モノノケ

右左上左右右

(SSG)

部屋を訪ねると、教授は棚の『何か』の剥製を悦に入った様子で眺めていた。


「新種ですか? 奇形ですか?」


夜鷹の目、木菟の耳、人の口、口からは鮫の様な歯が覗いている。大きさは梟程。


「ああ、うん。なぁに知り合いに作らせた偽物だよ」


教授は、こちらを振り返りもせずにうっとりと言う。


「僕はね、もうすぐ魂をこれに移すんだ」


教授という人種は変人しかいない。まともに取り合っていたらきりがない。


愛想笑いをしてお茶を濁した数日後、教授が首を吊った。


葬儀も済んで四十九日も経つ頃、教授の部屋を片付けに訪れたが、あの『何か』が無かった。

ご家族が形見にでも持ち帰ったのだろうと勝手に納得した。


その日の帰り、夜道でふと名を呼ばれた気がして振り返った。

それは、確かに教授の声だった。

だが、そこに教授が居るわけもなく。


ただ、梟大の『何か』が此方をジッと見てから、闇夜に飛び去って逝った。

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