第60話全然違うよ
警察学校の敷地に入る前にお昼を済ませておこうと、近くのファミレスで真影さんとはお別れしたんだけど。
「リカコさんどうしたの?」
運ばれてきたシーフードドリアにもあんまりスプーンが入らないみたい。
「あ。
ちょっと考え事してた」
あたしに声を掛けられたことで、初めてそのことに気が付いたみたいにリカコさんがドリアにスプーンを刺す。
「さっきね、警視庁の前で
お兄さんが組対5課に所属しているんですって」
「うわぁ」
ハンバーグセットをつついていたジュニアが心底イヤそうな声を出す。
「出た。5課。
最近組対5課がらみの事案ばっかりだもんね。
内偵が
コーンの中からフォークで一生懸命にグリーンピースを弾き出しつつ、ジュニアが呟く。
「銀龍会の1件だって、家宅捜索の情報が漏れてたと見て間違いないだろ?
今回はたまたま俺たちのところに
「イチは、そこが気になってるわよね」
リカコさんがにこっと笑って、
「さっき葵ちゃんからもらった資料よ。
葵ちゃんの同期が組対5課に居てくれてね。
お願いしていくつか情報提供してもらったの。
食事が終わったら回すわ」
「何と交換してきたの?」
引き出された情報よりも、そっちの方がよっぽど気になるらしく、ジュニアが身を乗り出す。
「葵ちゃん、タダ働きはしないもんね」
「そうなのよ。
イチが葵ちゃんとのデートを何回もスルーしたものだから、この手じゃ落ちなくなっちゃって」
チラリとリカコさんがイチを見る。
「そもそも俺がした約束じゃないしっ!
許可なく約束取り付けられても行かないよ」
「だから今回は、隠し撮りしたイチの写真のデータと交換してきた」
ゴン。
「大丈夫よ。変な写真は入ってないから」
音を立てて壁に側頭部をぶつけたイチがそのまま動かなくなっちゃった。
「変な写真ってどんな写真だろ」
フォークを手に、つい呟いちゃったあたしにジュニアの目がキラリと光る。
「変な写真かぁ。
葵ちゃんに高く売れるかな」
「やめろ。
ジュニアの盗撮はシャレにならん」
速攻でカイリの注意が飛ぶ。
まぁ、寮にカメラがあるかも。なんて生活はしたくないよね。
「リカコも勝手に売るんじゃないよ」
呆れたようにカイリがリカコさんを振り返る。
「売ってはないわ。
物々交換よ。
イチも知りたがっていた情報だし。
ちょっと強制的に協力してもらったの。
女の子が好きなアイドルの写真を欲しがるのと変わらないわよ」
『全然違うよ』
男子3人の意見は一致したみたい。
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