焼きマンドラゴラ屋、俺。

紅りんご

プロローグ

「焼きマンドラゴラ〜焼きマンドラゴラ〜」


 小さな屋台車を引きながら、俺は適当に声を出す。どうせ誰にも届いてないし、必死の営業は必要ないんだよな。


「マンドラゴラ〜焼きたて〜」


 なんせここは攻略難度最高レベルのダンジョン最深部。まだ未踏破らしく、今の所人間にあった事はない。つまり、収入はゼロ。


「いらっしゃい、いらっしゃい。」


 ここに来てから数週間。出られる見込みはない。


「一つ……一つください……。」


 俺はこのままここで一生過ごすのか、そう思っていた時だった────空腹で地面を這いつくばり、辛うじて手だけを伸ばす不憫な自称勇者様と出会ったのは。


 

 

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