第17話 彼女とお酒
夏が本格的に始まった。日差しが町ゆく人を照りつける。
朝の講義が終わり、大学にはお昼休みの時間がやってきていた。
7月に入り、大学では夏休みを待ち望む人が多いなか、就職活動にむけて行動する人も増えてきた。もちろん、普段通りと何も変わらない様子の人もいる。
「歩乃目~、あつい~。どうにかして~」
講義室の机に伏せ、下敷きでパタパタと顔を仰いでいた真優が歩乃目の方を向いた。
「私だって暑いよー。アイスとか食べたいね」
「あとで買いに行こうぜー」
「あ、でも、この前居酒屋行ってお金使っちゃったし......」
そう。最近、
とても楽しかった、ということは覚えている。
「歩乃目、お前すぐ酔っ払って潰れてたぞ」
「えっ」
そうか、酔い潰れていて記憶が無かったのか。
そんなことを話していると、少し離れた席で講義を受けていた夏生が近づいてきた。
「ほんとにすぐ酔い潰れてたよ。あの後大変だったんだから」
「えっ、えっ」
「ほんとになー。全然起きないから私がおんぶして車まで運んだんだぞ」
「えっごめんね」
まさか自分がそこまで潰れていたなんて知らなかった。2人にはほんとうに申し訳ないことをした。
夏生が歩乃目の顔を見て、言った。
「いつか悪い人にたくさんお酒飲まされて利用されちゃうかもよ」
......たしかに気をつけないと。簡単に記憶が無くなってしまうほどに自分がお酒に弱いのも、さっき初めて知った。
「そうだね。ありがとう。気をつけるよ」
「ほんとに気をつけろよな~」
真優が机に伏しながら言った。それをみた夏生が真優の頭をたたいて起こそうとする。
「起きなよ」
「いって」
「お昼ご飯食べに行くよ」
そうしてやっと机から起き上がった真優と、3人で食堂に向かった。
歩乃目にとっての日常が、今日も変わらず続いていた。何事もなく。
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