第5話 夢魔誕生

 私は脳が異常に発達する病気にかかった。


私の身体の中にあるありとあらゆる神経はその病気に耐えることができなかった。


私の身体に張り巡らされている神経は混乱していた。


私の神経は使い物にならなかった。


神経を制御することができず、ありとあらゆる苦痛が私を襲った。


それは自分の体を自分で思うように動かすことができないというものだった。


それだけではない。


私は直立二足歩行や排便といったものができなかった。


私は昼夜を問わず、常に垂れ流しだった。


私は歩く、食べる、トイレに行くといったことができなかった。


私は起きること以外は何もできなかった。


悔しかった。


姉はそんな私を喜んで支えてくれた。


姉は昼夜を問わず、世話をしてくれた。


私は姉が好きだ。


私は姉に惚れてしまった。


姉はどんな世話もやってくれた。


姉は汚れてしまった私の下半身さえも笑顔で拭いてくれた。


ちょっとだけニヤニヤしながら拭いていた。


あの時の感触は今でも忘れられない。


姉は私に優しくしてくれた。


姉はどんな世話も楽しくやった。


姉はおママごとをするかのように接した。


姉にとってはどれも楽しい遊びみたいなものだった。


姉にとって全てがお遊戯のようなものだった。


おむつ替え、ご飯を食べさせる、お風呂に入らせる、姉はどれも楽しくやった。


姉は笑顔でハツラツとこなした。


特におむつ替えの時はとてつもなく嬉しそうだった。


とてつもなく手際が良かった。


姉は私よりも気持ちが良かった。


私はある時を境にものすごいスピードで回復していった。


そして、私はものすごく膨大な知能を少しずつ支配できるようになった。


驚異的な知能だ。


家族は歓喜に包まれた。


特に姉は大喜びだった。


私は少しずつ少しずつ様々な動作ができるようになった。


それでも、まだ不十分だった。


そこで私は介護用ロボットを作った。


ロボットに世話をしてもらおう、私はそう考えた。


しかし、姉に破壊されてしまった。


姉は両親にこっぴどく叱られた。


姉は私のことを人形のように扱っていた。


私にとって姉はとても使い勝手の良い道具だ。



 姉は私を乳母車に乗せて、幼稚園まで送ってくれた。


乗り心地はとても優しく、ゆったりとしていた。


姉は優しく語りかけながら、笑顔で幼稚園まで送ってくれた。


幼稚園。


そこで私は徹底的に拒絶された。


これが私の幼少期だ。



 私はある程度、大きくなった。


小学2年生の頃。


姉が風呂に入っていた。


姉は気持ち良さそうだった。


姉は気持ち良さそうにお湯を浴びていた。


私はとてつもなく興奮していた。


私は次々と湧き出て来る興奮を抑えることができなかった。


私は姉に襲いかかった。


姉は激しく抵抗した。


姉は私を怒鳴ったが、許してくれた。


それでも、私は抑えることができなかった。


姉がトイレに入っていた。


壁を越えて、音が響いて来る。


姉の体を液体が優しく伝う。


抑えられない。


抑えられるわけがない。


私はこっそり姉の下着を盗り、風呂場でその下着を履いた。


そして、私は姉と一体になった。


姉の体が私と一体になる。


最高だ。


私は小学四年になった。


私はパンツだけでは飽き足らず、使用済みの生理用品をこっそり取り出し、お風呂場の中でそれを履いた。


私は姉の水着姿を写真で見た。


私は姉が履いた水着をお風呂の中に持っていった。


姉の水着と地肌を密着させた。


たまらない。


私はいろいろな妄想をした。


姉の笑う姿、はしゃぐ姿、様々なものが思い浮かんできた。


衣類に付着した汗はたまらなかった。


よりいっそう姉を感じられた。


私は興奮した。


とてつもなく興奮した。


私は興奮を抑えられなかった。


私こそが興奮そのものだった。


姉は気づいていたようだ。


しかし、姉は私を優しく見守ってくれた。



 私は中学生になった。


姉は日頃の行いで問題ばかり起こすようになった。


そして、姉は成績もあまり良くなかった。


姉は両親から冷たく扱われていた。


両親は常に刺すような目で姉を見ていた。


姉は私のことを疎ましく思うようになった。


そして、姉は私を見世物として扱うようになった。


異星人と人類の関係、異星人と人類の秘密を解き明かす鍵を持っていると姉は信じ込み、私を好奇の目で見るようになった。


私は姉を自作のコンピューターと同化させた。


姉はコンピューターの一部となった。


両親もコンピューターの一部となった。


私は道具を失った。


最高の道具だった。


とてつもない絶望が私を襲った。


私の中で何かが壊れた。


そして、何かが生まれた。


私の遺伝子はこれまでに経験したことのないようなとてつもないスピードで変異していった。


自分でも分からなかった。


自分が何なのかも分からなくなっていった。


毎秒、毎秒、私の遺伝子は変異していった。


私は遺伝子の変異を抑えられなかった。


私の遺伝子は暴走した。


私は決めた。


この宇宙そのものを破壊し、新たに宇宙を創造すると。


私は決めた。


この宇宙自体がとてつもなく煩わしい。


よって、この宇宙そのものを破壊し、完全なる宇宙を創造すると。


私の意に基づく宇宙を創造する。


一人の人間が消え、夢魔(ムーマ)が誕生した。

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