記憶喪失の少女と1人の少年の物語
鳴神 祈
1人の少女との出会い
ある森の中で一人の少女がそれはそれは幸せそうに眠っていました。
そこへ1人の少年が近寄ってきました。
少年は少女を不思議そうに覗きながら話しかけました。
「お嬢さん、こんなところで寝てると風邪を引いてしまうよ。」
少女が目を覚まし少年を見つめると少年はびっくりした顔で少女を見つめていました。
それもそのはず、少女は金のロング髪をなびかせ、グリーンの目をしていたからだ。
歳は少年と同い年くらいだろうか。
「お嬢さんお名前は?家まで送るよ」
少年の声に少女は口を開きます。
「・・・わからない。気づいたらこの森にいて、歩いてたら疲れたから休んでいたの。」
その言葉を聞いた少年はまたしてもびっくりした顔をした後、笑顔になって
「そうかい。じゃあ、君の記憶が戻るまで一緒にいることにする。可愛らしいお嬢さんを一人置いとくと、悪い大人が近寄ってきそうだからね。」
少年が笑顔で言うと少女は首をかしげ少年を見ます。
「俺の名前はルイ。これからよろしくね」
と自己紹介をして、手を差し出しました。
少女は少し考え事をした後、少年の差し出された手を握って一言。
「・・・よろしくおねがいします。」
少年は笑顔で少女の手を握り
「ずっとこんな所にいたら、何があるかわからないから、俺の家においでよ」
と提案してきた。少女はまた少し考えて
「・・・わかった。」
と答えると、少年は少女の手を引いて
「こっち。ついて来て」
と家に向かって歩き出しました。
少女は少年に手を引かれるままついて行くのでした。
少し歩くと一つの小屋にたどり着きました。
「ここが俺の家。両親はいないから、自由に使って?」
そう言いながら、中へ入りました。
少女も一緒に中へ入って、中を見渡します。
そこはなんの変哲もない、普通のお家でした。
少女が立ったまま動かないでいると、ルイが見かねて話しかけます。
「そんな所に突っ立ってないで、こっち来て座りなよ」
ルイは少女にそう言った後、キッチンでお茶の準備をはじめました。
少女はルイに言われるまま、椅子に座ると温かいお茶が出された。
「こんなものしかなくてごめんね。毒は入ってないから安心して飲んで」
ルイが笑顔で少女に言うと、少女はお茶の匂いを嗅いで、一口飲みました。
「・・・おいしい」
そういうと、ルイは笑顔で「よかった~」と一言言った後
「そのお茶は母さんが大好きだったんだ。口に合ってよかったよ」
と安心したようでした。
その後、少女は静かに出されたお茶を飲んでいました。
そんな姿をルイは静かに見守り、何かを思い出したように話しかけました。
「あ。そうだ。君の記憶が戻るまで一緒におるって話したけど、名前がわからないと呼べないから、仮の名前をつけようと思うんだけど、どう思う?」
すると少女はお茶のカップを口につけたまま、頷きました。
ルイは「よし!決まり!どんな名前がいいかな?」と独り言を言いながら真剣に名前を考えてくれました。
「よし!“シルビア”なんてどう?」
ルイが少女に笑顔で聞くと、少女は「シルビア・・・」
と言いながら少し無言になり、そして
「うん。いい名前。」
と笑顔で答えました。
その笑顔をみたルイは驚いた顔をした後、頬を紅く染めながら
「気に入ってくれて良かった。シルビア、改めてよろしくね」
と手を差し伸べると、シルビアはルイの手を握り返して
「・・・こちらこそ。よろしく」
と笑顔を見せたのでした。
それからは、ルイがシルビアにお茶のおかわりを注ぎ、これからについて話し合いました。
その結果、明日から街へ出て聞き込みをしながら、必要なものを購入しようという事になり、ルイはひとまず使ってない部屋をシルビアの部屋として案内して、2人は眠りにつくのでした。
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