バレンタインSP 元の世界と今の世界
戦いから一年たち、平和になった二月十四日の東都で、俺は前の世界の二年前、バレンタインにあった出来事を思い出す。
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今日は二月十三日、バレンタインの前日だ。
俺は、豚……ではなく雇用主の博士運営、インチキ研究所で、剣人と一緒に雑用に励んで疲れはてて研究所にある各自の部屋に戻っていた。
「剣人。この仕事マジ面倒臭くない?」
「ははは。それは当たり前だろ。こんな屑に雇われてんだよ?」
「でも明日さ、社会じゃ一大行事、男のメンツに関わるかの有名なバレンタイン司祭の命日、バレンタインデーだろ?」
「うん、丁寧な説明ありがとう。そうだな。俺もお前もどうせチョコ貰えないから、この研究所で働いていようが、もっとまともなブラックじゃない給料高い会社で働いていようが変わりないけどね。」
「何それw自虐ネタかよw」
「まあな。そうともいう。それじゃあまた明日ー。」
「じゃあなー。」
そんなバカなことを口走りながら、明日もこんな感じか、とため息をついた。
翌日……。
全く、今日はバレンタインだよな。
なんで24時間365日年中無休の勤務なんだよ。
バレンタインの休みを取れとは言わないけど、一年中勤務って。
そう考えていると、廊下で部屋から出てきた賢治に出会った。
「おはよう、サトシ。」
「賢治おはよう。」
賢治は何故か研究を手伝っている。
この差って何?
まあ、どうせ頭の良さだろうが。
稀代の天才だし。
すると剣人にも会った。
「おはよう剣人。」
「おはようサトシ、賢治。」
「おはよう、剣人。」
やはり何もない朝だ。
業務を開始する。
豚……博士の洗濯された(俺達が洗濯した)服を干し、乾いた服を取り入れる。(俺担当)
朝飯を作る。(賢治担当)
郵便受けの中身を見て、ごみを捨てに行く(剣人担当)
これらが朝の業務。
豚……博士が出ていくと、俺達(剣人と俺)は掃除を始める。
汚い所が一箇所も無いように。
次は洗濯。
洗剤は同じ種類をちょうどの分量で。
次々と業務と言う名の雑用をこなしていると、突然チャイムが鳴った。
「博士の研究か?」
「ぶt……博士の研究ならあり得るか。だが今のは玄関チャイムだ。」
出てみると、色気が凄い艶めかしい綺麗なお姉さんが立っていた。
「お届けですぅ~。」
「はい、では受け取ります。」
「お兄さん格好いいぃ。」
「ありがとうございます。
「ちょっと待っててねぇ。」
お姉さんはポケットを探り始めた。
暫くすると、ポケットからキュンではなくてチョコを出した。
「これぇ、あげるぅ。」
「ありがとうございます。」
ドアが開き、賢治が出てきた。
「サトシ遅いな。何やってんの?」
「あ、お兄さんにもぉ、おまけぇ。」
もう一個チョコを出す。
「ではぁ、またねぇ。」
お姉さんは去っていった。
「これ、バレンタインチョコか?」
「どうだろうか。まあ取り敢えず、これ食べようぜ。」
「絶対博士が出てたら貰えてなかった。」
「それなwww」
無駄話を終えて帰ると、豚……博士が鬼の形相で立っていた。
豚だからファンタジー世界によく出てくる定番モンスターである、「オーク」か?
「お前等、儂を放ってどこに行っているのじゃぁぁぁぁぁぁ!」
……。
…………。
……………………。
カマチョだったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
器小さすぎだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
―――「器小さすぎだろ!」は、俺にも言える事だった。
隣の剣人に話をする。
「(カマチョかよ。)」
「(俺もそれ思ったわ。)」
「聞いてるのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
今日は、バレンタインチョコは美味しかった。だが、豚……博士……「オーク」はめっちゃウザかった。
このことを日記にでも綴ろうと思う。
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この時、バレンタイン司祭死ぬなよ!と思っていたくだらない頃に比べて、今の俺はかなりの人(エリーゼ含む)からバレンタインチョコを貰い、潤っている。
勿論、この世界でバレンタインデーの風習を広めたのは俺だが。
イルマから、「なんでそんなに行事を思いつくの?」等と言われて少し落ち込んでいた。
しかし、今日で機嫌が直った。
《現金ですね……。》
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