第20話 第3陣

 重量制限パンパンまで鉄鉱石を入れると笑みが溢れるね。

 テッケンさんに取引出して良かった。

 ウキウキで雑貨屋に戻ると多くの人が居た。


「ぶち猫さんが3陣来るって言ってたっけ。どうせ武器屋に行くでしょ。通りまーす。」


 人混みをかき分け中に入っていくと、中も人でごった返していた。


「うわ。今回は特にすごいな。」


 外も合わせると50人くらい居そうだよ。


「ハッチさんお帰りなさい。こっち!」


 パッと見わからなかったけど、カウンター奥にいるみたい。

 ぶち猫さんまで近づいて聞いてみる。


「今回もすごいね。あと知らない種族もいるみたいだけど?」


「私達より少し小さいのがポックルですよ。あと多いのは…」


 なんか言いづらそう。


「言いたく無いなら、別に言わなくても良いけど?」


「そうじゃなくて、みんな親方とリリーさん目当てなんです」


「ん?弟子入りってこと?」


「はい。昨日の配信で呼び寄せちゃったみたいです」


 昨日のことを思い出しても、ポッキリ折った記憶しかない。

 思い出しただけでも歯軋りしそうだ。


「失敗しか思い出せん」


「思い出さなくて良いですよ。それより鍛冶やるのでは?」


「そうだった!じゃあね!」


 今日は多めにあるから、早めに手をつけないとな。

 スキルを変更して鍛冶仕様にする。

『鍛冶+』『熱耐性』『打耐性』『自然回復』『器用』

 欲を言えば『力』も入れたかったけれど、仕方ないよな。


 インゴット6本分だから、頼まれ品が失敗しなかったら工具もアップデート出来そうかな?

 インゴットは問題ない。

 ナイフも慣れてきたし、時間かけて作れば良い。

【解体ナイフ−(柄無し)】

 十分な出来だな。


 柄は後で作るとして、次はペグ。

 インゴットを4分割するために、火入れして柔らかくすると目印が出てきた。


「これって分割の場所?ここを叩けば良いのかな?」


 鉄杭を打ち付けていくと3回叩いただけで割れてしまった。


「えぇ!?こんな早いの?」


 他のところも目印が出て、すぐに終わった。

 ペグの形を整えるのも早く出来、ペグだけなら10分も掛かってないかもしれない。


「これはスキルの影響か?そういえばLV10超えてたっけ。」


「生産系スキルはLV10になってようやくスタート地点だ。」


 声の方を向くと親方がゾロゾロ人を連れている。


「こいつらは新しい弟子だ!」


 横にいた弟子の肩をポンポン叩いている。


「親方。その人、投げたりしないですよね?」


「んなことやるかよ!」


「それでLV10でスタートというのは?」


「急に話戻しやがる。LV10になると、ようやくマイナス補正が無くなるんだ。今まで下手になる呪いが掛かってたんだよ。」


 マジかよ。

 どうりで作りづらいわけだ。


(おい。LV10って言ってたぞ)

(トップ戦闘職でもLV9が最高だったはず)

(LV10アナウンスってもしかして生産系?)

(ハーフドワーフ当たりだったかもしれないな。)

(これが親方TIPsか)


「えぇ?ハッチさんLV10持ってたんですか?」


「あ、ごめん。言うの忘れてた」


「そんなさらっと」


 俺たちの会話を遮る様に親方が説明を続ける。


「ちなみにLV9から10になる為の必要経験はかなり増える。」


 9以降が長かったから、それはなんとなくわかってた。


「それとアーツが使えるようになる。」


「なにそれ?」


「一番簡単なのを見せてやる。一個貰うぞ。」


 俺のインゴットを受け取ると、炉の前でハンマーを振り上げる。


「見てろよ。『ランク1鍛造たんぞう』」


 親方の手が光るとハンマーを一度だけ振り下ろす。

 ゆっくりと退けたハンマーの下には、完成品のナイフの刃があった。

 俺も含めて全員が呆けている。


「これがアーツの鍛造だ。アーツを使うと手作りより劣化してしまう。鋳造ちゅうぞうもあるが、鋳型いがたを作る技術がまだ足りてないのと、更に劣化してしまうのが難点だ。」


「すげー。俺も出来るんですか?」


「出来るが、今も劣化なのに更に性能落とすのか?」


「ぐっ。それは困る。」


「まぁ、そのペグ位ならやっても良いかもしれないな。そうだな、後で劣化鉄鉱石をインゴットにしてみろ。」


 それを言うと、親方はまた新弟子の案内を始めた。


「やってみたいが、新しい道具が先か。」


【くず鉄の劣化トンカチ−】→【劣化鉄のトンカチ−】

【くず鉄の劣化ツルハシ】→【劣化鉄のツルハシ−】

【銅の劣化手斧】→【劣化鉄の手斧−】

 これで良いな。

 あと、親方が言ってた劣化鉄鉱石やってみるか。

 最近取ってなかったから2回分しか無いな。


 バケツに突っ込んで溶かす。

 あとは型に流し込んで入れるだけだが、数字が出てきた。8?減ってきてる。5、4これってタイミングか?2、1、0ここだ!そのまま型へ流し込む。

 赤熱する液体の色がいつもより綺麗。

【劣化鉄のインゴット−】


「ウソだろ!?せっかく1層でがんばったのに!劣化鉄鉱石じゃこんなん出なかったのにー!?」


 なんとなくわかった。

 難易度が高いと補正かからなくなるの奴だ。

 俺のスキルが上がればいずれ出来るようになりそう。

 だけど悔しいな。

 数日前にLV10なってたから、ずっと無駄に1層で潜ってたんだろ?


「くそぉぉぉぉ!」


「今日からあれが日常なので、早めに慣れてください。」


 ぶち猫さんの声が聞こえたような気がする。

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