異世界転移したら不思議なアイテム屋さんに出会った件~不思議アイテムでチート無双します~

勇者れべる1

第1話 最強の剣と盾

「あー今日も暇だなぁ……」


 ぶつぶついいながら自分の部屋でスマホを弄ってる私。

花咲くJKである私だが現在つぼみは閉じている。

最近は面白い動画もゲームもアニメも本も無い。

かといってアウトドアな趣味やスポーツはしたくない。

お金もモチベーションも無い私……


「なにか面白い事おこらないかなぁ……」


 私がそう呟いた瞬間、不思議な事が起こった。

私の部屋が一瞬にして荒野に変わっているのだ。

空を見上げるとさらに不思議な事が。

太陽って二つもあったけ……


辺りを見回すと見慣れない動物や植物、中世のコスプレをした人々等、現代の地球ではありえない光景が眼前に広がっていた。

退屈に退屈を重ねていた私もこの光景には胸が躍る……訳もなかった。


「な、なんなのよこれええええええええええええ!?」


思わず普段出さない大声を出してしまった私。

こんな光景を見て出る感情は驚きか恐怖の二択だ。

決して「異世界だ!やったーーー!!」とはならない。

好奇心は猫をも殺すと言うが、そんな感情も湧く訳もない。

 あ、やば。

思わず大声を出した私は口を両手で塞いだ。

しかしもう遅い、3階建てアパート相当はあろうという巨大なドラゴンが。

その禍々しい目でこちらを睨みつけて来た。

ああ、私、死ぬのね……

腰が抜けて動けない私に容赦なく咆哮を響かせるドラゴン。

その車さえ一撃で引き裂きそうな爪に私はズタズタにされるのだろう。

恐ろしい光景が脳裏に浮かんだ私が次に考えたのは逃げる事。

どこに逃げればいいの?

交番?警察署?自衛隊?学校?友達の家?色々な候補が思いつくが、


「そもそもここはどこなのーーーー!?」


 周囲を見渡しても辺りには建物すらない。

いや、一軒だけあった、そうコンビニだ。

コンビニが何故ここに?そんな疑問は遠い彼方に追いやって私はその建物に駆けこんだ。


「いらっしゃいませーー!」


そこにはレジの前に縦じま模様の制服を着た女性店員が一人。


「なにかお探しですかお客様?」


現状を知らないのか満面の笑みで接客してくる彼女。

あのドラゴンであろう巨体の体当たりで店に騒音と振動響く中なのに。

(ていうか頑丈なコンビニだな、おい)

余程鈍感なのだろうか、全くと言っていいほど気にしていない。

私は藁をもつかむ思いで彼女にこう告げた。


「た、助けて下さい!」


「はぁ……?」


コンビニ店員に助けを求める私も私だが、店員の彼女の反応も異常だった。

すると彼女は状況を察したかの様に手をポンと叩くとレジから奥の倉庫へ向かい、商品を幾つか持ってきた。


「お困りの様ですね、ではこれなど如何でしょう?」


 すると店員は変哲のない短剣と盾を持ってきてレジ台に置いた。

私はレジ台に置かれた剣と盾をまじまじを見つめる。

が、見た感じ普通の剣と盾、違うとすれば数字のカウンターが付いてる位だ。

そこを疑問に思った私は店員に尋ねた。


「あの……、このカウンターはなんですか?」


指をカウンターに差し問いかける私。

ちなみにカウンターは剣も盾も998だ。


「お使いになれば分かりますよ」


満面の笑みで答える店員、いや答えになってないのだが……


「あ、もうこんな時間」


時計を見ると女性店員はタイムカードを切ってそそくさと姿を消した。

定時退社という奴だろうか……


「お客様、当店は既に閉店のお時間ですのでご退店下さい」


私は背中を押されまたあのドラゴンのいる荒野に来てしまった。


「え、あっ、ちょ、」


とりあえず何か言おうとする私。

 そして目があってしまいました、あのドラゴンと。


ギャアアアアアアアアアアアアス!!!


「ぴゃあああああああああ!?」


すっとんきょうな悲鳴を上げる私に大きな口を開けるドラゴン。

そこからは吐かれるであろう火炎かビーム的な何かの前兆である熱い息がたちこめる。


ごおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!


映画や特撮のCGや火薬なんか目じゃない位の大火炎が私にふりかかる。


「きゃっ!」


思わず私は持っていたカウンター付きの盾をかざし身を守った。

凄く熱いはずなのに、全然熱くない……

火炎を熱気ごと完全に防いでしまった盾、そうこれは最強の盾だったのだ。

火炎が効かないとわかると今度はその巨大な爪で攻撃してくるドラゴン。


「えい!」


先程と同じように衝撃すら感じない、この盾強すぎる!

「じゃ、じゃあ剣は・・・!」

私はドラゴンに剣をふりかざすと、断末魔を上げる暇もなく両断してしまった。

接着剤があれば元に戻るんじゃないかって位の綺麗な半分こ状態だった。

 ふふん♪最強の剣と盾を手にした私にもう恐怖はなかった。

この世界最強のJK女剣士が爆誕したのである。

でも元の世界には帰れないんだよね……

私はドラゴンの巣の幾ばくかの金貨や宝石を手にすると、異世界の荒野を後にした。


【カウンター】剣「800」盾「600」






これは先程のドラゴン戦から約1年前の話である。


「こ、これが異世界転移って奴か?」

「小説の中だけだと思ってた……」


困惑する男女二人

見慣れたビルも車もなく、二人の目の前には荒野が広がっていた。


「で、でも二人一緒にっていうのはラッキーだったよね」

「そ、そうだな……」


少し興奮気味に話す二人。

二人は恋人同士だった。


ギギギ!


目の前に現れたのは小型の緑色の生物、ゴブリンだ。

RPGゲームなんかでは雑魚的に設定される奴だ。


「こ、こいつなら倒せるかも……」


しかし男は動けなかった。


ゴス!


男を殴りつけるゴブリン、にぶい音がなった。


「い、痛い……!」


といっても酔っ払いに殴られた位の痛みで軽い物だ。


グギギ!


「や、やめろ!彼女に手を出すな!」


 しかし男の身体は動かず、ゴブリンの足音だけが遠のいていく。

男も女も互いに姿が見えない上に動けないのだ。

そしてゴブリンの拳が容赦なく彼女につきささ―


ギャアアアアアアアアアアア!


ゴブリンが悲鳴を上げると同時に倒れた。


「え?」


きょとんとする女。

ゴブリンは倒れた。

ゴブリンが殴った衝撃で互いが見える様になった。


「「な、なんじゃこりゃああああああああああ!?」」


男は盾、女は剣になっていた。


【カウンター】剣「998」盾「998」


「お願いだ!助けてくれ!」

「助けて……誰か……」


 道行く人に声を掛けても誰も気付いてくれない。

そもそもここはドラゴンの巣の近くで滅多に人が近寄らないのだ。

と、そこに縦じま模様のコンビニ制服を着た女性店員が一人。


「あらあら勿体ない」


剣と盾になったカップルに近寄る女性店員。


「た、助かった!俺の名は……」


言いかけたその時にようやく気付いた、俺の声も彼女の声も聞こえていない事に。

そして1年後、倉庫のほこりを落とされ冒険に出る事になるが、それは別のお話。

……ていうか盾で痛覚あるってやばくね?


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