第41話 ドワーフ村の弟子最高峰
ログイン直後、昨日作ったポンコツ竿を出してみる。
「どこがいけないのかねー? 他に出来るとしたら、研磨と……」
上下左右から見ても、出っ張った節くれを研磨するくらいしか思い浮かばない。
「やっぱりアルデンさんに聞くしかないよな」
独り言を呟きつつ、1階へ降りていく。
いつもの挨拶を済ませて、木工工房へ向かおうとすると、雑貨屋の前にオトシンさんとグスタフさんがいる。
「あれ? 珍しい組み合わせですね」
「ハッチさん! ちょうど良かった。一緒に魔窟行きましょう!」
グスタフさんの被せるようなセリフに気圧される。
どうせ行くのは変わらないから良いや。
オトシンさんもついて来るらしい。
「ハッチさんも念願の竿が出来たんですねー」
「名前も使い心地も悪いですけど、楽しいですね」
「私も竹槍を作ろうとしたんですけど、どうにも上手く行かなくて」
「あれ? 他の人たちが作るって言ってませんでした?」
弟弟子も作り始めているが、自分でもやってみたくなったらしい。それで、全員出来が悪かったと言うことか。
こういう他の分野については、専門の場所に行かないと教えてくれなかったりする。実際、親方に話しても「アルデンに聞け」で終わってしまった。
「いつ来ても緊張します」
「アタシもここだけは1人で来たく無いな」
ここのルールは意外と簡単で、アルデンさんに敬意を払うことと、独り占めしないこと。そして、今回はタケノコというお土産があるので、楽になると踏んでいる。
その自信があるので、俺は
「こんにちはー。アルデンさんいますか?」
「むむ。NO.1ですか。本日はどおーんな用事で?」
毎度先頭に出てくるこの人が、アルデンふぁんくらぶの会長。
モウカタンさん。
面白い名前だと思って聞いたことがあるんだけど、本当は漢字で『猛火担』にしようとしたらしい。なぜしなかったかわからないが、深く突っ込まないことにした。
そして俺は、アルデンさんの弟子NO.1ということで、なぜか一目おかれている。
「竹の扱い方を聞こうと思いましてね。ついでにお土産の…これを」
タケノコを2つ。
俺の後ろでも2つずつ取り出している。
「ほうほう。アルデン様に献上とは、なかなかの良識ですわね! あなたたち、道を開けてあげて」
モウカさんの後ろで勢揃いしていた人たちが道を開けてくれる。
「いっぱいあるので、片方は皆さんで使ってください」
「よろしいのですか?」
「まだたくさんあるので、アルデンさんも多すぎたら困るでしょう」
俺たち3人が、それぞれ1本ずつ渡す。
「そういうことでしたら…会員証を出してください」
良くわからないが、俺たちが会員証を取り出すと、会長が変わったハンコで推していく。
推した所がキラキラ光ったかと思えば、一瞬で光は消えて赤い印だけ残った。
_______________
”アルデンふぁんくらぶ
(ア)
会員NO.0634”
_______________
これはオトシンさんの会員証。
「ア? 何だろう?」
「4つ集めると会員証がグレードアップしますの」
「ほー。何か特典があるのか?」
「私たちへの依頼がスムーズになりますわ」
なかなか良い条件かもしれないな。木工に関しては、この人たちがトップ生産者だろう。
だけど、気になることがある。
「俺貰ってないんですけど?」
「NO.1ならいつでも依頼受けますわ。ただ、親方の許可が降りないだけかと…」
まさかの依頼自由だったのか!
しかし、確かに親方の許可は貰えそうに無い…。
ちなみにグスタフさんのナンバーは100。
キリが良くて良いと思ったら、99以下は俺以外の男を入れないことにしたらしい。
それを聞いて、気持ち会員証が重くなったような。
「そうでしたわ。ナンバーワンに頼みがあったのです」
「なんでしょう?」
「柄無しナイフの納品をお願いします。50本。」
カバンを漁ってみると、10本あった。
先にこれだけ渡すか。
持ってる分だけ渡し、残り40本と結構大変かもしれない。
期限は1週間貰ったので、時間は余裕があるな。
「ハッチはいつもこんなに受けてるのか?」
「ほとんど俺とぶち猫さんで納品してるかな? 他に作る人いなかったからね」
モウカさんが検品すると、納得したように頷く。
そして、おもむろにテーブルから作りかけの
俺やグスタフさんなら数分かかる。
俺が知るプレイヤーの中で一番の謎人物で、スキルからゲーム知識まで、俺たちの何歩も先を行っている。
「お、おい。今の魔法じゃないか?」
「あぁ。最近知ったんだけど、モウカさんはかなり前から魔法使えたみたいだよ」
俺の知る限りだと、グスタフさんよりも前に魔法を覚えている。
どこで覚えたのか知らないが、ポックルのファン達は全員魔法を使えている。ハーフドワーフも成人したらすぐに覚えに行くだろうな。
「アタシも覚えられると良いけど…」
人族でも
それも村長に聞いてみるしか無いか。
後で教えてあげよう。
俺の横でモウカさんが完成させたナイフを、新人らしきファンに渡していた。
「もじょこさん。これはあなたに」
「ありがとうございますー」
三角帽子を深く被った女性。
ちょっと背は低いけどポックルより高いし、一応人族なのかな?
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