第7話 同居人は決まりました

「そういえば英慈って最下位なのね」


「うっ・・・そうだな」


「そう。頑張ってね」


「まぁな。迷惑掛けないように頑張るよ」


「何も求めてないから大丈夫よ」


「それは気軽に学校生活を送れそうだよ」


「そうね。痴漢魔は気軽に学校生活を送って欲しいわ」


「おい!」


痴漢魔って噂されてるのもゆずのせいだと言いたいが気が引けてしまう。これがランキン格差というものだろうか。まぁ、彼女が一番の被害者だからっていうのが主な理由だ。


「私はお昼寝するわ」


「おう」


ベッドに仰向けになって早速寝始めている。はい、可愛っす。


さてどうしようかな。正直、ゆずに理解されているなら俺が犯人ではなく、国藤が犯人って噂が広まるのも時間の問題だろう。ゆずが気にしていないなら先生に報告するとかは必要なし。もし報告したいならゆずがすれば良い。もはや俺の問題ではなくなった。面倒くさいことには関わりたくないし、事件が発生したら解決しなくてはいられないタチでもない。万事解決。物事は時間経過が解決してくれるって信じてる。


―ピンポーン


どなたかな。俺に用があって来る人なんてゼロに限りなく近いだろう。多分、ゆずの方に用がある人だと思うが当の本人は絶賛おねんね中だ。


ピンポ、ピンポ、ピンピンピンピン

 

いや滅茶苦茶連打するじゃん。あいつそんなヤツと友達なのか。・・・仕方ない、出てあげようか。


「どちらさまで・・・」


そう言いながらドアをゆっくりと開ける。隙間に手を発見した一瞬後、ドアが凄まじい速度に変化した。


「ねぇ!!!!!」


危っねぇぇえぇ!!! 危うく、ドアノブに回した手が壁に叩きつけられるところだった。


「ねぇ!!!!!!! 聞いてる!?!?」


大きな声を出して近所迷惑だろ。


って・・・七海かよ。少しお前と友達するのが嫌になってきたかもしれない。


「あらあら、七海さんではないですか。お帰りください」


「ねぇちょっと聞いて?」


そう言いながら部屋に侵入する七海。ダメだこれ。


「英慈・・・睡眠薬盛ったのね・・・」


七海が指す方向には熟睡中のゆず。


「盛ってないわ」


俺は睡眠薬を盛るような人間に見えるのか。


「で、なんだよ用件」


何をしに来たんだコイツ。


「そうそう! 英慈はビリだったから桒野さんと同部屋になったでしょ?」


「あぁ、そうだな」


「ウチの順位覚えてる?」


「俺と1位差の479位」


「そうよ。それでウチが組むのは誰だと思う?」


「2位の人じゃないのか?」


2位・・・? あ・・・。


「国藤とかいうヤツか・・・」


「ねぇぇぇ! どうすればいいのウチ! 本物の痴漢者と夜を共にするの!?」


夜を共にするって・・・。かなり語弊がある言い回しだなぁ。


「それは知らん。とにかく俺は国藤とかいうヤツに関わりたくない。もはや運命だと思って諦めろよ」


「英慈はいいの? 国藤くんにハメられてるのかもよ?」


さぁ・・・。少なくとも俺は国藤と面識は無いハズだからな・・・。


「先生に報告するとかか?」


「そうだよ!」


「ヤツの家柄的に難しいし、そもそも面倒くさいことはやりたくない」


「ずーと皆に誤解されてても!?」


「まぁ仕方ない。それに七海もゆずも理解してくれてるでしょ? 最低限、理解してくれる人がいるから問題ないよ」


「・・・ゆず?」


急に不穏な空気を醸し出すの、やめてください。


「あぁ。なんか名字でよばれるのが嫌らしくて下の名前で呼べって」


「ふーん。それで英慈は何て呼ばれてるの?」


「英慈です」


顔が凄い険しいっす七海さん。


「良かったね。可愛い子と名前で呼び合って」


「いや、だからゆずがそうしろって・・・」


「そろそろ帰るね。まだ国藤君と会ってないっから心配してるかも」


「お、おう」


「英慈、その人は誰」


起きてきたらしい。眠そうな目をしながらやって来た。


「七海沙稀です。桒野ゆずは・・・さん? だよね。英慈のことよろしく」


七海の顔が何故かこわばって見える。


「そう。沙稀ね。よろしく」


「うん。桒野さん。よろしく」


「ゆずでいいわ」


「分かった! ゆず、よろしく!」


「うん」


こわばって見えてたのは勘違いだったらしい。今はときめきに溢れてるような顔をしている。


「じゃぁね! 英慈、ゆず!」


そう言って七海は軽快なステップで部屋を出て行った。


「沙稀、面白そうな人ね」


「そうか? まぁ仲良くしてあげてくれ」


「そうね」

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