*** 私たちは…
「もちろん美味しいです!」
そう言われて私はもちろん嬉しかった。久しぶりに焼いた甲斐があったと思った。しかし、私はベレッタを心底から心配している。事の発端は昨日の夜中。私は見てしまった。私は二階から何やら声が聞こえてきた。細々しくか弱い声。私はそっとベレッタの部屋のドアを開け、中の様子を伺った。
そして驚愕した。ベレッタはうなされていた。まるで痛みに耐えているかのように。大粒の涙を流しながら。最初は病魔に侵されていると思った。でもどうやら違うようだ。彼女は見ている。悪夢を。それもとびきり酷いものを。私は彼女が何を見ているのかがとても気になった。しかし、他人の夢に入ることはできない。少し考えた末、前に作り出した『感情』を読み取れる煙を思い出した。早歩きでそれを取りに行き、そっと左手を瓶の中に入れた。私は再び驚くことになった。血の気が引くような感覚。ベレッタの感情が目まぐるしく変わっている。
薄い黄色、紺碧、真紅、黒…そして色は消えた。
一体彼女は何を見てるのか。しかし見ているものは確実に悪夢だ。この短時間でベレッタは不安に駆られ、強い憤りを感じ、そして負の感情が混ざり合い、最終的に感情を失った。
「ごめんね…ベレッタ…」
私は謝ることしかできない。彼女を抱きしめてあげたかった。その悪夢から救ってあげたかった。しかし、私にはできない。こうやって手を繋ぐぐらいしか。ベレッタの左手はかなり冷たかった。少しでも温もりをあげたい。少しでも楽になって欲しい。
ただこれ以上はできない。
なぜなら…私たちは………………
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