第七話 母の日と薔薇

 朝はスッキリ目が覚めた。おかげさまで変な夢を見ずに済んだ。着替えて、火を起こすための薪を取りに行く。玄関のドアを開けると冷たくて心地の良い風が吹き抜けた。背伸びをする。やっぱりここはいい場所だ。少々不便なのは玉に瑕かもしれないけど。薪をとって火を起こし朝食の準備を済ませ、母を起こしに行く。ドアを開けて母を呼びに行くと母はすでに目を覚ましていた。

「お母様、もうすぐ朝食が出来上がりますよ」

「ありがとう、ベレッタ」

 そうして母はばっと起き上がり私を抱きしめてくれた。突然抱きつかれて少し困惑したが、私も抱きしめ返した。どんなものよりも温かい抱擁。今までぎゅっとしたことなんて記憶を掘り返してもなかったが、今、母はなんの躊躇いもなく抱きついてくれた。やはり昨日の影響だろうか。でもとても幸せなのでどうでもよかった。でも少し恥ずかしくなって、一応声をかけてみる。

「は、早くしないと冷めてしまいますよ」

「そ、そうね、早く頂きましょうか」

 そうしていつものように朝を過ごした。さて、今日は5月の最初の日曜日。巷では「母の日」っていう日があるらしい。母を労い感謝をする日だとか。例にもれず私は何かをプレゼントしようと画策する。さて、どんなものがいいだろうか。家にいても何も思いつかなかったので、母に許可をもらって街へ出かけた。可愛い器、美味しそうなお菓子、どれも魅力的だ。しかし私は、それを見て即決した。

 花。

 商店街にある花屋のとある花に目を奪われた。店に置いてある青い薔薇。母の髪のような美しい青。そして、『薔薇』という花こそが私の求めていた花だ。すぐに店主のおばあちゃんにあの青い薔薇を頼んだ。

「赤や白とかじゃなくていいのかい?」

 と聞かれたが、私はキッパリ

「青で。青じゃなきゃだめなんです」

 といい、一輪の青い薔薇を渡してくれた。代金を支払い店を後にする。そして、少しばかり髪の毛に手を加えて家に帰った。

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