第2話

現在から遡ること一時間前。

テスト期間の一週間前ということもあり、

部活が無い日だった。

言い忘れたが俺の名前は山吹シンジ。

現在高校二年生。そんな

俺は、さて帰ろうとして、女子トイレの前の

廊下を通りかかったんだが、


びちょぬれの貞子が出てきた。

貞子の本名は真島マヒロ。

でもみんな、貞子、とあだ名で呼んでた。


ガララ...



「う、うわあぉ!」


我ながら変な悲鳴を上げてしまったが、

そのくらい、ホラーな現場だった。


だって、地毛で茶髪とは言え、前見えてない系、

髪の毛長めの女が全身びしょ濡れで

女子トイレからお化けの登場シーンみたく

現れたら、誰だって驚いて、腰を抜かすだろ。


「大丈夫?」


床に尻もちをついた俺を。


あだ名は貞子、

のクラスメイト女子が俺に気が付き、

気にかけて、色白で綺麗な右手を差し出してくれた。


手は濡れてなかったが、

セーラー服の制服はびしょ濡れ。


下着が透けて見えてた。


俺の心配なんか、してる場合じゃないだろうに。


俺は手に掴まり、起き上がった。


そして言ったんだ。


「お前、人の心配してる場合じゃねーだろ」


初めて会話する女子。



何しろ貞子は、最近、俺の高校にやってきた

転入生で陰キャで暗い感じのする寡黙女子。



だからこそ、周りの女子や男子は貞子ってあだ名を付けた。



「全身、びしょ濡れじゃねーか!

どーしたんだ、それ?」


モジモジして答えない貞子。


でも。


すぐにその理由が分かった。


ドォン...!


貞子は金髪ギャルトリオの一人に突き飛ばされたんだ。


「邪魔ぁ!貞子!!」



「早く、家に帰れ...!

水浴びしたんだから、着替えなきゃ、でしょ!?」


「う、、、」


貞子は小さく呻いた。


「お、おい!お前ら!!」


俺はいても立ってもいられなくなり、

彼女らを怒鳴った。


きっと、性格の悪い女子に嫌がらせされたんだ。ひどく妬まれて。


貞子は一応。意外にも、


スタイルは超絶、良かった。

ぼんキュッぼん!


それに、勉強もずば抜けてできた。

うちの高校にやって来ていきなしのテストで

学年一位。

廊下に、順位表が貼り出され、それは

みんな知ってる事実。恐らくは

留年スレスレの不良ギャルトリオにしたら

ムカつく存在。



更に加えて、運動神経抜群。

これも超意外だが、柔軟性があり、

マット運動で180度開脚をして見せたって

噂がある。



「なーによ。男子のなかで学年一のインキャくん。

インキャが学年一のインキャ女を庇おうってゆーの!?」


「お、おう...」


「あんたにも、水、ぶっかけてあげよーか??

まだ、ホースは繋いだまんまにしてあんのよ」


「やりたきゃやれよ。

廊下がびしょ濡れになって、お前らの悪行が先生達にバレれば、休学処分になって、

もうダブり決定だと思えよな」



「....っ!!」


「もういいや、貞子はびしょ濡れにして

スカッとしたから!」


「ほら、あんた達、もう帰るわよ!」


「先生にチクッたらただじゃおかねーからな!」



そんな捨て台詞を吐いたリーダー格の女に。



「チクるに決まってんだろ、バーカ」


と小声で言ってやった。



留年、決定すりゃいいんだ。

その位のお灸、据えたっていいだろ!

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