第6話#6.お嬢様とおもてなし

#6.お嬢様とおもてなし


「お嬢様、どこへ行ってらしたのですか!」

「セバスチャン、あまり怒ると寿命が縮まりますわよ?」


少年とメイド、そして少女の家である豪邸を背景に口論を始める少女と初老の紳士

いわゆる家出系お嬢様と世話焼き執事って奴ですね!

よくあるやーつ

見た事も無い豪邸に案内されるとそこには宮殿の様な光景が広がっていた

巨大な絵画、高そうな美術品の数々、真紅の絨毯、まるで美術館だ。


「さあ、お食事でも如何ですかな」


初老の執事に案内される・・・食堂だろうか、巨大なテーブルに

見た事も無い御馳走が並べられている


「さあ、召し上がれ♪」


少女に薦められるまま疑いも無く御馳走に手を出す少年。

当然テーブルマナーも知らず、蛮族の様に食物を貪り付いた。


「いや~あれから何も食べてなかったんですよねぇ~」


ダルそうだったロールプレイをやめたのか急に馴れ馴れしくなる少年。


「よかったらお付きの人もいかがですか?」


ようやく存在に気付かれたかの様に声を掛けられるメイド。


「いえ、私は遠慮しておきます」


淡々と断るメイド。まあ異世界の食物なんて口にしたくないですよね。

この少年警戒心なさすぎじゃありません?


「そうですの・・・」


一方それを聞いた少女には落胆の表情すらない、まるで無関心な返答だった。


「ゴホゴホ・・・」

「だ、大丈夫ですかお嬢様!」


突然せき込む少女と心配し駆け寄る執事・・・そう彼女は病弱設定なのだ。


「さ、さっきから胸が締め付けられる様に苦しくて・・・」

「お身体の具合が悪い様ですね。お医者様をお呼びしましょう」


とーとつにメイドが言う

「「え」」


唐突な発言に驚く少女と執事


「はいはい、患者さんはここですかの」


いつの間にか部屋にいた白衣と分厚いレンズの丸眼鏡をかけた少女、

そう、彼女こそ変装したナーロウであった。


「これは・・・恋の病ですな?」

「は?」


診察を受けきょとんとする少女


「恐らく好感度パラメーターを強制調整されたのでしょう」

「それと病弱設定に書き換えられてますな、本来は健康体なのに」

「な、なにを言って・・・」


理解が追い付かない少女。そのフォローに執事が発言する。


「お医者様、お嬢様の御病気は幼少からの物で・・・」

「ほう、記憶改竄もされてると・・・重症ですなこりゃ」


なんのこっちゃ分からない読者様に解説いたしますと、

少年の好みに合わせて少女の設定が書き換えられたってお話ですね。


「お医者様、ちょっとこちらへ・・・」


執事から別の部屋へと案内されるナーロウ、当然メイドも付いていく。


「お嬢様の件放っておいては頂けませんか?」

「というと?」

「お嬢様は幼少の頃から病弱で、でもあの性格ですからよく抜け出しては困らされた物です」

「ほうほう」

「病弱故に跡継ぎを産める身体ではないと縁談も避けられ、あのお年で恋の一つもされた事が無いのです」

「で、わしにどうしろと?」

「はい、このままお二人を放っておいて頂きたいと・・・」

「却下じゃ」


即答するナーロウ。こういう不思議案件を直す為にやってきたというのに、

仕事をするなと言われた様な物である。


「どうしても無理だと・・・」


穏和な執事から百戦錬磨の老兵の様な殺気が発せられる。

並のごろつきならそのまま逃げだしそうな位ビンビンだ。


「仕方がありません、死んで頂きます・・・!」


執事は服の裏から小型のナイフを数本取り出すと、急激に距離を詰めナーロウに迫った。


ガキン!


金属と金属がぶつかるような音が鳴る


ナーロウの前にメイドが立ちナイフを防いだのだ・・・それも素手で


「私の身体は特殊軽量チタン合金で構成されていますので、鋼鉄製のナイフ如きでは傷もつきませんよ」


なにを隠そうこのメイド、サイボーグなのである。

無表情ながらも余裕を見せつけるメイドに距離をとる執事


「サンキュー、メイドちゃん」


ナイスフォローにbと親指を立てるナーロウ。これから始まるであろう激戦に備え逃げる準備を開始する


「女性に手を上げるのは気がすすまないのですが・・・」


今度はナイフを捨て、拳をを構える執事

ブツブツと何か呪文を唱えると、彼の拳に電流が纏われた。


「傷がつかないのであれば―」

「気絶して頂く!」


執事は目にも止まらぬ速さでメイドと距離を詰めると彼女の下腹部めがけ掌底を放つ!

間一髪で避けたメイド!すぐさま追いかける執事!二人の戦いに目が離せません

・・・てどこいこうとしてるんですかナーロウさん


「いや、わし頭脳労働担当じゃし」


こそこそと部屋から出ようとするナーロウ、一方で彼女の後ろでは執事とメイドが目を見張る格闘戦を繰り広げている。


「じゃ、そういう事で」


コソ泥のような忍び足で部屋を出て行ったナーロウ。戦いに夢中な二人は当然気付かない。

・・・てあれ?この二人の戦いはどうなるんですか!?実況しなくていいんですか!?


「いや、主人公わしじゃし、わし視点になるのは当然じゃろうが」


何もない空間に話かけるナーロウ。この世界の人間には意味不明な事を言いながらも、

少女と少年がいた食堂に戻る

彼女が食堂に入ると、談笑する微笑ましい少年と少女の姿があった


「それで、となりの家に囲いができったって、かっこいいだろ?」

「ふふふ、面白いお方」


ぐだらないギャグで笑い合う二人

「・・・修正っと」


ナーロウは透明なボードの様な画面を呼び出すと、それを操作してあれやこれや修正していく。


「あ、あれ?わたくし何をして・・・」

「え」


急にきょとんとする二人に気まずいなんだコイツみたいな空気が漂う。


「きゃあああああああああああああ!!!お、男!!!」


突如少年を突き飛ばす少女、その後汚らわしい物を触ったかの様にハンカチで手を拭く


どうやら本来の彼女は極度の男嫌いらしい


「なにがどうな・・・」

「いいからこの家からでていきなさい!汚らわしい!」


とーとつに締め出された少年、巨大な門が閉じ少女と少年に大きな壁ができた


「二度とこないで!」

「は、はいいいいいいいいいいいいいい!!!!すんませんでしたあああ!!」


少年はびびりながらも猛ダッシュでその場から逃げ出した


「あ、しまった」


少女の奇行にあっけに取られていたナーロウはまたもや少年を見逃してしまった。

m9(^Д^)プギャー逃げられてやんのwwww・・・はいすいません言い過ぎました。


「ナーロウ様、彼は私が」


いつのまにかナーロウの背後にいたメイド。

ボロボロのメイド服からは焦げ跡の付いた肌がちらちらと見える。


「じゃ、頼んだぞっと・・・の前に」


ナーロウがメイドに指輪をはめた指を向けると指輪が輝くと同時にボロボロになった服が修復され傷も癒されていく。


「ありがとうございます、ではこれにて」


ぺこりとメイドはお辞儀をすると時速300kmはあろう超高速で少年を追いかけていった。

え、執事はどうなったって?気絶でもしてるんじゃないんですかね?とりあえず戦闘不能って事で。


「じゃあわしもぼちぼちいくかの」


変装を解いたナーロウは軍服姿に戻ると、時速1か2km位の足取りで少年を追いかけた。


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