第8話 カムイコタン

ここはアイヌのコタン(村)、トカチコタン


広場の祭壇には二本のイナウが祭られ

アイヌの若い男性はカムイに捧げる

舞を踊っていました


イナウとは木を削って作られた

神様に供える御幣です


善い神にはよいイナウが捧げられ

悪い神にはわるいイナウが捧げられる

ものでした


アイヌのひとびとは、

自然の神々にイナウと良質のお酒と

団子や干し魚などたくさんの供物を

そなえて感謝のお祈りをすることを

欠かさない民人でした


そうした供物や真心は

神々に通じ、神威が増し

昼夜、アイヌの人々をあつく守護

するのが常でありました


若い男性がつづけて舞を踊っていると

供えられていたイナウのうち

1本は若い男性に、もう1本は若い女性

に姿が変わり、一緒に舞をはじめました


見物に来ているコタンの人々は

びっくりしています


ひととおり舞を納めると

男性となったイナウは元に戻りましたが

女性となったイナウは女性のままでした


皆はびっくりして女性に駆けよりました

その女性は神様のように美しく

あどけない姿をしておりました


みたこともない純白の服装をみて


「この娘はカムイの使いである

もとのイナウに戻るまで

わしの家で面倒をみることにする

皆も時おり訪ねて面倒をまるように」


と村おさは村人達に大声で告げました


娘は村おさの家に連れていかれました


(あれっ、ここどこ?)


「カムイの使いよ

私の言葉がわかるのなら

どうか返事をしてもらえませんか?」


村おさはずっと私に声をかけていた

みたいです

ようやく眼がさめたと思ったら踊っていて

朦朧としたまま村おさの家に

連れていかれたのですが


やっと意識がはっきりしてきました


『はい、なんでしょうか?』


「おおっ、やっと返事してくれましたか、

わたしは村おさのバレシクルと申します

あなたはどのカムイの使いなのでしょうか?」


(えっ、カムイの使い?

う~ん、まあてきとうに)


『わたくしはヒナタのカムイの使いでございます』


「ヒナタですか?

聞いたこともないカムイですね?」


『ああ、えっと、ヒナタ、そう太陽の

光のカムイなのであります』


「太陽、おお、雌岳に登って世界を照らした、光り輝く日の神。クンネチュプ神の使いでありましたか!

はっは~」


『えっ?』


「時節も時節、このような時にわざわざ

神の世界から地に下りてアイヌの民を救って下さるとは

なんということでしょう!


伝説でしか聞いたこともない稀有な

出来事でございます!」


『▪▪▪』


「どうぞ、どうぞ

わたくしどもが丹精こめて作った

料理を召し上がっていただきたいと

思います


ささ、どうぞどうぞ」


急にお腹がなって、唾液が口の中に

ひろがってきました


『それじゃ、遠慮なくいただきます


どれにしようかな


山菜の煮物から』


(う~ん、おいしい、縄文の味!)


『ヒンナ ヒンナ!』


「おお、感謝のことば、ありがとうございます」


『感謝のことば? わたしおいしいって

いったつもりなんですが』


「はあ?、おいしいはケラアンでございます」


(?)


『ああ!、そうでしたケラアン ケラアン

(^_^;)』


(ああ、わたし大丈夫かしら▪▪▪)

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