25話 2つ目の予想外

 作戦会議をした後の今、俺達は地下奴隷商店に来ている。




「ここにエリーゼが居るかも知れないのか」


「あぁ。確認出来たら早く救出しよう」




 そしてエリーゼを探す。


 十分ほど経った。




「「見つけた」」




 エリーゼを見つけたのはリョースケと同時だった。


 チッ!俺の方がエリーゼの事好きなのに。


 今はそんな場合じゃなかった。




「分かったわ。じゃあ私とアデリーが攻撃する。サトシが救出して、リョースケが脱出の補助。これでいいわね?」


「「「あぁ」」」


「作戦開始よ。<炎舞乱々>!」




 イルマが気を引くと、俺達はエリーゼを助け出す。


 エリーゼ救出を阻止する男を蹴り、反動で進む。


 もう一人の男を魔法<火球>で屠る。




「<火球>!」




 エリーゼを回収し、追ってくる二人を<雷弾>で痺れさせる。




「<雷弾>!」




 更に追ってきた複数人を魔法<範囲麻痺>で痺れさせ、来続ける魔人族を<風弾>や、<嵐弾>で吹き飛ばす。


 男達は鬱陶しく通せんぼする。




「サトシさん!助けに来てくれたんですか⁉」


「当たり前だろ。俺の彼女だ」




 走って逃げ、追撃してくる敵を倒しつつ地下から地上に出、いつか変装した路地裏を目指す。




 魔人族に<雷々轟雷>を使ってことごとく倒し続け、まだ追ってくる魔人族に魔法を駆使しながら走って撒く。




 <潜伏>を使って潜伏しながら、たまにくる敵を迎え撃ち、直ぐに隠れる。


 ある時は水を撒いて滑らせ、ある時は踏むと痺れる罠や踏むと足が焦げる罠を仕掛けて追って来られなくする。




 俺に気づいた魔人族は全員殺したり足止めしたりし、武器を奪い取ったり<能力スキル吸収>で能力を奪ったり<魔法技術吸収>や<魔力吸収>、<力気吸収>を使って様々なものを吸収したりする。


 <能力創造スキルクリエイト>で作った能力たちは物凄く便利だ。




「ここまでくれば大丈夫だろう」




 息を整え、リョースケとエリーゼと俺で雑談をする。


 雑談を始めて十分ちょっと。アデリーが追い付く。




「イルマは?」


「はぁ、はぁ、イルマが!はぁ、捕まった!はぁ、はぁ」




 イルマが、捕まった⁉




「早く戻ろう!」




 リョースケの言う通り、一度戻ったほうが良さそうだ。


 俺は走り出し、地下施設を目指す。




 そして地下施設に戻ると、奴隷商人の男が待っていた。


 その腕にはイルマが。




「さぁ。君達の仲間を捕まえたよ?どうする?」


「どうすれば良いっ!」


「100魔王貨幣、払えたら解放する」


「そうっすよね。こんなに美人な人を簡単に捨てないっすよね!」




 100魔王貨幣⁉


 そんなのが払える訳はない。


 予想外だ!




「くっ……。殺せ!」




 そんなことを言っているイルマ、ちょっとニヤニヤしている。


 ノリノリじゃねーか!




「殺してやるよ、お望み通りな!」


「え?」




 これは予想外だったようだ。


 って言うかお前は騎士じゃないだろ……。




「分かった。お前は殺す事は出来ないな。<殺人弾>!」


「ちょっと待て、話し合」




 <殺人弾>とは、無属性の個有魔法で、当たった敵を殺す魔法だ。


 欠点は飛距離が物凄く短い事と、準備に物凄く時間が掛かること


 詠唱は、「殺す!」だ。




「どうだ⁉」


「ぐはっ!」




 魔人族の男は怯む。と言うか死んだ。


 追ってくる他の敵も嬲り、殺す。


 イルマを奪い取って走り出し、逃げ去る。


 追ってくる敵はもういない。




「馬鹿め。ノコノコと奪い取って逃げるなど言語道断。俺は警察を呼んでいる。直ぐ捕まって終わりだ」




 何⁉警察⁉






 一方その頃、東都では……。




「あの、魔王倒しに行きたいんですけど」


「まあまあ。そんなに急がなくてもいいでしょう。たかが魔王ですよ」




 たかが魔王って何だろう。この戦勝ムードは何だろう。


 もう一陣来るかもしれないのに。




『敵襲!敵襲!魔人・亜人族連合軍による敵襲!』




 ほら。敵襲だ。




『魔人・亜人族連合軍は魔獣を行使している模様!』




 魔獣!テイマーってやつか!見てみたかったんだよな!




「<聖光炎拳>!」




 <聖光炎拳>で敵を撃ち抜き、魔獣を殺す。




「テイマーがいるなんて、聞いてないぞ!」




 聞いていたとしたらそれは情報漏洩で、魔人・亜人族連合にとって致命的なミスだ。または人間族のスパイが物凄く優秀なのか。




「何をやっている!魔鳥部隊!上空から援護!」


「エルフ部隊!後方支援が足りない!って、死んでいる⁉」




 ふっ。お前はもう、死んでいる。


 エルフ部隊は<聖なる矢の拳>で倒している。




 そこかしこで武器の壊れる音が聞こえる。


 ジュンジュンが壊して回っているんだな。




「ドワーフ製の武器が!」




 獣耳の人々がのたうち回る。


 あの人達は兎人族、あの集団は孤人族、あっちは虎人族。




「何をやっている。わざわざ私が出なければならないのか」


「なっ……。申し訳ございません」




 そう言ったのは……魔王軍将軍・ジェネルだ。


 魔人族と鬼人族のハーフである彼は、魔法戦闘・武術戦闘共に一級品、魔法攻撃、通常攻撃共に八割方カットするとんでもない戦士。




 彼は魔王より強いかも知れないと評判だ。


 実際は魔王の圧勝だが。




「ジェネル将軍……」


「フハハハハハ!」




 誰が言ったか分からないその言葉は、虚空に虚しく響く。


 代わりにジェネルの笑い声が戦場全域に響き渡る。




「ジェネ。何怒っているんだよ。冷静になれ」


「うるさいな……」




 そして。ジェネル将軍に注意したのは……魔王軍参謀・賢治だ。


 賢治まで来ているならば、こっちに勝ち目はない。




「魔王軍トップの二人が出撃だと……」


「フフフフフフ、ハハハハハハ!」




 俺達は、勝ち目のない戦いに身を投じることになった。

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