MUMA

@tsumemoto

第1話 Light and shadow

 人類は未来へと繋がるゲートを開けた。


世界中ではこんな言葉が流行った。


The gate is opened!



 どれだけ離れていても声だけではなく、画面上でお互いに相手の顔も見て、コミュニケーションを取れるようになり、お互いがどれだけ離れているかというのに関係なく、人と人との交流を深めていく事が容易になった。


1人1人が個人でアニメーションを制作できるようになり、漫画の絵がそのまま動くといったアニメーションが流行するようになった。


侵入してきたウィルスの遺伝情報を元にして体内で対ウィルス用のウィルスを作れるようになり、人類はウィルスを完全に克服した。


世界各国の都市や空港は幾何学的なデザインによるものが多くなり、SFチックな町並みに人々は魅了されていった。


昆虫食が全世界に普及し、昆虫の体内にある栄養素をゼリー状にして摂取する事で飢餓問題が解決した。


陽子、中性子、電子の距離を上手い具合に操作する技術を確立した事で原子核に働く力や原子核と電子の間に発生する力を操作する事で原子内に働く力や分子間に働く力を利用できるようになり、まだ実用段階には達していないものの原子核内に発生する力や原子核と電子の間に働く力を利用して膨大な電力を生み出す核発電の研究が進んでいった。


電磁力を活用し、時空間そのものを歪めるというやり方で人工重力を生み出す研究が進む。


充填率を調整する事で物質の強度を上げる研究が進む。


分子に作用する力を利用する事で分子の運動を自由自在にコントロールし、ありとあらゆる固体を液体、気体に変える事やどんな時でも湿度を調整する事ができ、温度の状態に関係なく、状態変化を自由自在にコントロールできるようになった、さらに、分子に作用する力を利用する技術は日常生活にもどんな頑固な汚れもすぐに落とせるようになり、紙についたシミも容易に落とせるようになるといった形で応用できるようになった。


クローン技術が発達していった。


超小型ロボットで体内のありとあらゆる部分を調べる事ができ、介護用ロボットが介護を行う事で介護問題が解決し、体の不自由な部分を機械で補う事で難病にかかっている人も健康な人と同じように生きる事ができるようになり、さらに、遺伝子を活用する事で病気にかからない体を作るといった研究も進んでいった事で世界全体の平均寿命が飛躍的に上昇した。


生命の概念が変わり、生命は細胞によるものではなく、生命は魂、心を持って生きているものといった認識が人々の間に広まり、脳内にある記憶や意思をコンピューターに転送する事でデータ状の生命となって電脳生命体として生き続ける人や機械と融合して生きる人、プラズマ状の生命体として生きる人、流体状の生命体として生きる人もでてきた。


科学技術を用い、分子や空間を操る事で念力を実証し、分子や空間に作用する力を慎重に増幅させ、ありとあらゆる物体を手で触れずに自由自在に動かせるようになったり、空間そのものを動かせるようになった。


宇宙都市ができ、さらに、宇宙空間に駅ができた事で各駅を経由し、星間列車で地球と月、月と火星の間を行き来できるようになった。


リニア技術の発展で北海道と沖縄を短時間で自由自在に往復できるようになり、それだけではなく、世界各国や宇宙空間も短時間で自由自在に行き来できるようになった。


地球と宇宙空間を航行する旅や宇宙空間を思う存分に楽しめるアトラクション、宇宙空間を爽快感溢れる感じで思いっきり宇宙船で走り回れるといったサービスを一般人も利用できるようになった。


ユートピアのような仮想世界を体感できるようになった、仮想世界を手で触れる事ができるようになり、仮想世界そのものを五感で感じる事ができるようになっていき、コンピューターを通して脳内で創造したものを絵や映像にしたり、仮想空間に脳内で創造したものを散りばめて描くといったものが流行り、それは仮想芸術と呼ばれ、人々の間で話題になる。



 人類は至福の時を謳歌していた。


至福の時を謳歌しているかのように思えた。


しかし、それは違った。


人々に危機が迫っていた。



人々の知らない所でそれはうごめいていた。



人々は知らなかった。



いや、人々は知ろうとしなかったのかもしれない。



それは人々の中で起こっていた。

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