第17話 問題は一応解決しました
「っていうことなんだ」
「おお、随分大それたことをしたな、英慈」
「いやぁ~それ程でも~」
まだ太陽が沈み切らない、夕食を取るには少し早い時間帯にライル、はすみ、ゆず、俺のいつもメンバーに七海を加えて食堂にいる。
今日は月見カレーうどんにした。おいしい。
「ちなみに調子も乗っているな」
「バレた?」
「浮かれた顔の見本として辞書に掲載したいくらいだぜ」
それはそうだ。頭を合法的に占拠している一向に解決の兆しを見せない難問に解決策が与えられたんだ。少しくらい調子に乗っても大丈夫だろ。あとは何とかなるさ。
七海の方を少し見てみると、うつむいて肉をつついてる。さっさとこの話題は変えた方がよさそうだ。
「ところで、そろそろSAEGが渡されるとの噂を聞くな」
SAEG。特務工作員専用電子銃。銃に生体認証が埋め込まれており、それをクリアすると、ようやく使えるものなっている。
また、通常の電子銃に比べて超高出力になっているのが主な特徴だろうか。
ただ、通常のものと比べてデメリットも存在する。出力が精神状態によって決まる電子銃だが、出力が大きいほど扱いが難しくなっている。
つまり、超高出力の電子銃であるSAEGはそれに該当する。精神状態の平穏が少しでも乱れれば豆鉄砲になってしまうのである。
「そうだな。操作講義の後の実技テストで合格したものから渡されるらしい」
「私を撃たないでね」
―コクコク
「おい。俺を狂人扱いするな」
狂人。文字通りである。犯行中だけではなく、前後の記憶すら一切持たず一般市民には理解できないような事件を引き起こす者。
逮捕され、正気に戻ってから罪を知る者は運が良い。大抵は犯行中に射殺され、理由すら分からずに死ぬからだ。
「・・・最近、狂人の事件が多い気がする」
はすみがポツリと呟く。
「ウチもそんな気がするー」
「そうだな」
確かに否定出来ない。電子新聞の見出しに狂人が引き起こした事件が、ほぼ毎日一面を飾っている気がする。
「そんなことより、このたくわんおいしいわ」
明らかに普通のたくわんを箸で挟み目の前へ突き出すゆず。
「そうか? 普通の味な気がするぞ」
食べてみるが、何一つ変わらないたくわんだ。
「それだから英慈は・・・」
「何だよ」
「何でもないわ。女子にはいろいろあるのよ」
「今、明らかに言葉に詰まっただけだろ」
「それを指摘するのはデリカシーがないわ」
プイっと目線を外し、何一つ理解出来ないデリカシーを説く。
「変態だね、英慈」
七海まで悪乗りしてきた。少しイラつくけど、通常七海に戻ったようだ。もう少し時間がかかると思ったよ。心配させるな。
そして、ゆずが言葉に詰まるなんて珍しい。
あと、気のせいかライル横顔が険しく見えた。
入浴後。
―瑞穂ライルからのメッセージ
「ところで、国藤は実質的にタッグ解消されてどうなるんだ?」
確かに・・・。全く、微塵も、一ミクロンも国藤のことは気にしていなかったけど、あいつはどうなってるんだ?
言われてみれば気になるな。だが、何も聞かなかったし、俺の持っている情報はない。
「いや、俺は何も聞いてない」
七海とゆずはカーレースのゲームをやっている。どうやらゆずが反則レベルで強いらしく、さっきから負け続けている七海がため息を出している。
「ここまで差を見せつけられると悔しさが出てこないよ」
「それではダメよ。それならこのゲームで悔しさを養いましょう」
そう言ってゆずは純粋な格闘ゲームを選択する。
「そうだね! ウチ、頑張るよ!」
「そうよ。悔しさを取り戻すのよ」
「うん!」
どうやら七海の負けは免れないことらしい。
―瑞穂ライルからのメッセージ
「国藤に聞いてみようと思ったけど、アイツと会話したくないから辞めた。とにかく、テスト頑張れよ!」
それもそうだな。
「任せとけって! おやすみ」
―瑞穂ライルからのメッセージ
「おやすm」
返信が秒で来たけどタイプミスをしてやがる。これが可愛い女の子からだったらキュンとくるけど、ムッキムキの男の子だから何も感じない。
―桒野ゆずはからのメッセージ
「おやすm」
「お前はエスパーか!!!!」
「な、なによ!!! びっくりさせないで!!」
「英慈、怖いわ」
「怖いのはこっちだよ!!!!!」
七海に隠れて少し舌を出すゆず。可愛い・・・。
そして、四ノ宮に入学以来、最も充実感に溢れた日は終わりを迎えた。テストへ向けて、頑張れ俺!
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