人形工場

右左上左右右

第一夜

第1話

吾輩は人形である。


名前はまだ無い。




どこかで聞いたようなフレーズに一人、鼻を鳴らした。




気付いたら、人形だった。


ただ、それだけだ。


手足は動かせず、筋肉や腱やそれに類する物を感じようにもどうしようもなく、空虚な感じがしていたのも、己が人形であれば納得だ。


無いのだ。


いや、名前はどうやらあるらしい。


人形と言えば「なんちゃらちゃん人形」だろうが、今、工場の片隅で山と積まれた中の一体である自分にはなにちゃん人形であるのかは不明である。


とりあえず、早く梱包して出荷して欲しいものだ。


何せ、どうやら、周囲の人形は、どうも、放置されすぎて悪霊化が進んでいる様子なのだから……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る