ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

何をするにも道具から

第1話 Neo Earth Terraforming


「おい! 上を見ろ!」


 誰かの声に気づき、見上げてみる。



 何の前触れも無く、繁華街の上空に巨大なホログラフが投影された。




 _________________



「10年前、世界会議で惑星テラフォーミングが可決されたのは、誰もが覚えているだろう。」

「各国が諦めていた夢を、世界で企画した最大プロジェクト。」

「世界中の一流達が集まり、開発、実験、試行を経てようやく始動する。」

「我らの新天地を作ろう!」

「君達が主役だ!」



 その文言の後に、ドラゴンが現れ、炎が埋め尽くす。

 場面が変われば、モンスターと戦う人々。

 厚い雲に覆われ、雷の落ちる城。

 多くの煙を吹き出す街。

 暗い水の中に光る目。

 空飛ぶ島。


 一瞬で草も生えない荒れた土地になる。

 多くの人サイズの機体が駆け巡ると、徐々に湖ができ魚が飛び跳ねる。

 草木が生え、動物や鳥達が飛び出す。


『Neo Earth Terraforming』

 ”近年公開”




 _________________



「え?」


「うそ!?」


「100年先って言われてたのに……」





 翌日からどこもかしこも、『Neo Earth Terraforming』の話題しかない。

 ニュースもSNSも全て。

 そのニュースを見てる時、友達からコールがかかってきた。


「望も見たか!?」


「見たよ! すごかったな!」


「今でも信じられないよ!」


 誰かも言っていたが、技術的に100年先になるだろうと言われていた。昔に比べると長生きになったが、俺らも生きているかわからない。それが、出来るとなれば歓喜する。


「近年公開ってあったから、公式情報チェックだな。」


「変なゲーム買って始められないとかは無しにしてくれよ?」


「それはオレのセリフだ!」


「「はっはっは」」


 俺たちも半ば諦めていたが、出来るなら貯金だ。

 アランは本当に大丈夫か?

 衝動買いするし、すぐ旅行行きたがるからな…。




 ◆ ◆ ◆




 全世界同時開始のため、専用機生産の数が追いつかなかった。

 工場を最大活用して、世界で作られる数が5億。

 それだけでも相当数だが、各国の初期参加者は、多くて1000万人だろう。

 日本も100万人と頑張った方だ。

 当然だが、応募者多数の為、抽選となった。



 運良くアランと共に当選し、一緒に始められて良かったと喜び合った。

 毎日神棚のえびす様に祈ったおかげだな。

 当選祝いにタイをお供えしておこう。


 3週間置きに同数ずつ増えていく予定なのと、後発組は一時的に経験値ブーストがかかるらしい。

 運営も先行組だからと言って、アドバンテージはそんなに出させないようにするらしい。



 ◆ ◆ ◆




 あれから1年ちょっと経つが、ついにこの時が来た。



『Neo Earth Terraforming』はMR(複合現実)タイプのゲームだった。

 これまで、MRは何度も発売されているが、あまり評判は良く無い。ARよりも現実との区別がつきにくく、怪我も多発したため、大規模なアトラクション施設限定となっていた。そのため同時参加人数が少なく、大規模MMOはVRという風潮が流れている。

 誰しもまたMRか。

 そう思っていたが、公式の説明だと、新惑星にある機体に乗り移って操作とある。

 徐々に公開されていく情報に、ファン達も目を見張った。

 新型のMRマシンを配備して、自宅でも接続可能にするという。おそらくこの部分が難しいと言われていた技術だろう。


 今まで数多のゲームに手をつけ、数多の魚を釣ってきたが、待望していたMRの登場だ。働いて稼いだ金もかなり吹っ飛んだが、仕事にも使えるから損はしないだろう。


「オトドケモノデス」


 配達されたのは、巨大な台座と専用のゴーグル。2つ折状態で1畳分の大きさとなっている。

 20kg程なので持つことも出来た。


「ど真ん中に広げるしか無いか……。寝床が折り畳みマットレスで良かったよ」


 広げてみると円形の形をしていて、電源を付けるとキーボードのホログラフが出てくる。


「おぉ! これがリンクステージか! 乗ってみよう!」


 VRの卵形と違って、台座の形状をしている。


「とりあえずメンテナンスしないとな。これがスタートボタンか」


 ボタンを押すと台座に球体の膜が出来、体が浮く。


「なるほど、浮かせて動作をスムーズにするのか。えっとリンク先は……」


 今までやってきたゲームも並んでいる。釣り要素のあるゲームは大体やってきたからタイトルも豊富にある。

 その中で一際目立っているのが、『ラブリー学園コミュニティ』通称:ラブ堀。学園系のソーシャルゲームだったが、メダカと金魚しか釣れないプールがある。ただの釣り堀と侮ってはいけない。ゲーム開始から2年後に巨大メダカと金魚がいるとわかった。そいつが引く確率が1万分の1。引いた後の難易度もベリーハード級という鬼畜仕様となっている。

 その情報が流れてから釣り場だけ、釣りカス共の魔窟となっている。一般プレイヤーは不参加のカオス空間だ。俺はもう釣ったが、5年続けて引きすらゼロの悲しい知り合いがいる。そのアランは、毎日死んだ魚の目をしつつ巨大魚を待っている。ついた2つ名は『冷凍マグロ』。

 おっと、意識がそれてしまったが、続きをしないとな。



「まずは体のスキャニングがあるのか。OKと」


 全身に光がかかり、機械が読み取っていくこと10秒程度。


「えっと、『海老名えびな 望太ぼうた』戸籍登録情報と一致」


 このゲームは世界をあげての企画なので、国ごとに許可が必要となっている。俺も申請したが、人数制限も無いので、すぐに通った。悪用しないように決められているのだろう。


「次は専用ゴーグルを付けて、NEテラに接続ね」


『Neo Earth Terraforming』縮めてネテラ。

 何でも縮めるのは日本人の悪い癖だが、もう浸透してしまったから仕方ない。

 画面のナビに沿って進めるが、MRは体を動かして操作するから、どうしても時間がかかってしまう。

 


 次はようやくキャラメイキングか。

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