第61話 金策同盟の相手は蛮族スタイル

「もうちょっと高くならない?」


「無理だなー。安物を高くはできん」


 剥ぎ取りも悪く無いと言われたが、草原うさぎ全部でも1000Gにならない。狼も合わせて1800Gにやっと届く程度だった。

 売りはしたけど、金策を考えないと何もできないな。


「「どうしたものか」」


「「ん?」」


 広場で同じ声を出したのは、ここに来る時に会った緑色の肌を持つ人。


「あんたは、入り口でウロウロしてた奴か?」


「そうだよ。あの時はありがとう」


「いやいや。あのくらい気にしなくて良いよ」


 なかなか気さくな感じで話しやすい。


「ところでどうしたの?」


「金が足りなくて帰れなくなっちゃってねー」


「そうなのか。俺も金が無くてね」


「「はぁ」」


 金があればお礼に渡しても良いんだが、モウカさんの話では馬車代は3万Gするみたい。

 なけなしの金を渡しても焼石に水だろうな。

 とりあえず自己紹介でもしておくか。


「2度目の出会いだし、何かの縁かな。俺はハーフドワーフのハッチと言うんだ」


「俺っちはオーク族のウーゴ」


「オーク族?」


「ここらじゃ珍しいかもしれないけど、ドワーフでも知らないのか?」


 ウーゴの話だと、オーク族は別の地域に住む種族で、あまりアルフヘイムには来ないらしい。

 ドワーフとはよく交易しているから、知られていると思ってたみたいだ。

 今回、交易の足を伸ばしてアルフヘイムに来たは良いけど、商売で失敗して金が溶けてしまったとか。


「ちなみにいくら必要なんだ?」


「10万Gだな」


「はぁ!?」


 まさか馬車代の3倍以上もするとは思ってなかった。そんな高額だと、すぐには貯められないぞ?


「そういえば、あんたも金が無いって言ってたな」


「あぁ。素材が買いたかったんだけど、金が足りなかったんだ」


「ふーん……そうだ!」


「うわっ!」


 ウーゴがいきなり大声出すからビックリしてしまった。


「ハッチだったよな?」


「あぁ」


「一緒に稼ごうや」


「え?」


「一緒に金策しようって言ってるんだよ」


 出された手を掴んで引き上げられると、システム音が鳴った。


《ウーゴからフレンド申請が来ています》


「え? NPCじゃなかったの?」


「ははは! よろしくな!」


 オークなんて種族は初期で表示されてなかったはず。

 まさか特殊種族?

 いや、2陣以降から新しい種族が見つかったと聞いたこともある。もしかしてそれかな?

 珍しい情報は制限がかかるから、直接見ないとわからないんだよね。


「まだ時間ある?」


 金が貯まったら竹を買うつもりだったけど、まだ足りないからなぁ。


「あるよ」


「じゃあ、草原に出て狩りしよう」





 外門へ向かう途中、お互いの武器確認をすることになった。


「うひゃー! すげぇ良い奴使ってるじゃないか!?」


「そうかな? ふふん」


 自分のもそうだけど、知り合いが作った装備が褒められるのも嬉しいな。


「そのダンビラはどこで手に入れたんだ?」


「ダンビラ? これはなただよ。自分で作ったんだ」


「作った!? 生産者だったのか!」


 性能の上がった鉈だから、ここまでの性能は作れないんだよね。そこはちょっとむず痒い。

 流れでウーゴの武器を見せてもらったんだけど、ひとことで言うと「ひどい」。


「何も言えねぇ」


【石の斧のようなもの】


「よくこれで戦えてるな」


「そうだな。だけど、ここらの近辺なら問題ないぞ」


 それも、現地で見せてもらおうか。

 とりあえず素材の回収と、必要ならウーゴに武器を作ってあげたい。

 といっても、雑貨の範囲なんだよね。

 それでも無いより良いでしょ。




 街の外に出ると、人影はほとんど無く、草原うさぎが数匹見える。


「よっしゃ。ちょっくら見ててくれぃ」


 ウーゴが飛び出すと、うさぎ2匹は逃げることなく応戦する。

 戦闘は数十秒で終わり、ウーゴがうさぎの頭を一撃ずつ叩くだけという作業で、驚かされた。


「な?」


「強いな! まさか狼も一撃なのか?」


「あいつは一発じゃ無理だな」


 それでも一人で倒せるようなので、俺より格段に強い。

 だけど、こんなに楽に倒せるならすぐ金が貯まるだろう?


「うさぎ売ればそこそこになるんじゃないか?」


「あー。それは種族特性が関係するな」


 オークは力持ちの代わりに燃費が悪く、農具関係が装備できないという特性があった。


「というわけで、いただきまーす」


 生で食うのか!?


「焼かないの?」


「焼く時間が面倒だから、最近はそのまま食ってる」


 農業できない代わりに胃腸が丈夫なのかね?

 俺なんかザリガニ食っただけでバッドステータスだったよ。


「さて、次はハッチの戦闘見せてくれ」


「弱いから期待しないでくれよ?」


「大丈夫! 大丈夫!」

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