【第003話】魔王ハンター3
どうやら昨日は報告書を書いて眠ってしまったらしい。全然記憶はないのだが。きっといつも通り、スムーズにこなしたに違いない。しかし、なぜか知らんが、報告書はもっとシンプルに書くようにお願いが届いた。もっとシンプルに!? どう削れというのだ……。
そんなことよりも今日は、大切な日である。
そう。
みんなも知っているであろう、魔王ハンター3の発売日だ!!
魔王ハンターは、主人公が様々な武器を使い魔王を討伐するゲームである。最大100人のプレイヤーが協力プレイを行えるため「友達100人出来るかな?」がネット上と言えども比較的たやすく達成できる。
―――コンコン。
「入れ」
「失礼します」
部屋に入って早々、ミサがまじまじとグレイを見つめる。その顔は真剣そのものだ。さすがに見目麗しい女性にまじまじと見つめられては照れてしまうグレイ。
こ、こいつもしや、俺に惚れているのか?
「ポテチ……」
「え?」
「今日は肩にポテチが乗っていませんね」
「……。」
「ジョークです、さあ参りますよ。」
「今日…… 何かあったか?」
「はぁ、前々からお伝えしていたじゃありませんか、今日は勇者召喚の日ですよ」
そういえば、そんなイベントがあったような気がしなくもない。
「……ああ。はいはい、勇者ね。俺はいつでも行ける。」
「では参りましょう」
静かな森の中。
10頭ほどの魔王の群れがいた。その中の一頭が、鼻を轢くつかせた後、走り出す。
どうやら獲物を見つけたようだ。
森の中にある泉。泉の周りには森の動物たちの足跡がたくさん残っており、ここが動物たちにとって、重要な場所だということが窺える。
その泉の前に一人の男が佇んでいる。皮の鎧を着ており、所々擦り切れている様子だ。背中には大剣を背負っている。
男は泉の水を手ですくい、匂いを確かめる。異常が無いことを確認したのか水に口を付けた。男は十分に満足したようで、泉に背を向け、森の中へと歩き出す。
――――グルルルル。
魔王たちは、輪になって獲物を囲んだ。
そして徐々に円の間隔を狭めていく。じわりじわりと詰めていき、獲物との距離が2メートルほどになった時、一斉に襲い掛かった。
襲われているのにもかかわらず、獲物に慌てた様子はない。生きることを諦めたのだろうか?
―――――――ブォン。
一瞬の出来事だった。魔王たちの体は半分に分断されていた。
難を逃れた魔王たちも動揺を隠せていない。獲物に近寄った瞬間に妙な音が聞こえた。そう思った次の瞬間には、体がバラバラにされているのだから。逃げなければならない、野生の本能がそう告げている。
――――――ブォン。
男が背中に剣を戻すと同時に、魔王は全滅した。
――ダイジン。
男は魔王の死体を一瞥し……
――――ダイジン?
なんだこの声は…… うるさい!!
―――――ダイジン!!
「大臣、寝てましたね? もう勇者召喚は終了したので執務室に戻ってください」
おっと、いつの間にか勇者召喚イベントは終了したようだ。おれは寝てないぞ。目を閉じていただけだ!!
執務室に戻ったグレイ。
自分の分身を作成した後、ひっそりと城を抜け出し魔王ハンター3を買いに行く。しかし、あまりの人気のため既に売り切れており。違う店に向かうも。
完売。
完売。
完売。
膝から崩れ落ち、次からは先行予約をしようと決意する。
そして、執務室には魔王ハンター2を泣きながらプレイするグレイの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます