ジャック・ナイフの殺人

あーる

第1話 プロローグ


登場人物


破魔はま麟太郎りんたろう(19)…竜王りゅうおう大学商学部1年

竹之内たけのうち宝作ほうさく(19)…竜王大学商学部1年

まさき世良せら(19)…竜王大学商学部1年

井上いのうえ素数もとかず(19)…竜王大学商学部1年

新堂しんどうあらた(18)…竜王大学法学部1年

エミリー・パッチ(19)…竜王大学商学部留学生

御霊ごりょう鏡子きょうこ(20)…探偵


"ジャック・ナイフ"(??)…???











―――綾辻行人先生の『十角館の殺人』に捧ぐ―――








第1章 ―プロローグ―



 私は彼女の事が好きだった。



 一目見た時から、その美貌に惚れ込み、寝ても覚めても彼女の事ばかり考えていた。どうやったら彼女の気を惹けるかとか、彼女に何を贈ったら喜ぶだろうとか、そんな事ばかり考えていた。私の日常は自然と、彼女の事を追いかけ続ける毎日になった。


 彼女が私の事など歯牙にもかけていないのは自明の理だった。今までまでは、それでも十分だった。彼女の姿を毎日眺め、見守っているだけで幸せだった。しかし、それだけで満足できなくなるのは時間の問題だった。彼女の事を愛している人間は、自分の周りに大勢いた。そんな烏合の衆の中に自分が埋もれてしまうのが嫌だった。

彼女を独占したい。彼女に自分だけを見つめてほしい。彼女を守りたい。悶々とした日々を過ごし続け、何一つ成し遂げられずにいるだけで、酷く苦しんだ。彼女にとって自分は相応しくないと、何度そう言い聞かせようとした事だろう。


 悩み悩んだ挙句、一つ、目標を持つことにした。彼女と結婚しようだとか、そんな大それたものではない。それは、彼女の表情の変化を見る事だった。

 彼女の唯一ともいえる欠点が、表情の変化に乏しい事だった。笑ったり、泣いたり、怒ったり、そういった表情を見て見たいと思った。

 彼女は周りに弱みを見せようとしない人間だった。強い人間だった。そんな人の弱い一面を見たいと思うのは、不自然な事だろうか。そのためには、どんなものでも犠牲にしても構わないと思った。


 自分で考えても、突飛な考え方だと思う。恋は盲目とはよく言ったものだ。しかし、目標が出来た事で、やりがいのある毎日に変わった。



 とある日、一つのアイデアが浮かんだ。これが、彼女にとって最高のプレゼントになるかもしれない。私はそのプレゼントを渡す日に向け、準備を始める事とした。

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