2021年06月06日【学園モノ】過去/墓場/最弱の関係(517字を/15分で)


 長期休暇のたびにアルファは、同じクラスのブラボーを遊びに誘う。普段は気さくに遊ぶ仲で、一番の親友として知られている。それでも長期休暇だけはアルファにも譲らなかった。今年の夏休みも同じだ。理由を尋ねても「人に言うもんじゃない」の一点張りで誰にも聞かせていないらしい。


 次はどのように攻略するか考えていたら、道端で偶然にもブラボーを見つけた。荷物は普段より大型だが旅行としては少ない。気になったので、アルファは尾行してみた。普段通りの様子で在来線に乗り、都会を離れ、郊外にしては大きい駅で降りた。


 広大な墓場と川魚が有名な駅だ。山の斜面を埋め尽くす墓石に向かい、斜面を登っていく。いつだったか、ブラボーが世話になった恩師の話を聞いたことがある。会いに行くと言いながらも新しいことをしていない様子で戻っていた。アルファは、ブラボーについて何も知らなかった。


 尾行をやめて、アルファは一人で帰りの電車に向かった。ブラボーが伏せている以上、自分から踏み込むのはよして、本人の選択に任せる。何が親友だ。ブラボーの過去を癒すには惰弱すぎる。アルファは自嘲し、書店で新しい参考書を探した。いつかブラボーが過去を語るに値すると思える人間になるために。



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