第173話 突撃王都のカティア家 2

 夕飯を食べ終わり、カティア将軍とステラさんと一緒にお風呂に入る。ものすごーく広いお風呂で、浴槽なんて私が二十人いても余裕だろう。

 そんな浴槽になぜか三人でくっついて入っている。二人とも可愛い可愛いと私のことを言ってくるけど、二人は格好良くて美人だ。タイプは違うけれど。


 同じカティアの血が少しとはいえ流れているのだから、私も将来こんな風に素敵な女性になれるだろうか?リーナからは背はあまり伸びないと言われたけど、私はまだ諦めたわけじゃない!きっと二人みたいに背が高くなる方法があるはず!!


「リオンお姉様、ステラお姉様どうしたらお二人みたいに背が伸びますか?」

「ルーちゃんは今のままで十分可愛いわよ?」

「そうよ〜可愛い可愛い」

「私はお姉様たちみたいにスラッと背が高くなりたいのです!」


 そうハッキリ言うと、将軍はうーんと腕を組んで悩み出した。そして私の顔をじっと見る。しかし真剣な顔もすぐにへにゃりとしまりのない顔になった。


「いやーんやっぱりルーちゃん可愛いわ〜」

「もう!そうじゃないでしょ!!あのね、ルーちゃん背がそこまで高くなくても高く見せる方法はあるのよ?」

「え!?そんな方法あるんですか??」

「バランスの良い体型というのがあるの。これは骨格が重要なのだけど、ルーちゃんは骨格のバランスが良さそうだから実践すれば大丈夫じゃない?」


 ステラさんはそういうと、バランスの良い体型の条件を教えてくれた。簡単に言うと手足がスラッと長く、ウエストが絞られ、顔がシュッとしていると良いそうだ。しかしその条件を聞いて無理では?と目が点になってしまう。


「それは、お姉様たちのような体型を言うのでは……?」

「あら〜嬉しいことを言ってくれるわね。そうねえ、リオンは体を鍛えているから、こーんな風に腹筋も割れているけれど、私は違うでしょう?」


 確かに見た目の差異はある。あるが、二人とも同じようにバランスの良い体型に見えるのだ。でもこれは生まれつきの体型になるのではなかろうか?


「お二人とも、元々スラッとされているのではないのですか?」

「うふふふ。そう見える?でもね、バランスの良い筋肉の付け方というのがあるのよ」

「筋肉……?」

「そう。リオンは将軍職という仕事柄常に体を鍛えているわ。だから背が高くてスラッと見えるの。でも私はリオンよりも背が低い。同じように鍛えると、バランスの悪い体型になるのよ」

「つまりただ闇雲に体を鍛えても同じにはならない?」

「そうよ。バランスの良い体型になる鍛え方があるの」


 体を鍛えると言うのは奥が深い。そして体を鍛えた後は、着る服もスラッと見えるものに変えるとより、映えるのだそうだ。

 スラッとした体型を手に入れるには一日にしてならず。とありがたい言葉をもらい、そのあとはステラさんの手によって全身マッサージをされてしまうのであった。




 ***


 お風呂から出たら、オルフェさんが心配そうな顔で私達を待っていた。ながーく入っていたので何かあったのかと思ったらしい。


「嫌だわ。兄さんたら……女性のお風呂は長いのよ」

「そうなんだけどね。でもお前達だけで独占するのはずるいよ。僕だって話したいことはあるんだからね?」

「こんなに可愛い妹ができたら、かまい倒したくなるじゃない?」

「そうそう。ただでさえ最近は新人女官の仕事で会えないんだもん!」


 妹ではないけれど、でも歳の離れた兄妹がいたらこんな感じなのかな?と嬉しくなる。それと同時にちょっとだけ寂しくなった。ロイ兄様やライル、双子達は元気かな?って。


 しかし三人の戯れあいのような言い合いは延々と続いていく。私はどうすればいいのだろうか?と眺めていると、後ろからパンパンと手を叩く音がした。

 振り返れば、メルゼさんがいい笑顔で立っている。


「坊っちゃま?お嬢様?廊下で立ち話するのではなく、お部屋でしましょうね?」

「「「はい」」」

「よろしい。さ、ルーお嬢様。お部屋に行きましょう?メルゼがお茶をいれてさしあげますからね」

「ありがとう」


 メルゼさんに背中を押され、客室に案内された。将軍もステラさん、オルフェさんも一緒についてくる。みんなにとってメルゼさんは大事な存在なのだろう。なんだかんだとごねる将軍までもが大人しく言うことを聞くのだから。


 部屋に着くとさっそくメルゼさんが人数分のお茶を入れてくれる。そしてくれぐれも遅くならないように、と将軍達に釘を刺して部屋を出て行ってしまった。

 最初のうちはステラさんによる、スラッとした体型の作り方講座。そして将軍による効率のいい体の鍛え方を教えてもらう。

 そんな私達の様子をオルフェさんはニコニコしながら聞いていた。


「……体を作るって大変なんですね」

「そうね。あと自分に合う色や、服も大事よ?ファティシアだとウエストを絞って裾を広げた服が多いのでしょう?」

「あれはコルセットというウエストを絞る下着を中に着るんですが、とても大変です」


 綺麗なシルエットになるように、と着るのだがとにかく身につけるのが大変なのだ。だからラステアの服はとても楽でいい。帯の位置も胸の下だからウエストがギュウギュウに締め付けられることもないしね。


「女性の美の追求は止まることを知らないからね」

「あら、殿方だって同じじゃない?体は鍛えていた方がいいもの」

「そうね。自分より弱い旦那様だなんて、もしもの時背中を預けられないじゃない」

「そう言う問題かなあ……僕は人形を相手にしているから、体を鍛える必要はあると思っているけど」

「人形を作るのにも体を鍛えないといけないんですか?」

「うん。結構体力がいるからね」

「あ!そうだ!!兄上、ルーちゃんの人形をもう一つ欲しいです!!」


 将軍がそういうと、オルフェさんは良いよと簡単に返事をしてしまう。いやいや、その人形は私が欲しいな、と言った人形になるのでは!?ネイトさん曰く「お高い」人形を買うだけの個人資産は持っていない。私は慌てて止めに入った。


「お姉様!私はお人形を買えません!!」

「妹から代金は貰わないよ?」

「私は、妹じゃないですよ……?」

「大丈夫大丈夫」


 ふにゃっと笑うと、オルフェさんは大丈夫を繰り返す。それは本当に大丈夫なのだろうか?私は将軍とステラさんに視線を向けるが、二人ともニコニコしているだけだ。私、もしかして本当にカティア家の子供にされてしまう??


「で、でもですね……」

「あ、じゃあ私の人形にルーちゃんの声を入れるの手伝ってくれる?」

「それは手伝うになるのでしょうか?」

「なるなる」


 私以外の全員が頷くのでそれ以上言えなくなってしまった。だって人形……それに作っているところも気になる。声を入れる術式だって……!!!

 結局好奇心に負けて人形をもらうことと、声を入れることを承知してしまった。


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