約束

右左上左右右

(SSG)

「やくそくだよ」


私の七つの誕生日、淡い薄紫の世界で男の子は花を差し出して言った。


「ぼくのおよめさんになってね。やくそくだよ」


幼い頃よく、みっちゃんと私と男の子の3人で遊んでいた。


けれど、男の子はあの日以来姿を現さず、名前も知らない事に幼いながら愕然としたものだった。


十年もすると記憶も薄れ、十九で結婚し子供も出来た。

早くに夫に先立たれ慌ただしく毎日を過ごし、気付けば孫も産まれていた。


忙しさから解放され、昔の事に思いを馳せる事が増えた。


そんな時『認知症』と診断された。


施設に入り、どれくらい経ったのだろうか?


懐かしい夢を見た。


あの男の子の夢だ。


『僕はね神様なんだ。約束だよ、お嫁になってね』


差し出された花を受け取ると、くすぐったい想いが溢れる。


「それ、どうしたの?」


みっちゃんが言う。


「ふふ。あのね、私ね、土地神様のお嫁になるの」

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