9話 迷子の迷子のサトシさん、エリーゼさん、リョースケさん、イルマさん。

「あのさ。」


「サトシ、どうしたの?」




「俺たち、どこから来た……?」


「あ……。私は、分かりません……。」


「私も知らないわね……。」


 皆の視線がリョースケに集まる。




「分かんない……。ごめんエリーゼちゃん……。」


「……迷ったな。」


「……迷いましたね。」


「……迷ったわね。」


「……迷ったね。」




 しばらく彷徨っていると、檸檬のような黄色い果物を見つけた。


《レロンという甘い果物です。食べると力がみなぎります。アンデッドは。》


「檸檬やないか。」




「檸檬じゃないよ、メモンだよ。」


 レロンだ。メモンじゃない。


「メモンですね。」


 レロンだ。メモンじゃない。


「メモンね。」


 レロンだ。メモンじゃない。




「毒消しして食べるか?」


「そうね。サトシお願い。」


 早速毒消しをして、「レロン」を食べる。




《アンデッドが食べると力が漲りますが、普通の生物が食べると、力が抜けます。》


 何ぃ!もう食っちまったぞ!(孫○空口調で)




《……。》


 スベった。




「苦い!ぐうぅ!おえぇ!ぐふぅ!」


「死ぬぅ!苦すぎぃ!」


「ぐるじい!苦しい!」


「エリーゼちゃん……大丈夫?グッヘー!」




『グルルルル……。』




「この声、なんだ?」




『グルァ!』




「狼ですね⁉」


「纏え!<火炎槍>!」


「燃えろ!<火弾>!」


「神聖剣術四式<聖刃聖斬>!


「火炎剣術一式<火炎刃>!」


《二十匹中九匹討伐しました。サトシ陛下の状態:弱体化です。》




「力が出ない!」


「なんでだ!」


 リョースケが叫ぶ。




「そうよ!まだまだ体力の限界なはずないわ!」


 辛うじて凌いでいるが、そろそろ限界だ。




「ぐっ⁉」


 腕を噛まれ、防御に一瞬隙ができる。


 脚を引っ掛かれた。胸の傷も広がる。血が噴き出す。




「慈愛の心、偉大な気持ち高まり、彼の者を治癒させよ!<治癒>!」


 詠唱にケチを付ける気はないが長いな。




 その間に手斧を持った謎の人が来ていた。


「はあ!<力押し>!」




 それは技か否か。意見が分かれそうである。とにかくパワーは凄かった。




 閑話休題。




「私は怪しい者じゃない。名前はジーナ=フォン=サード。邪神王教教会の司祭、サード大司祭の孫。君たちは?」


「俺は中村サトシです。さっきはありがとうございます。」


「私はイルマ=フォン=ソウルスです。ギルドマスターの孫。同じくありがとう。」


「私は、エリーゼ=フォン=ソーシャです。ありがとうございます。」


「僕はリョースケ=フォン=カタツムイムイ=ニッタニシ。ありがとうございます。」




《彼女は、<力のジーナ>と呼ばれています。ついでに紹介すると、私はエルです。》


 絶対聞こえていないと思う。




「敬語はいい。ギルドマスター様の孫もいるし。」


 ギルドマスターって、そんなに偉いのか?


《産業・生産都市ギルドランドという国もあり、その国の全権はギルドマスターが持っています。また、世界各地にギルドはあるため、情報伝達速度もかなり早いです。》


 なるほど。そこら辺の小国なんて権力・戦力の両面で潰せるのか。下手したら大国も。戦力は世界一かも。大多数、殆どの冒険者はギルドマスターの下にいるのか。




「大変です!」


「どうしたエリーゼ。」




「狼です。」




「あっ!」


「ヤバいな。」


 狼の増援である。恐らく血の匂いを嗅ぎつけてきたのだろう、目は血走って筋肉からは血管が浮かび上がる。




 すぐに戦う為、戦闘態勢になる。


「纏え!<風嵐槍>!」


「痺れろ!<雷弾>!」


「火炎剣術二式<灼熱海>!」


「神聖剣術一式<神なる剣>!」


「<斧拘束アックスホールド>!」




《百二十三匹の狼を五人で殺す気なんてやはり化け物ですね。》


 いや、ちょっと強いだけだ!力も回復しているし。




「やあ大丈夫かい?俺は<精霊聖剣>という<伝説級>の武器の使い手だ。」


 玉子王子タイプの少年だった。




「大……丈夫……だっ。」


《必要でしょう。》


「厳しそうだ。」




「い……や。大丈……夫。」


《頑固ですね。》


「……負けず嫌いだな。」


「こっちくんな。」




「加勢するよ。」


《加勢させてあげたら恋の攻略法を教えます。》


「ああ頼む!(キラーン)」




《(単純。)》




「風嵐剣術一式<風切剣>!」


 魔法剣術⁉なんであいつが⁉


《彼は風嵐剣術の制作者の一人です。》




 殲滅完了。よくできました。ここまでの時間、二時間半余り。一丁上がりぃ!


《ノリすぎでしょう。》




「よーし、これでいいでしょう。(キラーン)」


「サトシ、どうしたの?」


 怪訝な顔をしてイルマが聞く。


「浮かれているのでは?」




 恒例のステータスチェックが待っているからな!


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