お掃除ロボット バルーンに乗った猫

まるみ

第1話 まるぴと相棒


俺の名前は「サミュエル・まるどら・ぬこぷー」という。

飼い主は俺の事を「まるぴ」や「サミュエル」と呼ぶが、俺からしたら名前なんてどうでも良い。

ただ、「まるぴ」と呼ばれる時は、大好きなメスの飼い主が呼ぶ時に使うから、猫仲間に名前を聞かれた時、俺は「まるぴ」と名乗っている。

だから、俺の事は「まるぴ」と呼んでくれ。




これは、許されぬ事態だ。

なんと、俺の大事な餌皿に餌が入っていないという事態が起きている。

「なんてこった」

俺は鳴いてみたが、近くに飼い主はいない。

俺の飼い主はメスが一匹とオスが一匹いる。

俺の世話係として、縄張りに置いてやってるんだが、今、その二匹は俺の近くにいない。

鳴いても鳴いても、飼い主は現れない。

仕方なく、俺は歩いてふかふかの寝床がある所へ向かうと、その場所でメスの飼い主が寝ていた。

これは起こしても起きないやつだ、なんとなく俺は察した。

人間の行動を毎日監視している俺だから分かる。

「くそ、どうするか…俺は腹が減ってるというのに」

縄張りの中を俺は歩き回った。

しかし、餌がある所に来ても、なにか壁のような所が邪魔で餌までたどり着かない。

人間はこの壁を簡単にどかすんだが、俺は前足を使っても動かすことが出来ない。

しかたなくその場を離れた。




俺は広い所で辺りを見渡した。

やはりそれは、「じゅうでんき」と飼い主が言っている場所で休んでいる。

「よう、相棒」

俺はそれに話しかけるが、返事はない。

それもそのはず、こいつは俺の相棒であり、俺の乗り物だからだ。

猫でも前足で操作出来るようにされているそれは、お掃除ロボット バルーンという奴だ。

丸いフォルムで、猫が座った状態で乗って操作するやつだ。

光っている所が見えれば操作可能だ。

「よし、今日もこれに乗って縄張りの中を移動するか」

俺は相棒に乗り、前足で操作できる場所を踏んだ。

相棒は音を立てて、動ける状態になった。

俺が乗っている所は回転しないが、下側で何かが回転している。

カクカクと動き始め、相棒は広い場所を移動し始めた。

その時、餌が落ちているのを見つけたが、それは相棒が食べていく。

「おまえも腹が減ってるんだな、俺もだよ、さぁ、相棒!あの餌の前にある壁の所まで行こうぜ」

相棒は俺を乗せ、広い場所を動き回り、別の場所へ移動した。




これに乗っても無理だよな…。

壁の所で相棒は止まらずに動いている。

毎度の事だが、相棒に乗ってここへ来ても、壁は動かないし、相棒が壁をどうにかしてくれることも無い。

この縄張りの中は、そこ意外に俺が知る限りどこにも餌は無い。

しかたなく俺は相棒に乗ったまま、縄張りの外へ行ける場所を目指した。

外は外で俺の縄張りがある。

近所を散策し、人間と暮らす縄張りに帰るのが俺の日課だ。

もちろんその時は、相棒も一緒だ。

俺は外にいる仲間に会う為、人間が「まど」と呼ぶ所から外へ出た。

相棒と一緒に“野良”と呼ばれる猫に会いに行く事にしたからだ。

そいつはこの前、『幻のカリカリと呼ばれる餌がある』と、俺に教えてくれたが、俺は縄張りにある餌が一番美味しいと思っている為、詳しい情報は聞かなかった。

しかし今、その情報が欲しいのだ。

なんせ俺は腹が減っているからな!


              第一話 終わり

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