使える」


 だから弱いんだよなぁ。

 いっそのこと、どれか武器を決めちゃった方が良いのかなぁ。


「器用貧乏ってね。火力は欲しいところなんだよね」


「生産職だからそのままで良いと思うけどな。それよりも! 鍛冶士なら採掘取ってるよな?」


「持ってるよ」


「じゃあ、ちょっと着いてきて」


 ウーゴの後に続いてしばらく歩いていると、大きな岩が露出するところにたどり着いた。


「ここで採掘できるんじゃないか?」


 採掘っていうと洞窟のイメージだけど、草原の真っ只中でもあるのかな?

 とりあえず、探ってみよう。


 大岩をぐるりと周ってみると、確かに怪しいところはある。だけど、スキルが戦闘用なので【鉱物探知】と【採掘】が入ってない。


「それっぽい場所はあるけど、スキル付けてないからハッキリとはわからないな」


「街のドワーフがここで掘ってたんだよ。試しにやってくれない?」


 誰かが採掘してたなら当たるかな?

 目星をつけていた3箇所で突いてみる。

 2箇所は【石のカケラ】だけ採れたけど、1箇所だけ【劣化鉄鉱石】が出た。


「お! 鉄か!?」


「劣化のね。だけどスキル付けてなくても採れるもんだね」


 ここで採掘できるとわかっただけでも収穫があったな。

 劣化鉄が取れるなら、何か作っても良いね。

 魔法工房には炉があるかな? 無かったら他だとどこだろう?


「それどうするんだ?」


「んー。鍛冶できるところがあったら、道具でも作ろうかなーと」


「だったら! 俺っちの装備作ってくれよ!」


「俺は雑貨系メインだからなぁ」


 グスタフさんに頼んだ方が早いと思う。

 皮集めもするなら、テッケンさんでも良いし。


「それそれ、さっき見せてくれた鉈だよ。それが欲しいんだ」


「え? 鉈がいいの?」


「そそ。便利そうじゃないか」


 確かに便利だけど、武器性能は低めなんだよな。

 植物採取と解体も多少はできて、武器にも使える程度。


「便利!」


「じゃ、それを頼む! 俺も集めるの手伝うからさ」


 手伝ってくれるなら早く作れるぞ。

 多めに集めて収集用の道具も作ろうかな?





「かなり採れたなぁ。ハッチはまだ荷物持てるか?」


「こっちはインベントリいっぱいだよ」


「俺っちもいっぱいだ。落ちてるのは」


「採りすぎたかぁ。しょうがないね」


「そうだな。任せろ!」


 任せろってなんだ? 埋めるのかな?

 ウーゴがせこせこ動き出したのを見ていると、持ちきれなかった鉱石をひとまとめにしている。


「埋めるなら手伝おうか?」


「何をもったいないこと言ってるんだ」


 すると、ウーゴがポケットから糸を取り出して、鉱石たちを何周か巻いている。

 手際良く巻くので見惚れてしまったが、よく観察すると、極細の糸が使われていた。

 巻いた荷物を背中に担ぐと「さぁ帰ろう」と言ってくる。


「は? 何それ!?」


「これは糸術使ってたら覚えた運搬方法だな。良いだろ」


「糸術!? 俺も持ってる! いや、そうじゃなくて」


「へぇ。糸術便利だから使うと良いぞ」


「それはわかった! それよりも、その糸だよ。どこで手に入れたんだ!?」


 こんな頑丈で細い糸があれば、釣りに使えるはずだ!


「こいつは、俺っちのスタート地点に生息していた蜘蛛の糸だよ」


 うおぉぉ! 今すぐ採りに行きたい!

 でも、遠いらしいからなぁ。

 それに10万Gだろぉ?

 そんな金無いよ。


「行くの大変そう……」


「まぁな。……そうだ! ここいらにも蜘蛛いるらしいぞ?」


「本当か!?」


「あぁ。ただ、ちょっと強いと聞いた。せめて装備整ってれば」


「よし! さっそく作りに行こう!」


 早く装備揃えなければいかんな!


「ウーゴ! 早く行こう!」


「わかったわかった」




 魔法工房へ戻り炉を探したけれど、見つからなかった。


「まさか、鍛冶できないパティーン?」


 そこに教授がやってきた。


「聞こえたぞ。鍛冶だったら2軒隣りの工房使わせてもらいなよ。紹介状見せれば大丈夫なはずさ」


「そんな近くにあったのか。ありがとうございます!」


 息巻いて言われた工房に行くと、武具と雑貨が併設された工房だった。


「よし。入るか」


「待て待て! 素材だけでもと待ってたけど、時間かかりそうじゃないか?」


 ウーゴに荷物持たせたままだった。


「ごめんごめん。すぐ整理してくる」





 馬小屋に荷物を置いて戻ってくると、テッケンさんとウーゴが談話していた。


「戻ったよ。というかテッケンさん?」


「ハッチさんが駆け出すところは見えてたんだけど、声が間に合わなかった。それで彼と話してたんだよ」


 なるほど。

 テッケンさん……皮!


「そうだ! ウーゴ。このテッケンさんは皮加工できるんだよ」


「そうなのか?」


「だから、剥ぎ取った皮で防具作ってもらおう」


 だけどウーゴは難色を示していた。


「いやー、金無いし」


 あぁ。そんなことだろうと思った。

 テッケンさんも想定していたみたいで、すぐに返事してくれる。


「別に現金じゃなくても良いさ。素材集めも大変だし、来たばかりだから情報でも助かるよ」


「おぉ! それならできるぞ!」


 報酬に関してはお互いに相談して決めて欲しい。

 そのまま交渉に入りそうになったので、ウーゴから先に荷物を受け取って、鍛冶工房へ向かった。


「おぬしはドーリンのところか」


 お、親方の再来か!

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