第27話蛇:私は長い夢から覚めた
私は長い夢から覚めた。
「あやー!」
宇木は大声で叫んだ。
私は貫かれた体を見た。
あの時と同じだ。体が粉々になっていった。私は確実に殺された。
が。
だが。
だがだ。
私の体は再生していった。
それには宇木も驚いたようで、目と口をバカみたいに開いていた。しかし、私の興味関心はそこにはなかった。私は自分を貫いたものの先を睨んだ。
あの蛇の妖怪がいる。
「久しぶりね」
「ああ、久しぶりだな」
「あなたには聞きたいことがあるの」
「ああ、わしもお主に聞きたいことがある」
「あら、なにかしら?」
「お主、なぜ生きている? あの時に確実に殺したはずだが」
蛇は目を開いていた。その姿は宇木のように馬鹿な姿ではなく、威厳を保っていた。
「あら? 殺されたわよ」
「じゃあ、なぜここにおる!」
蛇は信じられないふうだった。
「そうね。あの後、大量の妖怪が私を食べに来たのよ。私の体が気に入ったのか妖力が強かったからなのかはわからないけどね。妖怪たちは私を食べようとしたわ。だから、私は自分を食べさせたわ。その代わりに、妖怪たちの命をもらったわ。私を食べた妖怪たちは私の血となり肉となったわ。そして、私の中にはその妖怪たちの命があるわ。数は108ってところね。108の妖怪の命と、そして能力を手に入れたのよ。さっき見せた重力の能力はその内の一つよ。見てたでしょ?影から。私には108の命と能力があったの。まあ、さっきので1つ失ったけどね。ふふ」
――蛇はにわかに信じられないといった面持ちだった。
「では、次は私が聞く番ね」
「……」
私は一歩出て、指をさして尋ねた。
「あなたが呪いの原因ね。妖怪の能力が他の妖怪や人間に移される事件が起こっているの。場合のよっては紙で、場合によっては紙もなく突然に。そうやって困らせて、あなたの目的は何なの?」
私は強い口調で強く睨んだ。蛇は薄気味悪い笑いを浮かべてきた。
私は強く動じなかった。蛇は薄気味悪く睨んできた。
私は強く身構えた。蛇は薄気味悪く口を開いた。
「なんのことだ?」
……
辺は静まり返った。
「な、なんのことだ、ではないでしょ? あなたがコイツの呪いとかの原因でしょ?」
私は慌てた口調で宇木を指さした。
「いや、たぶん違うが」
「嘘おっしゃい。あなたが悪巧みしたんでしょ?」
「たしかに色々と悪いことはしたが、それは知らん」
「し、し、知らない?!」
「……なんかスマン」
私は指を激しく震わせながら、声を震わせた。
「なんか、妖怪が申し訳なさそうだぞ」
宇木の心無い発言に、私は紅潮した。
「だって、仕方がないじゃない。どう考えてもこいつが呪いの原因だと思うじゃない? その、出て来方とかからさ!」
「え? お前、呪いのことを聞いてくれていたの?」
慌てふためく私を見て、宇木は冷静に返事した。
「な、なにを聞いていたのよ?」
「いや、まあ、なんとなくお前が呪いのこと聞いているのはわかったんだけど、いかんせんその前のお前の情報が凄すぎて内容が頭に入ってこなかったんだよ。それに、おれ、妖怪の姿は見えるけど言葉はわからないから、何を話しているのかよくわからないし」
私は納得するのか恥ずかしいのかなんなのかよく分からない感情がいっぱいいっぱいだった。
「な、な、なによあんた。一人冷静にすけこましやがって。状況を分かっているの? そんな大人しくできる状況じゃないでしょ?」
「いや、状況はわからないよ。全くわからない。何なんだこの状況? 教えてくれよ。いきなりお前の体が何かに貫かれて死んだと思ったらいきなり体が治って生き返るし、しかもいきなりよくわからん蛇がでてきたと思ったらいきなり知り合いみたいに話し始めるし、そしていきなり意味不明なことを言ったと思ったらいきなり1人でテンパり始めるし。意味わからないよ」
「お、お、おだまり!」
――「黙るのはお主だ」
声が聞こえた。
蛇がいた。
「さっきからよくもわしを無視してくれたな」
「ああ、いたのね」
「そりゃあいるに決まっているだろ! お主を殺しに来たのだからな。それなのにお主は人間と2人で訳のわからんことをピーチクパーチク言いやがって。殺されたいのか?」
蛇は額に青筋を浮き上がらせていた。
「じゃあ、なんで殺さなかったのよ?」
「なんじゃと?」
「いま、私がしゃべっている間に殺すタイミングはいくらでもあったでしょ?どうして殺さずに見ていたの?」
「そ、それは……」
「わたしのことが怖いんでしょ?」
「……」
蛇は黙った。
「殺したはずなのに死んでいない。そんな奇妙なことが起こっているものね。しかも、同じ相手に2回も。怖いわよね。」
「う、うるさい」
蛇は後ずさりした。
「しかも、その相手の説明によると、まだ殺してもまた死なないらしいし、そのうえ変な能力も持っているらしいしね」
「だまれ」
さらに1歩後ろに。
「それに、逃げることも怖いわよね。こんな得体の知れないものがさっきから油断せずにズーッと見ているんだから、逃げれないよね」
「あーー!」
蛇はダッシュで逃げた。
私はダッシュで追いかけた。
すぐに追いついて、後頭部にケリをかました。蛇は私の足とコンクリートの壁との間に挟まった。
私が足をどけると、下に崩れ落ちた。
「さて、死ぬ覚悟は出来たのかしら」
それを聞き、蛇はムクリを起き上がる。
「死ぬのはお前だ」
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