第19話 生産取引

 朝のニュースを見るとネテラの特集がやってた。

 キャスターと専門家の対談形式で話を進む。


「このようにキャタピラ式の移動と、背部に収納されたプロペラで移動しています。」


「なるほど、機体はこうやって動くのですね。環境改善のペースはどうでしょうか?」


「正直言うと遅いと言われるかもしれません。現状の進捗は0,001%です。」


 キャスターが説明を求めると、まず惑星の大きさが地球の3倍サイズとなっていることがある。現在はドーム型の拠点内部が主な改変場所となっている。

 プレイヤーの行動で多少は進んでいるが、ドーム内だけでもまだまだ環境が整ってないと言っている。


 機体がドームの中に設置された装置に何かを入れている映像が出てきた。


「これはあの装置に特定の物質を入れることで、上空にオゾンを作り出しています。」


「一定量に達するとドーム外も良くなると言うことですか?」


「継続する必要もありますし、必ずとは言えませんが、良くする大事な部分ではあります。早期に始めた理由も膨大な時間がかかるからですね。発表された内容では、このペースで300年以上先の完成となります。」


「大変気の長い話でしゅが、夢がありますね。」


「…未来の子孫の為です。本日の昼過ぎから3回目のアカウント追加ですからね。躊躇ちゅうちょされている大人も是非参加していただきたく思います。」


「以上、『Neo Earth Terraforming』の特集をお送り致しました。」


 若干顔を赤くしたキャスターが頭から離れない。


「しゅ…。これは流行る。恵比寿様。本日もよろしくお願いしましゅ!」




 ◆ ◆ ◆


 ひざまずく俺の前には、真っ二つに割れている赤熱した鉄がある。


「やっぱり。『しゅ』がいけなかったんだ!恵比寿様ごめんなさい。」


「しゅ? ハッチさんがまたおかしな事を言ってますね。それより、そろそろ3陣来ますよ?私は行きますけど、ハッチさんは見に行かないんですか?」


 3陣の追加も気になるけれど、このペースだと鉈が間に合わなそうだ。まだ研ぎに入ってないからなぁ。


「今回はやめとくよ。ちょっと道具を新しくしようと思うから、鉱山行ってくる。」


 いつものように親方から手紙を貰って鉱山へ行く。

 鍛冶スキルがLV10を超えてから、途端に上がりが悪くなった。

 鉈が高難度なためか、時間を掛けると微量ずつ上がっていく。

 今までがイージーモードとは思わなかった。

 スキルLV10の特典が、スキル枠の増加!

 ただし、未成年の間は5枠のままで、成人後一気に増えるみたい。


 鉱山用のスキル構成を書いておくと『採掘+』『投擲』『鉱物探知』『自然回復』『器用』にしている。言語系は設定しなくても使えるとわかった。

『力』にすると掘るスピードと持てる量は増えても誤差範囲。それより『器用』で正確に当てた方が良品が出やすいとわかった。


 前に打診していたスキル記憶機能は追加されたよ。運営の告知で希望者が多数ってあったから、相当問い合わせあったんだろうな。


 毎回ではないけれど、劣化鉄鉱石ならマイナス無しの通常品が掘れる。なので現在は『器用』スキル育成中でLV5まで上げた。


「掘ってー掘ってーまた掘ってー。」


【鉄鉱石−】またマイナス品か。

 まだスキルが低いのかな?

 だが、今回の目標は道具のランクアップだ。

 この鉄鉱石でトンカチとツルハシを作り直す!


「あれ?ハッチさんここに居たんだ。」


 振り向くとテッケンさんが居た。


「ん?テッケンさんも生産するんですか?」


 確か戦闘系スキルを多く取ったとか言ってた気がする。


「うーん。グスタフさんに頼んでるんだけど、小物道具も必要になってきてね。ほら、雑貨屋って店におろすので精一杯だから、戦闘職まで回ってこないんだよね。」


 確かにそうかもしれない。

 一般用に作ってたら、他の店が回らなくなる。

 申し訳ないが諦めて貰おう。

 そう思ったが、ちょっと閃いた。


「テッケンさん!物々交換的なのやりませんか?」


「え?どういうこと?」


「テッケンさんが、ここで採った鉄鉱石を俺が加工するんです。手数料にちょっと余分に貰うっていうことです。」


「確かにそれなら作らなくて良いから、無駄に育てなくて良いかも。」


「あ。ただ、俺もやりたい事があるんで、出来る時って限定ですけど。」


 それで良いと言ってくれた。

 試しに解体用のナイフとテントのペグを頼まれた。


「それなら、明日までに出来ますね。鉄鉱石マイナスで良いので、5個です。頑張ってください。」


「わかったよ。」


 その後は、並んで掘り、敵襲も共同だったので楽だった。

 というか、テッケンさんがほとんど倒してた。

 俺も戦闘スキル育てようかな…。



「じゃあ、これでお願いね。」


「了解です。明日、いない時だったらメールを送るということで。」


 これで俺の鍛冶生活も安泰だな。

 というか、いつになったら釣り出来るんだ?

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