2021年05月27日【学園モノ】鳥/迷信/最高の城(751字を/25分で)
三年生の冬は決めた進路に向けて準備する時期だ。アルファはすでに内定を得ているので、専ら友人グループの相談や応援を取り組んでいた。進学組に図書室の資料を届けたり、就職組の情けない忘れものを防いだりしている。手間がかかる子たちに小さなポーチを用意し、中の透明ポケットにメモを入れて、この場所に何を入れるか確認できるようにした。その甲斐あって持ち物を用意する習慣ができつつある。
一人だけ、進路も決まっていない者がいた。名はブラボー、得意教科は家庭科と数学。アルファのお嫁さんになりたいと言うが、肝心のアルファからの好意はまだ薄い。アルファは大黒柱となるにはまだ力量不足を自覚しているので、そんな男が嫁を選ぶには早いと考えている。ブラボーからの説得は、お嫁さんが先で力量が後だと主張するが、アルファは信用していない。アルファは迷信に騙される経験が多く、不確かな言説への恐怖心が強い。
とりあえず思いつかないなら進学して、選択肢を増やしておくのがよい。アルファの助言に基づいて、ブラボーはとりあえず触れたことがない分野に熱心な学舎を調べて、入学の案内を読み込んでいる。現在地からは遠く、一時的とはいえ移住が必要になる。
「鳥みたいに飛んでいけたらなあ」
「飛べなくたって、鳥みたいなものさ。季節の移ろいに合わせて遠くまで移動する。渡り鳥そのものだよ」
「キミ、意外とそういう話もできるんだ」
「ほっとけないからな」
ブラボーはにやにや顔でアルファを見つめている。アルファは余計なことを言いかけたと思った。既に手遅れかもしれない。鳥には最初に目にしたものを親だと思ってついていく習性がある。二人が出会った幼少期まで遡ると、お互いに鳥のような関わり方をしていた。
アルファは来年から大工になる。最高の城を作って帰りを待つ。
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