第22話蛇:あやの過去

③ 蛇



時は更に遡る。





「あや」


 私は目が覚めた。


「あや。朝だよ」

「おはよう。ママ」


 私は目をこすった。


「あら、だめよ、目をこすったら」


 ママはやさしく注意した。


「だって、かゆいんだものー」

「小学生になったんだから、いつまでも幼稚園児みたいな事を言ってはいけません」

「そんなー」


 私はダダをこねた。


「別にいいじゃないか」

「パパー」


 私はパパに抱きついた。


「ちょっとパパ。あやを甘やかさないで」

「別にいいじゃないか。目をこするくらい」


 そう言って、パパは眠たそうに目をこすった。


「こら、パパまでこすらない」

「別にこすってもいいもんねー、あやー」

「べつにいいもんねー、パパー」


 私とパパは顔を見合わせて笑顔で言った。ママはそんな私たちを怒った。でも、みんなで笑う楽しい時間だった。


「じゃあ、今日は仕事も休みだし、どっかに遊びにいくか」

「私、ハンバーガー食べに行きたい!」

「そうね。じゃあ、パパとママと3人で、ショッピングに行きましょう」


 外は晴れて、外出にはちょうど良かった。

 ――翌日、私は学校に行った。


「昨日はハンバーガー食べたんだ」

「えー、いいなー」

「しかも、ポテトとコーラも一緒」

「えー、ぜいたくー」

「いいでしょ。えへへ」


 私は昨日のことを友達に話した。他にも色々と話した。昨日見たユーチューブのこと、昨日宿題を夜遅く終わらせたこと、昨日お父さんがズボンのチャックを開けっ放しだったこと、いろいろなことを話した。


「えっへへー。そうだ、あやとこれをしようと思っていたんだー」


 友達はカバンの中からゴムを取り出した。


「なあに? これ」

「あやとり、っていうんだって」

「あやとり?」

「そうなの。見てて」


 私は友達が何かをしているのをジーッと眺めていた。


「見てみて。東京スカイツリー」


 私はよくわかわなかったが、何かすごいと思った。


「わー、すごいー。どうやったの?」

「じゃあ、もう一回最初っからするね」

「うん。やってやって」


 私はピョンピョン跳ねながら、お願いした。

 わくわく。


「東京スカイツリー」

「すごーい。私もやるやるー」

「できるのー?」

「やってみるー」


 私はあやとりのゴムを受け取った。見たとおりやった。わくわく。

 ……


「じゃー……ん」


 グチャグチャだった。


「あはは。しかたないよー。はじめてだもん」

「そうなの? 私にもできるかな?」

「そのうちできるよー」


 私たちは仲良く笑いあった。

 教室に日光が入ってきていた。

 ――翌日、学校終わりに公園で遊んでいた。


「おぬし、って変ないいかた―」

「そんなに変かのー」


 私は妖怪さんたちと遊んでいた。


「でも、ようかいさんたちでもできないことがあるんだ」

「そりゃあそうじゃろ。できないことだらけじゃ」

「ふーん。そうなんだ」

「それにしても難しいな、あやとり、というものは」


 私たちはあやとりをしていた。


「そうなの。明日こそはできるようになりたいの」

「といっても、ここにおるものは全滅じゃぞ」


 手がもつれているもの、ゴムを噛んでいるもの、サッカーをしているものと様々だ。


「みんなできないのね」

「そうじゃな。というか、東京スカイツリーってなんじゃ?東京タワーの親戚か?」

「東京タワーって、何? ようかいさんのしんせき?」

「そういうわけではないぞ。そういう建物が最近出来たらしいぞ」

「え? すっごーい。見てみたい。東京スカイツリーよりすごいのかな?」

「そりゃそうじゃろ。なんてったって、最新のものらしいからな」


 私たちはわいわい楽しんだ。


「フンフーン」

「ところでお主、こんなところにいて大丈夫か?」

「だいじょうぶって、何が?」

「いやな、普通はこんなところで人間が妖怪といっしょにいると、あまりよくないらしいぞ」

「なんで?」

「それはまあ、そういうものらしいぞ。お主ら人間にとっては」

「ふーん。そうなんだ」

「だからな。ここに来るのは……」

「あ! もう5時だ。帰らないと」


 私は急いであやとりのゴムを回収した。


「おい、お主、話は最後まで……」

「バイバーイ。また明日」


 晴れ空は暗くなっていった。

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