桜の花

右左上左右右

第一話

母は、弟の戦死の報を受けても陰膳を供え続けた


「身体が戻ったわけでもないからね」


微笑む母は、それでも弟の名の彫られた墓を毎日掃除する


「そりゃあ、誰しもいつかはお世話になる場所だもの」


墓の中には遺骨代わりの珊瑚


墓の横には桜を植えよう


母にも弟が見えると良いのだが…

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