第6話 筋肉は全てを解決する
地中に埋まったままのマンドラゴラ、それに向かい合うレイ、その手には剣。
「はぁぁぁぁぁっ!!!!」
振り下ろされた剣は途中で軌道が曲がり、マンドラゴラ、のすぐ横の地面へ突き刺さった。
「止まってる相手だぞ……。」
俺達は今後の方針を決める為、まずはレイの実力を測ることにした。それが現在。地面に突き刺さった剣を抜くことも無くレイは振り返る。
「これが呪いの力だ……!」
「いや、何でちょっと誇らしげなんだよ。ここは恥ずかしがる場面だろ。」
「だって……勇者様から受け継がれた呪いってカッコイイだろう!!」
「この勇者オタクめ……。まずはその呪いを上手く活用する所からやるぞ。」
出来ればこいつの勇者至上主義も何とかしないとな。お嬢様なのに家飛び出して冒険とか、危なっかし過ぎる所があるし、よく見とかないと不味い。
「呪いを活用……?」
「呪いの抜け道を探すんだよ。まず、レベルの上げ方を教えてくれ。」
「レベルは主に2つの上げ方がある。一つはモンスターの討伐、もう一つがモンスターを食したり、ポーションを飲んだりするやり方。まぁ、後者は高級食材でもないと上がらないんだ、ポーションならマンドラゴラのエキスが入った…………あ。」
話の途中でレイは黙り込む。レベルの上げ方がモンスターの討伐以外にもあって何よりだ。
「何か思い付いたのか?」
「こ、これを見てくれ!!」
慌てた様子のレイが懐から取り出したのは冒険者カード。そこに表示されたレベルは5。
最初に見た時は確か1だったはず。
「上がってる……?」
「あぁ!上がってる……!」
レイは冒険者カードを何度も見返し、嬉しそうにしている。何か可哀想に思えてきたな。
「なぁ、今度はレベルを下げてみせてくれ。」
「せっかくレベルが上がった所なんだ、もう少し……」
「いいから、ほら、やってくれ。」
レイは渋々、といった形でマンドラゴラへ近づいていく。
「はぁ。レベルを下げる方法は2つ。魔物に触れること、もう一つは間接的に魔物を退治すること。」
「間接的ってどういうことだ?」
「実際に見せる。ツカサ、少し離れていてくれ。」
「良いけど。」
レイは俺の肩を軽く押すと、離れている様に指示する。さっき当たって無かったのに、今度は大丈夫なのか?
そんな俺の心配はすぐに消え失せる。レイの構えは綺麗だった。上から糸で軽く引っ張られているかの様な姿勢、そこから繰り出される剣技に問題がある筈ない。
「はあぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
今度のレイはマンドラゴラではなく、その手前の地面を狙っていた。それなら軌道が変わる事も無く、剣は勢いを殺さぬまま地面を大きく抉っていく。その衝撃波に奥のマンドラゴラも当然巻き込まれ、身体に大きな傷を負い、やがて消えた。
消滅を確認した所で、レイは冒険者カードを取り出す。そこにはレベル1と刻まれていた。
「ほら、こうすると魔物も倒せるが、私のレベルも下がってしまうんだ。」
「あまりの脳筋プレイに俺はビビリちらしたよ。」
「レベルは下がっても筋力は下がらない。スキルは覚えられなくても、筋力さえあれば多少のゴリ押しは効くものさ。」
「ま、お陰でどうすりゃいいかも思い付いたけどな。」
「本当か!?」
レイもきっと気付いているだろう。全くもって頭の悪い戦い方、俺とレイだからこそできる戦い方。それを俺はレイへと伝授し始めた────
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